第三十八章 アチナゴーン王国王都へ
真輔とバーナード率いる騎士団がアチナゴーン王国王都に来ました。
バーナード率いる騎士団と真輔はアチナゴーン王国王都にやってきた。バーナードと騎士は馬、真輔は馬車で。
早馬で伝えられた情報にカーティスとサイモンが魔族と結託しているとの情報があった。
アチナゴーン王国王都に来たのはシンシアを迎えに来たのが目的たが、バーナードたちは尋問の手伝いを頼まれた。
それぐらいなら、かまわないと了承。
真輔はオカンがいる可能性が高いと考えたので同行することに。
「よく来てくれました、バーナード・キャボット様」
兵士の一人が出迎えてくれた。騎士団たちも兵士たちに出迎えられる。
帝都では真輔とシンシアが似ていることは既に知れ渡っているが、王都では知られていないので帽子で顔を隠している。
馬と馬車は兵士たちが厩舎へ運んでくれた。
「すいません、私たちに尋問の経験が無いので……」
これまでアチナゴーン王国では真面な裁判は行われたことは無かった。捜査も調査も真面に行われることは無く、尋問と称して貴族が平民を拷問、強引に罪を認めさせていた。
平民から騎士団長に上り詰めたバーナードの噂はアチナゴーン王国にも届いている。
アチナゴーン王国の兵士たちにとつて、バーナードに期待と尊敬と頼りなる人物であり、憧れなのだ。
ちなみにラティストアン帝国ではバーナードと騎士は捜査と調査を行っている。国が変わっても、やることはそれ程変わらないだろう。
「私たちはやるべきことをやります。決して私怨で判断はしません」
「それはこちらも望んでいること。アチナゴーン王国は民主主義国家に生まれ変わるんです。そのためには私怨で動いてはいけない」
参考にするのはラティストアン帝国の司法と民法。
今後のためにバーナードたちの捜査と調査を付き合うことで、アチナゴーン王国の兵士たちは学ぶつもり。
王都の民全員がカーティスとサイモンと貴族たちに対する私怨を残らず捨て去ることは出来ないが、それでも民主主義国家の第一歩を踏もうとしている。
「申しわないのですか、コーディ探索の協力していただきたいのです。何せ、私たちには逃げた罪人を捜索する経験が無いので」
申し訳なさそうに言う。
小柄なコーディ、狭い場所でも潜り込むことが出来る。命がけで逃げたのなら、命がけで隠れることも出来るはず。
「解りました。私たちには犯罪者の実績があります。協力いたしましょう」
部下の騎士二人に、
「君たちに任せる、コーディの顔は知っているな」
「はい、会議の席で見かけました。あの特徴的な外見は印象に残ります」
この騎士たちは捜索が得意分野。
「出来るだけ生かしたまま確保してほしい。魔族の結託について情報が聞けるかもしれない」
カーティスとサイモンと貴族たちから魔族の結託の情報を聞くつもりだが、情報源は多い方がいい。
「解りました」
二人の騎士がコーディ捜索のために離れる。
アチナゴーン王国王都をバーナード率いる騎士団と真輔が兵士の案内で歩く。
「見て見て、あの人がバーナードさんよ」
「噂通り、ハンサム」
噂になっているだけあり、バーナードを一目見ようと人が集まってきていた。
帝都では慣れた光景だが、始めてくる王都で似た対応をされるのは少々気恥ずかしい。
「バーナード」
兵士に護衛されたシンシアが声をかけてきた。
「シンシア」
もう二度と会えないと思っていたシンシアが目の前にいる。バーナードの気恥ずかしさなんて軽く吹っ飛んだ。
クーデターにより、サイモンが投獄されたことで婚約は破談。めでたくシンシアとバーナードは再会できた。
見つめ合うシンシアとバーナード。見つめ合ったのは短い時間だが、二人の間に流れる時間は短くはないなかった。
周囲に人が居なかったら、二人は抱き合っていたかもしれない。
「真輔、来たんやな」
のっしのっしとオカンが闊歩してくる。
「本当に来ていたよ」
これで確定したクーデターにオカンが関与していると。
「オカンさん、王都に来ていたんですね」
オカンに聞きたい話はあるが、今はカーティスとサイモンの尋問を優先。
アチナゴーン王国の地下にある牢獄。逆らう者や憂さ晴らしのために数多くの平民を収監できるように広く頑丈に造られている。
無実の罪を認めさせるための拷問だけではない、貴族の憂さ晴らしや趣味で多くの平民が命を落とすこととなった場所。
牢屋の天井近くに申し訳程度の鉄格子の入った明り取りの窓があるだけで昼間でも暗い。寝具もぼろぼろの皮一枚だけ。
これまで投獄されたのは平民のみ。だから、居心地のことなんて何にも考えていない。臭くて汚い。
今、投獄されているのはカーティスとサイモンと貴族たち支配者階級なのは何たる皮肉。
「なじぇなじぇなじぇなじぇ、こうなたのら~誰か教えてくれなのら~」
牢屋で喚くカーティスは、未だに自業自得でこうなったことを理解していない、理解しようとしない。
「これは夢じゃ夢なのら、ぼくちんはふかふかのベットの中でおねんねしているのだ」
現実逃避しているサイモン。
「ここから出せッ、牢屋の鍵を外せ」
アドンは鉄格子を揺らすがびくともしない。それもそのはず、捕らえた平民が逃げ出さないように頑丈な牢屋を作ったのだから。鍵も簡単に外せない物。
そんな風に貴族が造らせた。
茫然自失状態な騎士たちと貴族たち、天井や壁を眺めている。
また騎士たちと貴族たちの中には、
「来るな! 出て行け」
「許してください」
「ごめんなさいごめんなさい」
「俺が悪いんじゃない、俺は命令されただけなんだッ」
何も居ないはずの空間に謝り続けていた。
この牢獄では騎士たちや貴族たちにより、何人もの平民が拷問によって命を落としている。
未だ壁や床にはその時の血の跡が残り、どんなに拭いても消えない。
騎士たちや貴族たちが見ているのは幻覚なのか、それとも……。
暫定で看守になった男が囚人となった元支配者たちに食事が配られる。
食事は一日三回、野菜のスープにライ麦パンに塩魚。
「鹿は七面鳥は白いパンはフルーツはワインはれないのか」
これまで囚人に出されていた物よりはましなのに、カーティスの贅沢に肥えた舌には物足りない。
暫定看守はムカッときたが、堪えることが出来た。牢屋の中にいる連中と同類になりたくはないと言う思いで。
文句を言っても豪華な料理が出てくることは無い。食べないと生きて生きて行けないので食べる。
食事を与えた後、暫定看守は家に帰る。正式な看守でもないし、家では家族が待ってくれているのだ。
食事を終えたカーティス。体型が示すようにこれだけでは全然足りなくて、お腹が満足しない。
「おかわりのよこすのら」
暫定看守は帰ったので返事なし、おかわりは出されることは無い。
これまでは豪華な料理を食べたいだけ、食べれた。おかわりも要求するたびに出された。
「平民共めぇっ、今に見てろなのら、じぇったいに許さないのら。王様に逆らったらどうなるのか思い知らせてやるのら」
空腹を怨嗟に変換。妄想の中で平民たちを徹底的にいたぶる。
「やれやれ、こんな奴を魔族にしなくて本当に良かった」
背後から声が掛けられた。
ここは牢獄、頑丈な鉄格子には鍵がかかっている、天井近くにある明り取りの窓は小さい。
脱出は不可能。ならば侵入することも不可能なはず。しかし、確かに後ろから声がした。
この牢獄で殺された平民は数知れず。
恐る恐るカーティスは振り返る。そこにいたのは……。
「お前は――」
囚人となった元支配者たち。




