第三十二章 オカン、ジャバ・ザ・ハットに暴言を吐く
帝都に来客が来ました。
帝都に来たオカンと真輔はバーナードと一緒に大通りに面した家の窓から、こっそりと外を見ている。
大通りに一台の馬車が入ってきた。豪華であっても素晴らしいと思わせるラティストアン帝国の馬車とは違い、キンキラキンに飾り立てられた悪趣味としか表現の出来ないデザイン。
護衛に付いている騎士たちが身に着けている鎧は性能よりも見た目を重視したもの。これもまたキンキラキンで悪趣味。
騎士の中で一番豪華、本音で言えば一番悪趣味な鎧を着た怖い顔の大柄な男が馬車の戸を開けた。
開けた戸から降りてきたのはでっぷりと太った体に馬車に勝るとも劣らない悪趣味な服で着飾った親子。顔は映す鏡が気の毒になるレベル。
「貧相な国であるのら」
「そうだねそうだね、ぼくちんの国とは大違い」
似たもの親子が下卑た笑いを見せる。
「それは立派な王様と立派な王子様がいるからにございますからです」
似たもの親子の後に鷲鼻の小男が揉み手をしながら降りてきた。嫌味たらしくニヤニヤ笑っているように見えるが、別に笑っているわけではなく、元からそんな顔なのだ。
こいつの服装も王と同じく金はかかっているが悪趣味。
「あんな服で、よう表出歩けんな」
「オカンがそれを言うの」
「ウチ、キンキラキンしとらんで」
「確かにオカンはあそこまで悪趣味じゃないね」
棘があるのかないのか。まぁ、棘があったとしてもオカンに刺さることはないけど。
「あいつらがそうかいな?」
ハイと頷くバーナード。
「あの者たちがアチナゴーン王国の王のカーティス・アチナゴーンと王子のサイモン・アチナゴーンです。後から降りたのが大臣のコーディ・バックス。馬車の戸を開けたのはアチナゴーン王国の騎士団長のアドン・クームズ」
教えてくれたバーナードの表情が曇る。
オカンと真輔が帝都に呼ばれたのもアチナゴーン王国の王と王子が来訪するからであり、彼らの来訪は今後のラティストアン帝国に大きな影響を及ぼす。
本来の来訪の予定はもう少し先だったのだが、強引に予定を縮めてきたのである。
「とても王様や王子様な見た目しとらんな。まるでジャバ・ザ・ハットみたいなないか、親子ともども」
「それはジャバ・ザ・ハットに失礼だよ」
酷い言いようだが、的を得たオカンと真輔親子の表現。
バーナードはジャバ・ザ・ハットのことは知らなくても、カーティスとサイモンに似ていると言う話から容姿は大体想像できた。
「みんな、歓迎していないみたいだね」
他国の王と王子が来たのにもかかわらず、帝都の民は歓迎どころか誰一人として表にも出てこない、窓も固く閉じて顔も出さず。
とてもではないが、他国の王と王子を歓迎しているような雰囲気には見えない。
いくら、容姿がアレでも他国の王と王子に対して失礼な行為。建前だけでも歓迎するのが礼儀なのに。
オカンも真輔も帝都の民がそんな礼儀知らずにではないと解っている。
なのに何故、誰も彼も引き籠っているのだろうか?
「……サイモンは皇女シンシア様の婚約者なのです」
絞り出すような辛そうな声。
同時にオカンと真輔親子はバーナードを見た。傍から見てもバーナードがシンシアのことをどれ程思っているのか解る。シンシアもバーナードのことを思っている。
二人は相思相愛の関係なのは揺るがないはず。
「ほんまないな、あの別嬪さんとジャバ・ザ・ハットが」
「……」
バーナードは口から言葉を出すことが出来なかった。
余談ではあるが、ジャバ・ザ・ハットは雌雄同体である。
「政略結婚ですか」
返事はなくとも、辛そうな表情のバーナードと強くに握りしめられた拳が答えを出してくれている。
「関係強化とはこのことだったのか」
他国との関係強化を口にしたジョセフが辛辣そうにしていた理由が解った。
シンシアは帝都の民から慕われている。その婚約者があの容姿。服装や馬車を見れば人格も見た目と変わらないだろう。
「気に食わんな、あのジャバ・ザ・ハット親子」
オカンが何かを考えている。
真輔は嫌なではなく変な予感がした、オカンは人情深い。
バーナードとシンシアの関係を知っているので何かしでかしないだろうかと、心配にはなる。
オカンは行動力はあるが、馬鹿ではないので親しい人を気害を咥えるようなことはしないだろうが。。
見た目も似たもの親子。




