同類
一つ誤算があるとするならば、私に興味を持ったロシア最大のファミリーのボスと男が衝突したというぐらいだろう。
人酔いでテラスに入ったところ、バッタリ出会ったのが彼、マクシミリアンだった。
最初は一般客だと思って当たり障りのない会話をしていたが間違ってアルコールを手に取ってしまった私がその後なにかしたのだろう。
気が付くと屋敷に帰っていたがそれからアプローチが絶えなくなった。
そのことに苛立っているのか男も私を抱き潰し、仕事も真面にできない状態にされた。
そうして十八歳の秋、第四子を妊娠した。
男に連れ去られてからもう三年も経ったのかと感慨深い気持ちにもなる。
オリバーは本格的に後継者教育が始まり、オリビアもいやいや期に突入した。
いろんな変化が私の周りをぐるぐると巻いて、まるで私だけ時が止まったような気がする。
そんな唐突な空虚な思いを胸に抱いたまま妊娠八か月に突入した時、事件は起こった。
仕事で移動の最中に、誘拐されたのだ。
誘拐犯からの言葉からしてロシアのマフィアだった。
このことから考えられるにマクシミリアンの手の内の者だと分かった。
車から飛行機に乗り変えられロシアに着いた私達は、ある屋敷へと閉じ込められた。
足音が部屋へと向かう。
ドアの開く音と共に入ってきた人物は、私の予想通りの人だった。
「これはどういうことですか? マクシミリアン様」
「どういうことも何も、見たままだが?」
「戦争になりますよ」
「それでも貴方を手に入れたかった。あぁ、でも…。貴方の中にいるソレは要りませんね」
マフィアの頂点たりうる、冷酷な目で私のお腹を見る。
私の体温が一気に奪われていく気がした。
「やめて…。貴方の言う通りにするから、この子に手を出さないで」
「それは今後の貴方の態度次第でしょうか」
綺麗な笑みで残酷なことを口に出す彼を、どれほど酷いと思ったことだろうか。
私を連れ去り犯したあの男と同類だと思った人は、初めてだった。




