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おばあちゃんの異世界漫遊記  作者: まめのこ
【第2章】丘の街ヴィトエート
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5 再会

ヴィトエートに滞在して1週間が過ぎた。


2日間泥のように眠り疲れを取ると、薬屋を探しに市内探索に出かけた。

街というだけあって、市場には装飾品、食品、服など多種多様なものがあり目を引いた。薬ももちろんあったが価格が高く、カンツーオなどはとてもじゃないが手が届くような値段じゃなかった。その他の薬屋も回って見たがどれも同じで、市場から離れ街の薬草店に行っても欲しいものが半分揃えばいい方だった。歩き回った疲れと落胆でアガットは夕食時にはぐったりと机に突っ伏していた。


「あら〜欲しい薬草見つからなかったの?」

「はい。あってもどれも高額でもういっそ自分で育てた方が早い気がしてきました・・・」

「そうね〜。あ!あそこには行ってみた?」


サフサはそういうと説明しながら地図を描いてくれた。


次の日早速教えてもらったお店に足を運ぶ。


大通りから裏道に入り、しばらく歩く。目を凝らして探すが見つからず、近くのお店の主人などに聞いてやっと見付けられた。


見つからなくて当たり前だ。入り口が脇道の方に付いているため、一見壁があるだけに見えるのだ。


チリン、チリンとドアベルを鳴らして店内に入る。

古いお店なのだろう。薬草の匂いにホコリと古い家具と紙の匂いが混じり、独特の匂いが広がっている。


「・・・いらっしゃい・」


よく見るとカウンターのような小さなスペースに店主が座っている。

魔女と言われて最初に想像するわし鼻で白髪の老婆だ。しゃがれ声で歓迎され、爪の長い手は薬草を分別している。


ぺこりと軽くお辞儀をして店内をまわる。アガットの欲していた薬草がそこには揃っていた。

カゴをもらい欲しい薬草を詰めて行く。


どれほどの時間が過ぎたのか、アガットが薬草に夢中になっているとドンッと誰かとぶつかる。


「あ、ご、ごめんなさい。」

「私の方こそごめんね。」


ぶつかったのは7、8歳の獣人の少年だった。イヌ科の獣人なのだろう焦げ茶色の髪から大きい耳が出ており、びっくりしたのか尻尾はクルンと股下に丸まってる。

アガットが気になったのは少年が獣人だったからではない。顔立ちが、特に下がった凛々しい眉と目元がロザールに似ていたからだ。


「ねぇ、君n・・・」

「レザル!!早くそれ片付けて次の仕事しな!!!」

「は、はい!」

「あ、ちょ、ちょっと!」


アガットが引き止める前に男の子は奥の扉に消えて行く。

急いで後をついて裏庭に出るがもうそこ男の子はいなかった。


「お客さん!逃げる気かいっ!?」

「いぃいえ、違います!これ全部買いますから!すいませんさっきの男の子なんですが・・・」

「うちの小間使いが何か?」


泥棒だと勘違いされそうになったため、急いで店主の元に駆け寄り財布を見せる。男の子の話をすると算盤を弾く手を止め、訝しげな顔をされた。


「あ、いや・・・その、し、知り合いに顔が似ていたのでもしかしたら血縁者かなぁと思いまして・・・」


本当のことを言っているのに、なんで私こんなに挙動不審なんだろう・・・

老婆もそう思ったのかあやふやに話しをはぐらかすと会計され、半ば追い出すようにアガットを店から出した。


〜〜〜〜〜


急いで宿屋に戻りロザールを探す。

旅支度を終えラクダに荷物をのせている腕を掴み、食い入るように話し出す。


「ロザールさんの息子さんレザルって名前ですよね!!レザル・コノミス!!」

「あ、あぁ前に名前の話しをしたな。」


アガットの剣幕に押されながらも答えてくれた。


レザル!レザル!!合ってた!!


脳がそれを理解すると同時にアガットはロザールの腕を掴んだまま走り出した。


ロザールが何か言っているがそれどころではない!


それどころではないのだ!!!


来た道を逆走し、さっきの薬草店の扉を壊す勢いで開け放った。

驚いた老婆は悲鳴と共に薬草をカゴごと落とす。


「おばあちゃん何事!?!?」


老婆の悲鳴を聞きつけ、奥から少年が顔を出した。


少年の顔を凝視したままロザールは動かない。信じられないといった表情で固まっている。

アガットはぐいぐいとロザールの腕を引っ張り、少年・レザルの方に押しやる。

老婆の方に気を取られていたレザルはふらふらと前に出たロザールの顔を見て固まった。


「れ、れざる?・・・レザルなのか?」


未だ信じられないのだろう、ふらふらとした足取りのままロザールはレザルの方まで歩み寄り、膝をついた。


こっくり、とレザルは頷く。驚きで声が出ないのだろう。


だがロザールは頷くのを見た瞬間、レザルの体を搔きよせた。そこに存在するのを確かめるかのように力強い抱擁をする。


レザルも恐る恐る父の背中に触れた。そして本当に触れることを確かめると、ぎゅっとしがみつきポロポロと涙を流し始めた。


「おとうさん・・・・お、おぉおとうさぁああぁん〜。」


ロザールの息子を掻き抱く肩も震えていた。泣いているのだろう。

アガットだって泣いている。ヴィトエートに来る道中いろんな話を聞いたのだ。ロザールの苦労話を。


子供の泣き声と鼻を啜る音がしんとした店内に響いた。




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