第11話 血の契約
——シドは見た。
この夜を溶かすほどの壮観さを。
誰もが釘付けになるほどの美景を。
穢れを知らぬ純白の薔薇を。
この夜は、この空間は、この魔法の為だけにあるのだと錯覚させる。
それほどまでに美しい魔法だった。
カルディラの魔法を初めて見て、そしてその力を体験した時はこんな魔法ではなかった。重力を操りヴァールの動きを止め、空間移動による消費時間の削減、そして結界を破る圧倒的な力。効率と単純な破壊ばかりだ。
なのに、この場で見せてきたのは、砂が白い薔薇になるという美しい魔法。
「——魔法は、人を殺すためだけの力ではない」
魔法は、物を破壊し、理を乱し、人を殺せる。
だが、確かに美しいものも生み出せるのだと。
カルディラの目は、そう訴えているように見えた。
「————」
シドは魔法からいつも逃げていた。
学校で魔法についての授業についていけず、周囲の生徒に追い越され、自分に自信が無くなり、隠れるばかり。それでも誰かに認められたいと、期待だけして、魔法に触れようとせず。
こんな自分が嫌いだった。魔法だって嫌いになりかけていた。
だからこそ、今——
自分の魔法を信じ、自分の魔法を認め、そして、魔法の美しさと出会えた今だからこそ、魔法そのものを好きになりたいと心の底から、切実に願う。
シドは両手を強く握りしめ、心の内に燃えるように宿り始めた想いを抱き、灰白色髪の少女を見つめ、頭の中で確言した。
——俺は、この瞬間を忘れることは無いだろう。
白い薔薇の花弁に包まれ、ようやく自分がどのような状況下にあるのか理解した狼は、瞳孔を激しく揺らしながら叫び始める。しかしその声は、喉奥を貫かれたおかげか、酷く濁り、聞き苦しいものだった。
「この魔法ッ!なんでだ!どこにいる!?カルディラ!!オマエ、どこにいるッ!?」
「……見えてないのか?」
確かに狼から聞こえた"カルディラ"という名前。彼はカルディラを知っているようだが、周囲を見渡してもその姿を見つけられていない様子だ。
振り返ってみれば、おかしな点が幾つも上がる。
シドが狼と戦っている中、カルディラはずっとシドのすぐ側にいたというのに、狼は一切彼女について触れることは無かったし、魔法による攻撃だって彼女にはしてない。
となれば、狼はずっとカルディラの事を認知していなかったことになる。そういう魔法でも使っているのだろうか。
シドはチラリとカルディラの顔を覗き込むと、彼女はわざとらしく、プイと視線を逸らした。
「…………」
……シドがボロボロになっている中、カルディラは自分だけの姿を見えなくさせて、余裕を持っていたと考えると、言いようのない怒りが湧いてくる。ズルい。
だがそれ以前に、シドは自分の姿を見えなくさせる魔法なんて習得していないし、すぐに扱えるようになるわけでもないので、そうだと分かったところで状況は変わらなかったが。
「ウガアアアアアアッッ!やめろ!やめろやめろ!」
カルディラの指先が微かに動く度、狼を包む白い花弁は小さくなっていく。狼が叫び声を上げても、花弁は躊躇なく狼の巨体を抱いて凝縮する。
すると、薔薇の中に閉じ込められてしまった狼は次第に目を閉じ、四肢から力を抜き、声を上げる気力を失い、全身をその薔薇に委ねていた。
「アアアアァァァ……」
声が消える。
まるで浄化されていくようだ。
狼は体を丸め、満足した表情を浮かべて眠る。いいや、それは死んでいるのかもしれない。死んだのかどうか、分からなくなるほど安らかに目を瞑っていた。
狼が完全に静止し、カルディラが腕を下ろす。すると、巨大な白い薔薇はパッと消えて狼を雑に地面に落とした。それでも狼は動く気配は無かったが、シドは思わず「大丈夫なんですか!?アレで?!」と焦った。だがカルディラは構わず狼から背を向ける。
一応、丸くなって動かなくなった狼の足をつついて確認。木の棒の先で何回かつついてみるが、反応は無し。息をしている音も聞こえないので、シドは胸を撫で下ろして安心する。また狼が叫び声を上げて再戦、なんてのはゴメンだ。
何はともあれ、これで本当に戦いは終わったようだ。自分の成長に大きく繋がったとはいえ、最後の最後はカルディラに全部美味しいところを持っていかれた気もするが。
でも、カルディラがここに来ていなかったら、そんな成長も、自分の命も無かったわけで——。
シドは視線をカルディラへと向ける。
カルディラは、シドが時間をかけて戦ってきた相手を数十秒で黙らせる力を持っている。しかしながら、その魔法は力の強さを見せつけるだけでなく、洗練されていて、無駄がなく、美しさを秘めていた。
カルディラの背中はシドよりも小さく、腕も細くて筋肉もあまりない。なのに、彼女はシドよりもずっと強い。遥かに強い。
そして見た目はシドと同じくらいの歳に見えるが、その見た目からは想像し難いほどの実力が隠されている。きっと人生を魔法に捧げてきたのだろう。シドと同じくらいの歳だと仮定し、これ程までの実力だと言うならば、そう考えるのもおかしくはない。
——魔法のこと、好きなんだろうな。
彼女は言った。「魔法は嘘をつかないからこそ美しい」と。
そして「魔法は人を殺すためだけの力ではない」とも。
カルディラは魔法を愛しているのだ。シド以上に魔法を信じ、自分の魔法を認め、好きになり、愛しているからこそ、彼女の魔法は強く、その言葉には説得力がある。故に、
何故。
「どうしてカルディラさんは、人を殺してまで宝石……いいや、神聖結晶を奪ったんですか?」
カルディラが以前、深夜の美術館に侵入し、従業員を皆殺しにしてまで展示されていた宝石……神聖結晶を奪ったという事件。そのやり方は魔法による凄惨なやり方で、従業員を殺したと聞いている。
であれば、カルディラの言い放った言葉と辻褄が合わないんだ。
魔法の美しさを知り、好きならば、尚更。
「なんで、魔法を人を殺す武器にしたんですか?」
「——————」
真っ直ぐ向けられたシドの視線が、カルディラと交わる。
静かな森の中で、シドの心臓の鼓動はざわめいて、緊張感を高めた。
殺人鬼本人に、事件についての質問をしては癪に障るかもしれない。その理由が聞かれたくないものだったとしたら、シドの口は簡単に黙らされる、カルディラならすぐにシドを殺せる。
けど、これだけは聞きたかった。
カルディラはわけのわからない女だ。
シドを攫った後、比較的暖かい生活を送れたことも、シドに魔法と向き合えるチャンスをくれたことも。その殺人鬼らしくない行動に対して聞きたいことは沢山ある。しかし、今何よりもカルディラから聞き出したいと思ったのは、これだった。
唾を飲む。
夜風に揺れる、灰白色の長い髪を片手で抑えながら、カルディラは口を開く。
どんな返事をする?
まともな返事を返してくれるだろうか。
こんなの殺人鬼に聞いてはいけない質問だったかもしれない。
けど、もし聞かせてくれるのなら知りたい。
どんな、返事を——?
「美術館での事件の話か?別に従業員は誰一人殺してないぞ?」
————————。
————。
——。
「はあ?」
片眉を上げて、そう返事をしたカルディラに、シドは呆気にとられる。
シドの予想では、
どうしてもお金が欲しくて、結晶を奪わなくちゃならなくて……殺るしかなかったんだ……。
とか、
あの美術館に恨みがあったんだ……。一矢報いる為に結晶を奪い……。
とか。
よくある映画の中、悪役が犯行動機を語る展開で言い出しそうな、少し同情してしまうような言い訳が返ってくると考えていた。
だが、実際に返ってきたのは「別に殺人はしてない」と?話が全然違うじゃないか。
「でも!カルディラさんはヴァール先生を殺そうとするほど、神聖結晶ってやつを奪おうとしてたじゃないですか!殺人はしてない、だなんて無理ありますよ!」
「確かにあの時、学園に不法侵入はしたな。けど殺そうとは思ってなかった。神聖結晶さえ手に入ればそれで良かったしな」
「でも殺気出してた!!俺にも!」
「ムカついたからな。それに、殺気を出しただけで、殺してないだろ」
「ムキー!!!」
シドは手振り回しながら反論するが、あっさり結果論のようなもので言い負かされる。
シドだって、誘拐された夜にヴァールと共に死闘を繰り広げた。カルディラという脅威を目の前に、言葉の通り命をかけて。
殺されるかと思った。ヴァールも死ぬかと思った。それくらい自分たちは必死だったというのに、カルディラは「殺そうとしていなかった」だと?
そんなことを言われるくらいなら、シドが想像していた、少しでも同情できる言い訳の方が良かった。
カルディラは何気ない顔を浮かべたまま、肩にフレンを乗せて続ける。
「そも、私は美術館なんて行ってないし、加えてあの神聖結晶は元々私のものだ。取り返せたと思ったら偽物だったし、勝手に国の大犯罪者にされて。どうしたものか」
「えぇ?あの結晶は元々カルディラさんのもので、被害者だって?」
「考えてみろ。金が欲しいなら、盗むのは展示されていた神聖結晶じゃなくても良かったはずだ。価値あるものは他にも展示されていただろ。それに、国の報道の仕方もおかしい。神聖結晶を"宝石"とだけ呼称し、どのような宝石であったかは一切説明されてない。証拠になるような映像石も無いのに関わらず、犯人は私であると断言する。本当に従業員が死んでいるのかさえわからない」
「……たし、かに?」
シドもカルディラについて考える際に、何回か違和感を抱いたことはあった。なぜカルディラがそこまでして宝石……神聖結晶に執着するのか。なぜ神聖結晶の模倣品がスカイア学園に転がっていたのか。なぜ神聖結晶は宝石と言われていたのか。
テレビで事件の話を聞いた時も、ただ"美術館に展示されていた宝石を盗み、従業員を殺したのはカルディラだ"というばかりで、それらしい映像石は見なかった。普通なら、防犯魔法装置用の映像石が紹介されたりするのだが。そういえば、殺された全従業員の名前も紹介されていない。
映像石を出して、カルディラが盗んでいる場面を報道すれば、世間の信憑性も増すはずだ。なのに、なんでそれをしない?
カルディラが神聖結晶だけに執着するのは、本当に元々自分のものだったから?
神聖結晶を宝石と呼ぶのは、"神聖結晶"というワードに触れさせないため?
神聖結晶の模倣品は誰がスカイア学園に持って来た?
もし、仮にカルディラの証言が本当ならば、これはカルディラを犯人に仕立てられた、という事になる。
この事件は不可解な点ばかりのようだ。
だけど、カルディラも神聖結晶を盗み、人を殺していない、という証拠を出せてない。
「……それでも、信じられませんよ。確かにこの事件はおかしい事ばかりです。でも映像石については、盗む時に壊したのかもしれないし、宝石のことを、カルディラさんが勝手に"神聖結晶"って呼んでるだけかもしれないし……学校に侵入して、襲って、俺を攫ったのは事実でしょ?」
テレビとカルディラから聞いた話よりも、シドが実際に体験したことの方が信じられる。曖昧な情報なんかより、まず優先すべきは自分自身の記憶だ。
カルディラが人殺しをして展示物を奪っていなかったとしても、学校を襲い、シドを誘拐したことは明確な事実である。もうその時点で、カルディラは犯罪者で、信じるに値しない。
「…………そうだな。それを言われてしまえば、私から反論できることはない。私を殺人鬼と思うなら、そう呼び続けていい」
「————?」
カルディラは、視線を下げて諦めたような口調で声を出す。また反論して、言いくるめようとしてくると思っていたが、彼女はすんなり容認した。しかし、彼女はシドへと歩み寄り、手を伸ばしながら声を出す。
「——だが、これだけは信じて欲しい」
カルディラはシドの胸ぐらを掴み、真摯な眼差しを向けた。突然の出来事にシドは後退り、足元の木の根に突っかかってヘニャリと座り込む。
2人は地べたに膝をついて顔を合わせる。
「な、なにを……」
「私は魔法で罪無き人を殺さない。そして、シド。お前のことも今後傷つけたりはしないことを。」
「————!?」
今まで見たことのないカルディラの表情だ。強く訴えるような声と瞳。シドの制服を握りしめる彼女の手が、震えていることに気が付き、シドは言葉を失った。
反論はできない。罪を拭えなくてもいい。殺人鬼と呼ばれても構わない。
それでも信じてほしいと、彼女は訴える。
「約束する。絶対に傷つけない。必ず生きて家に返す。だから、神聖結晶を取り返すことに協力してほしい」
「————なんで、そこまでして」
圧倒される中で、言葉を捻り出して問い出す。
あんなにも実力のあるカルディラが、こんなに弱くてちっぽけな存在に訴えてまで
なぜ、神聖結晶を?
「本物の神聖結晶は強大な力を持っている。それは、人が、国が、世界が狂う……それほど大きい力だ。」
「————」
「その神聖結晶を使って、スカイア帝国はそう遠くない内に消滅するだろう。私はそれを絶対に阻止しなければならない」
「消滅……!?なんで、そんなことわかるんですか!?」
未来の予言をするように、カルディラはそう語る。あまりにも突拍子もない話を出されて、耳を疑ってしまう。しかし、カルディラの顔は変わらぬまま、更に強くシドの制服を握りしめ、続ける。
「深くはまだ語れない。ただ私はその神聖結晶の強大さを知っていた。だからずっと私が保管していた。なのに、それを奪われた今となっては、誰に、何に、何時、使われるかわからない。神聖結晶は我々人間にとって、兵器なんだよ。事が大きくなりすぎる前に、取り返さなきゃならない」
カルディラが未来について、神聖結晶について、どこまで知っているかはわからない。だが、もしスカイア帝国が消滅するというのが本当に起こりうるなら、シドも、家族も、友達も、先生達も、民も、無事じゃ済まないだろう。空いた口が塞がらない。
「だからどうしても、神聖結晶を取り返したいんだ……学校を襲い、お前を攫ったことを許して欲しいとは言わない。けど、未来の為にも、今だけ、協力してほしい……シドの力が必要なんだ」
身勝手な要求だ。
起こるかどうか確定した訳じゃない。カルディラの戯言かもしれない。そんなものに、付き合えと?バカバカしいにも程がある。
彼女が向ける視線も、手の震えも、話も、演技かもしれないってのに、信じて、協力しろと——?
シドに対してメリットが無さすぎる。これまでに命をかけて、抗い、恐怖に耐えてきたのに、自分のやり方は貫こうと言うのか。
身勝手だ。あまりにも。
首を横に振るべきだ。
従う必要はない。
考える余地もない。そうだろ?
「こんなこと、話す予定じゃなかった。お前を巻き込むことも、神聖結晶が奪われることも。こんな予定じゃなかった。何もかも、こんなはずじゃなかった。
…………私は私が大嫌いだ」
ポツリと彼女が零した憎しみを帯びたような、その言葉がシドの心に響き渡る。
ただの直感。直感に過ぎないが、その言葉は信じられる……いいや、信じたいと思ってしまった。
シドも自分自身が嫌いだ。周囲に認められようとする事だけ考えて、後先考えずに行動して、後悔して、何もできず、成長もできず、「こんなはずじゃなかった」と言い訳する自分が、嫌いだった。
だからわかる。自分を嫌っている人間の言葉だけは。カルディラのその想いが、姿が、過去のシド自身と重なったから。あれは紛れもなく、自分を嫌っている姿だ。この瞬間だけ、初めて、カルディラと対等なところに立っていると感じてしまった。
もう少し考えてから行動すべきだ。信じない方が、協力なんてしない方がいいに決まってる。
だけど——
シドは、元から感情に流されやすく、感情で動いてしまう人間らしい。
「——本当に、生きて家に返してくれるんですね?」
「——この命にかえても、必ず」
「——じゃあ、そこだけは信じてあげますよ」
カルディラが殺人を、盗みをしていないかどうか。
カルディラの未来の予言の話が本当かどうか。
そういった難しい部分はまだ信じない。如何せん、情報が、証拠が、シドの中で不足しすぎているから判断できない。
故に、カルディラが「これだけは」と言ったことだけを信じることにした。今確実に判断できることだけを信じるのだ。
これは自分で決めたこと。
自分の魔法を信じ、自分の魔法を認められる機会を与えてくれたカルディラを、そして、カルディラの出す魔法の美しさと出会えた今だからこそ、彼女を知りたいと思う。
シドの言葉に、カルディラは目を見開く。意外に思ったのか、数秒間彼女は固まった後、シドの制服から手を離して自分の袖を捲り始めた。
そして、カルディラは自身の腕に向かって指をなぞると、そこから血液が溢れ始め——、
彼女の白い肌に、鮮血が流れていく。
「ちょちょちょ!!突然何してんスか!!」
「これは覚悟の証明だ。私が今提出できる証明は、こんなものでしかないが……無いよりは良い」
「は!?」
シドがカルディラの血を見て騒いでいると、シドは傷ついた自分の腕に違和感を感じる。違和感の出どころは狼から切り裂かれた切り傷だ。腕を前に持ってきて、確認しようとする。
その時、シドの傷口から数滴の血液が宙に浮かび始めた。
同時に、カルディラから出ている血液も宙に浮き始め、1箇所に集結する。
「シド、私と血の契約をしよう。これを使ってシドを傷つけない、家に返すと約束する」
「血の契約ぅ!?ってそれは、なんかやるとヤバくて、認められた人以外法律で禁止されてるやつじゃなかったですか!?」
「案ずるな。お前は契約がバレても、カルディラに強制的にやらされた、と言えばいい」
血の契約。それは血と魔力を使用した契約方法。普通の紙に書いて行う契約とは違って、この世界の理に干渉し、絶対的な影響力を伴わせる契約方法。
行った者は、その血と魔力を媒介に存在スケールを高められ、世界が耳を傾ける。
故に、契約内容を破れば世界が契約者に直接罰を与える。最悪の場合、死に至る危険な契約だ。
「私はそれくらい真剣ってことだ。私ばかりメリットを持っては釣り合わないだろ?それに、約束事はこれなら確実だ」
「俺に法律違反というデメリットが付与されますけどね!……血の契約は絶対……なんですよね?」
互いの血液が輝き始める中、シドは眉を下げながら声を出す。シドもそこまでバカじゃない。血の契約が、この世界でどれほど影響力があるか知っている。契約の内容もシドが完全有利なものだ。
それでも行うほど、カルディラは本気なのだろう。
「血の契約も魔法の一種だ。魔法は嘘をつかない」
「——————」
言葉で信用を得ようとするのではなく、魔法そのものを証拠とする、というのは、合理的な考えだ。カルディラらしい。
シドは自身の腕をカルディラに寄せ、傷口から溢れる血液を差し出す。
もうこれ以上、問い質すことはない。
集まる2人の血液が大きくなり、強く輝きを放ち始めた時、シドは力強く拳を握り、カルディラは宣言した。
「——私は、シドを一切傷付けず、家に返すと、
流血と魔力をもって、ここに誓おう」




