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Memory Rewrite(メモリー・リライト) 過去は変えられる。でも世界は変わらない。  作者: レモンティー


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第十一話:リセット

「これ、実質無料じゃね?」

和田は、とんでもないことに気づいた。

『Memory Rewrite』では、ゲーム終了と同時に過去へ戻る。

ゲーム内で使った金も、現実には持ち越せない。

逆に言えば――

**ゲーム内で何をしても、現実の財布は減らない。**

「……。」

「つまり。」

「一回くらい、行ってみるか。」


和田は人生で初めて風俗店の暖簾をくぐった。

受付。

緊張。

待合室。

心臓はバクバク。

「和田様、お待たせしました。」

「はい!」

声が裏返る。


帰り道。

和田は空を見上げていた。

「すげぇ……。」

感動していた。

「こんな世界があったのか。」

そして翌日。

また『Memory Rewrite』。

また未来へ。

また同じ店。

受付のお兄さんが笑顔で迎える。

「いらっしゃいませ。」

もちろん初対面である。

和田だけが昨日を覚えている。

「これ……。」

「毎回初回じゃん。」


そこから和田は暴走した。

月曜日。

一軒目。

火曜日。

二軒目。

水曜日。

高級店。

木曜日。

地方遠征。

金曜日。

「今日はコンセプトを変えてみよう。」

土曜日。

「社会勉強。」

日曜日。

「研究。」

理由だけは毎回立派だった。


ある日。

受付のお兄さんに聞かれた。

「ご新規様ですか?」

和田は笑顔で答える。

「百回目です。」

「?」

「いや、初めてです。」


店を出る。

「ありがとうございました!」

「またお待ちしております!」

和田は小さくつぶやく。

「来るよ。」

(でも君たちは知らない。)


そんな生活を何十回も繰り返した。

ある日。

『Memory Rewrite』を終了。

現実へ戻る。

財布を見る。

中には三千円。

コンビニのおにぎりを買う。

レジで店員が聞く。

「温めますか?」

和田はぼんやり答える。

「お願いします。」

レンジの音を聞きながら思う。

「昨日まで毎日豪遊してたのにな。」

おにぎりを一口。

「うま。」

思わず笑った。


その夜。

和田はベッドに寝転びながら考える。

「結局さ。」

「一番楽しかったのって。」

少し考えて。

笑う。

「初めて行く日のドキドキだったな。」

何十回繰り返しても、

毎回相手にとっては初対面。

でも、

自分の感動だけは二度目、三度目になる。

新鮮さは、少しずつ薄れていった。


翌日。

また『Memory Rewrite』を起動する。

繁華街の前まで来る。

店の看板を見る。

少し考える。

そしてスマホをしまった。

「今日はやめとくか。」

代わりにラーメン屋へ入る。

「いらっしゃい!」

カウンターに座る。

ラーメンが運ばれてくる。

湯気が立つ。

一口すすって、

思わず笑った。

「……こっちの方が落ち着くな。」

未来をやり直せる世界でも、

人は永遠に刺激だけを追い続けられるわけじゃない。

和田は今日も『Memory Rewrite』を楽しむ。

ただ最近は、

豪遊する日よりも、

普通の日を選ぶことが少しずつ増えていた。

「結局、一番贅沢なのは。」

スープを飲み干してつぶやく。

「飽きても戻れる場所があることか。」

そう言って和田は店を出た。

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