第十話:出た台を打っても、出ない男
第九話 「出た台」を打っても、出ない男
「今回は勝った。」
和田は確信していた。
『Memory Rewrite』を起動し、一週間前へ戻る。
あの日。
朝からパチンコへ行き、八万円負けた。
財布は空っぽ。
心も空っぽ。
「二度と来るか!」
と捨てゼリフを吐いて店を出た。
しかし。
帰る途中、店の出玉情報を確認できるサイトを開いた。
そこには信じられない光景が映っていた。
**自分がさっきまで打っていた台が、そのあと六万発。**
「おいおいおいおい!」
「あと一時間いただけで人生変わってたじゃねぇか!」
その日は悔しくて眠れなかった。
だから今回は違う。
「未来を知ってる俺に死角はない。」
開店ダッシュ。
一直線。
あの日めちゃくちゃ出てた台へ。
「今日は逃がさん。」
ドヤ顔で着席。
千円。
……
二千円。
……
五千円。
……
一万円。
何も起きない。
「まぁまぁ。」
「こういう日はある。」
二万円。
三万円。
四万円。
スーパーリーチ。
ハズレ。
激アツ演出。
ハズレ。
金文字。
ハズレ。
和田は笑い始めた。
「逆にすごい。」
その頃。
店の反対側。
見覚えのある台で、
知らないおじさんが叫んだ。
「きたぁぁぁぁ!」
キュイン!!
大当たり。
連チャン。
連チャン。
また連チャン。
店員がドル箱を積み始める。
和田はゆっくり振り向いた。
「……。」
その台は。
**前回、自分が八万円負けた台だった。**
「え?」
もう一度見る。
まだ当たる。
まだ続く。
店中で一番出ている。
和田は口を開けたまま固まった。
「いや待て。」
「おかしい。」
「未来ではこっちが出てた。」
「だから今日はこっちに座った。」
「なのに……」
頭の中で何かがつながる。
「もしかして……」
「俺が座ると出ないのか?」
試したくなった。
和田は席を立ち、
爆発中の台を遠くから見守る。
閉店まで出続けた。
翌日。
もう一度『Memory Rewrite』。
今度は最初から、
前回負けた台へ座る。
「さぁ来い!」
……
静か。
一時間後。
隣の台が爆発。
「おい!」
移動。
移動した瞬間、
さっきまでいた台が爆発。
「え?」
また移動。
また元の台が爆発。
店内はお祭り。
和田だけが島をぐるぐる歩いていた。
常連のおじさんが笑う。
「あんたが離れた台、全部出るな。」
店員まで苦笑い。
閉店。
和田は十二万円負け。
店を出ると夜風が気持ちいい。
「なるほど。」
缶コーヒーを開ける。
「未来を見てもダメか。」
少し考えて、
ひとりで吹き出した。
「結局さ。」
「出る台を知ってても。」
「**俺が座ると出ないんだわ。**」
しばらく笑いが止まらなかった。
翌日。
和田は競馬で大勝ちした。
未来を知っているから当然だ。
でも、その金でまたパチンコへ向かった。
友人が聞く。
「なんで?」
和田は真顔で答えた。
「今日こそ俺でも出る台を探す。」
「未来で分からないことが、一つだけある。」
「**俺のヒキだけは、何回やり直しても読めねぇ。**」
友人は腹を抱えて笑った。
和田も笑った。
『Memory Rewrite』は未来を教えてくれる。
だが――
**「運が悪い男は、未来を知っていても運が悪い。」**
それだけは、何度過去へ戻っても書き換えられなかった。




