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episode・get into position

 おっさんはそれから数日、公爵家騎士団の魔物討伐へと同行し、魔物へと矢を射かけていた。


 次第にその精度は上がり、気が付けば5バンプと言われる距離から頭を射抜くことが出来るようになった。


 ただ、やはりとても地味なことに変わりはない。勇者召喚されたのだから、一本の矢を放つと10本に増えるだとか、魔法の矢となって相手を燃やし尽くすようなものを想像したおっさんには、まるでレベルアップの様なファンタジー的なイベントが皆無な事に落胆していた。


 それから公爵家で過ごす事10日近く、その日おっさんは、公爵邸で的を射ていた。


「おお!まさしくスケ殿の様な腕前だ!」


 そう言って背の高いイケメンが数人現れた。連れて来たのは公爵らしい。


「彼が今回の召喚によって遣わされた一人、我が家の婿だ」


 と、完全にその気で紹介している事に、おっさんは苦笑いだった。


 そして、おっさんを置き去りにした話がさらに進んでいく。


「しかし昨今の召喚では、かなり大規模な魔法が使える勇者たちが召喚されていると聞く。どうなのだ?」


 イケメンの1人が公爵にそう尋ねる。


「うむ、その点は心配ない。今回の勇者たちは大規模魔法ではなく、近接攻撃に特化している様なのだ。回復術も稀に見るウデではあるらしいが、魔法という点では、過去ほどではないと聞いている」


 そう語る公爵の話を聞きながら、おっさんは3人を思い出していた。なるほど、あの少年が賢者と呼ばれるほど高度な魔法が操れるとは思えない。

 ギャルが勇者であの緩いのが聖女と言うのもあまり想像できない物ではあるが、聖女の力は本物らしいと驚いたほどだった。


「しかし、それでは大来襲に対応できまい」


 若者の言う通りだろうなとおっさんも考えた。


 ここ数日の討伐から考えれば、近接で剣や魔法がいくら強かろうと、集団でやって来る相手に対しては、あまりのも手数が少なすぎる。ゲーム的にも大規模、或いは遠距離攻撃は必須だろうと考えられたからだ。


 その点、弓と言うのは遠距離攻撃向きではあるが、今のおっさんではあくまで名人級ではあっても、ファンタジー的な事ができる要素が何一つ存在していない。

 手にしたこともない弓をもって、僅か数日で名人級の腕前という時点で、ファンタジー的ではあるが、この場合必要なのはそこではなかった。


「そこでだ、当初は婿殿を貴殿ら守り人へと紹介するだけのつもりであったのだが・・・・・・」


 そこで、公爵は言い難そうにしている。


「いや、我らとて無理だぞ。大来襲は王国だけに来るのではない。我らの戦力を貸すと軽くは言えん」


 まあ、どこでもそう言う話になるよなぁと、おっさんはしみじみと納得していた。


 予想通り、若者たちは守り人であり、見た目通りの年齢ではなかった。


 ふと、おっさんは公爵と共に現れたオラの方を見た。気付いたオラがおっさんの方へと近づく。


「何でしょうか?」


 寄って来たオラへと、気になっていたことを聞いてみる。


「王国には、弓を扱うものは皆無なのか?」


 そう、弓が贅沢品であるという。たしかに、それであれば扱う者は少ないだろうし、魔法が優勢なのも確かだろう。しかし、これまでのわずかな期間ではあるが、おっさんは誰もが魔法が使える世界ではない事も見ていた。

 正確には今のおっさんよろしく、何らかのパッシブ系スキルとして発現している例はあるのだろうが、皆が皆、攻撃魔法が使えるわけではない事も見て来た。

 討伐においても、初日は魔法槍しか連れていなかったが、後日、剣や通常の槍で武装した護衛を引き連れて討伐も行っている。

 つまり、弓が皆無ではないのではないかと考えた訳だ。


「いいえ。守り人の血を引く公爵家の者は当然、扱えます。そして、その家臣である公爵家の騎士、中には兵にも弓を扱える者は居ります」


 という答えが返って来た。さらに


「それ以外にも、少数ですが弓を扱うものが近衛騎士団にも居ります」


 そう聞いて、ふとおっさんは思いついてしまった。


 頃合いを見計らい、公爵と守り人の輪へと声を掛けたおっさん。


「すいません。守り人の弓は、王国民には扱えないモノですか?」


 公爵だけでなく、守り人もキョトンとしている。


「我が家の者は扱えるぞ。もちろん、優秀な騎士や兵にも扱える者はおる。だが、魔法と大差ない射程のものがほとんどだ」


 何をいまさらといった風に公爵が口を開く。


「技量は個人差が大きいが、弓自体は何も特別なものではないな」


 守り人もそう口にする。


 王宮で手にした物、現在使っている物、どちらも妙に樹脂っぽい質感の弓で、王国製に思えなかったが、それは当たりだったらしいと気づいたおっさん。


 そこで詳しく聞いてみれば、王国では魔法の普及で弓が廃れ、今や王家や公爵家などの限られた守り人と接点を持つ貴族が個人的な付き合いで弓を入手し、時には家臣へ下賜した分しか出回っていないらしい。


「それならば、私が率いる弓騎兵隊として新たに組織したりとか‥‥‥」


 ここ数日のノリで、おっさんはそう提案する。


「それは、古のスケ殿とおなじ運用をしようと言うのか?」


 と、どこか訝し気に聞いてくる公爵。


「それは面白い!」


 と、どこか乗り気の守り人。


 おっさんは騎馬武者と徒歩槍隊を編成する案を提示した。


 それに対して公爵もどこか納得な様子で、守り人は少々不満顔ではあったが、エクウスに騎乗して弓を扱う騎兵が主力を成すと説明すると賛同を得ることが出来た。


「トータ殿、その様な部隊を率いるとは心強い」


 オラがそう言ってきたことで、おっさんはハタと疑問に思った。


「俺が率いるの?」


「他に誰が居るのだろう?」


 公爵、ないしオラが率いる前提で考えていたおっさんには、その返答が驚きでしかなかった。


「自ら言い出したこと。ぜひとも婿殿の勇士を見て見たいモノよ」


 公爵までそんなことを言い出している。


 まさか、自分がトップになるなど考えたこともなかったおっさんである。


 有頂天だったおっさんは、一気に現実に引き戻されたようなショックを受けたが、守り人まで大変な乗り気とあって、今さら取り下げも出来ない。


「これはスケ殿と同じく、豪華な鎧が必要だ!」


 なぜか会って早々盛り上がりを見せる守り人を余所に、おっさんだけがテンションをダダ下がりさせていた。 

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重装騎兵再臨の瞬間である
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