episode・on yuar mark
公爵と守り人がとても盛り上がってしまい、おっさんはついて行けなくなり、オラへと話しかける。
「オラも弓が引けるのなら、どうだろうか?」
公爵を引き込むのは無理そうなので、オラを引き込もうと画策しただけだったが、オラはそのような事はお構いなしで喜んでしまった。
「はい、ぜひお願いします」
こうして、おっさんの思い付きはオラというブレーンを得て、現実的な編成案が作られていった。
公爵家の騎士や兵士からすべてを用立てるのは、いくらおっさんの要望でも具合が悪いという事で、一度王都へと戻り、正式に女王へと願い出た方が良いという話になった。
それはそうだとおっさんも納得し、盛り上がりを見せる公爵と守り人へと話を持っていく。
「おやおや、すでに二人でそう言う事を考えていたのか。これは楽しみだ」
守り人は上機嫌でそんな事を言う。そこへ、おっさんが要望を出した。
「ふむ、それはこちらから言おうと思っていた事だ。ぜひともスケ殿同様の鎧装束で揃えよう」
こうして、おっさんはオラという優秀なブレーンを得て、新たな一歩を踏み出すことになった。
ちなみに、オラの腕前はというと、2バンプの騎射が余裕で出来る腕前だった。これで、事実上の指揮官をオラに丸投げできそうだと、おっさんは胸をなでおろすのだった。
翌日は公爵や守り人を連れ立って、公爵家の騎士や兵の中から弓の巧い者たちを選りすぐり、まずは公爵領での練成を依頼し、おっさんとオラは王都へと出発した。
おっさんからすればあまりにも上手く行き過ぎていると不安が先行しているが、公爵やオラにとっては自分たちの地位や名誉も絡む話なので乗らない手はなかった。
なにせ「無精者」と言われた召喚者が、古の勇者スケと同じ弓の名手なのだから、守り人とのつながりがある公爵家が放っておくはずがなかった。
王都への帰路、おっさんはオラから古の勇者スケ殿についての話を聞かされた。
その時、スケ殿ら数騎の騎兵が召喚されたらしい。
当時はまだ公爵家は存在しておらず、その時の大来襲に活躍したスケ殿と彼らに協力した守り人の間に産まれた子供が、王国で公爵位を賜ったと聞かされた。
「スケ殿は、召喚から100年近く生きたらしい。その間、守り人と暮し、彼らの弓の技術を飛躍的に向上させた」
そう語るオラの言葉に、ふとある疑問が湧いたおっさん。
「スケ殿とその仲間たちは守り人、王国とは対等の関係だったらしい。守り人として生きる方が性に合っていた彼らは、王国をどうこうしようとは考えず、スケ殿の息子を王国へ仕官させたんだそうだ」
戦国時代ではなく、鎌倉時代か室町初期の武将であるらしいスケなる人物。彼は自らの国を建てるような野望を抱くことはなく、かなり平和的に暮らしたらしいというのは驚きだったおっさん。
その後にはかなり破天荒な勇者などが召喚されたりもしたそうで、しっかり王国に根付いたスケなる武将?の子孫は今でも公爵家として王国に仕えているという事らしい。
まあ、長命な守り人の血が入った扱いにくい家という部分を除いては。
王都までの間、おっさんはオラの距離の近さに若干疑問を抱いたが、あまり考えない事にした。
王都に着くと、オラに先導され女王の元へと向かった。
先触れを出していたこともあって、時間を置かずに女王との謁見が叶う。
「里帰りはどうだったの?オラ」
女王はまずそう聞いた。
「はい。とても充実した日々でした」
そんな、どこか社交辞令的な挨拶から始まり、本題を切り出す。
「なるほど。古の勇者スケと同じなのね。ならば認めましょう。オラの近衛隊長としての任を解きます。新部隊に必要な人員を探し、速やかに勇者による部隊の構築をはじめなさい」
かなりすんなりと話が進んだ。
「ところで、勇者たちを見え行かなくても良いのかしら?」
そう、女王がおっさんへと問いかけて来た。
「では、お言葉に甘えて」
おっさんは長年の習性から、特に面識がある訳でもない3人との面会を希望するようなことを口走ってしまう。
言った後では引くに引けず、特に嫌という訳でもないので促されるままに案内されていく。
オラは早速、人員探しに向かうらしい。
そこで見たのは、エフェクトの派手さが何もない体術と剣技だった。
魔法を司るはずの賢者が、なぜか体術を駆使して的となる木を粉砕していく。ちょっと何やってるのか意味が分からない。
勇者らしい装束のギャルが見事に剣を振り回し、目標となる木を切刻んでいく。まあ、そうなるだろうと納得したおっさん。
緩いもう1人は、白を基調とした修道士のような恰好をして、緩く何かやっている。よく分からなかった。
しばらくして彼らがおっさんに気付く。
「無精者が何しに来たんだよ、おっさん」
そう言ってきたのは、少年だった。
おっさんは自身が弓を使える事を伝える。
「100m以上先のゴブリン狙えるとか、ウケる~」
ギャルが笑って言う。
「キューへー」
緩い、おかしなイントネーションでそう言われた。確かに当たらずも遠からずだった。
そして、なぜか少年がオカシな提案をして来る。
「だったらよ。討伐に行こうぜ。おっさんがどんなか見てやるよ」
そんな事を言われてもと、案内人を見れば頷いている。
こうして、騎士の先導で王都の外へと出て、魔物討伐を行う事になった。オラにはその旨連絡してもらっている。
おっさんは弓矢をもって3人に付き従い、牛車に揺られて草原へと向かう。
王都の周りにも魔物が湧くポイントがあるとかで、そこへと向かった。
「いるいるぅ~」
ゴブリンを見て喜ぶ少年。めんどくさそうなギャル。
騎士や兵士も展開して魔物討伐が始まった。
まずはおっさんが3バンプと言われる距離から弓を射かけて削っていく。
さらに近付けば、少年が手を突き出して何かやっている。よく分からないおっさんだったが、どうやら攻撃魔法だったらしく、ゴブリンがバタバタと倒れていった。
そこへと騎士の支援を受けながらギャルが斬り込み、残ったゴブリンを薙ぎ払った。
「地味だな、おっさん」
少年がそう言って来る。自分でもそう思っているので、何も反論しないおっさん。
「魔法も県も使わないから無精ものー」
という緩い声まで聞こえてくる。
なるほど、確かにそれはそうかも知れんなと思うおっさんだった。
それ以降は3人と接触することなく、弓騎兵要員を集めた。
そうしているうちに所要の弓が届けられ、弓の訓練が始まった。
元が和弓だった長弓だからだろうか、皆が2バンプと呼ばれる距離を射抜けるようになっていった。
気前の良い守り人が頑張ったのだろう、ひと月を過ぎた頃には、さらに鎧まで届いた。
その頃には、おっさんやオラも含め、流鏑馬が練習メニューに加わった。
そんなある日、おっさんはオラに呼び止められる。
「トータ殿。そろそろ公爵家としての身をハッキリさせても良いだろうか」
おっさんにはオラが何を言っているのか分からなかった。
「謙遜しなくともよいではないか。当代一の弓使いに間違いはない。それに、私と歳も変わらないではないか」
年は近く、ふたりとも中年である。そう思ったおっさん。
「守り人の血を引く私は、あと20年はこのままだろう。召喚者であるトータ殿も、しばらくはそう変わらない容姿のままだと思う。私ではなにか不満だろうか?」
出来れば聞き流したかったおっさんだが、そこまで言われては逃げるのは失礼だと思った。
「そうか、それはよかった。これから討伐もある。その前に身を固めておきたかったのだ」
そう言うオラを直視できないおっさんだった。
それからさらにひと月以上かけ、公爵家で編成した部隊とあわせ、新たな女王直轄部隊が誕生した。
「3人の勇者たちには根源の討伐へ向かってもらう。トータよ。その方には弓騎兵を預け、勇者たちが討ち漏らした魔物の討伐を命じる」
魔境と呼ばれる場所で活性化した魔力の泉。そこに居ると言われる「魔王」の討伐へと勇者を送り出す事になったが、勇者たちだけでは討ち取れない多くの魔物を、エクウスの機動力を生かして迎撃するのがおっさんの任務となった。
「トータ。勇者たちに一言言って来た方が良いと思う」
オラにそう言われ、
「たしかに。一言くらい挨拶しておくか」
先に王城を後にした3人の元へと、エクウスを向かわせるおっさんだった。
第一話に戻る。
という訳で、「にっぽんの歴史!」の投稿間隔が間延びする分をどうにかしようと、ナーロッパ設定で独自色を出してみようという企画を作ってみた。
「冒険者の居ない異世界」という話にしてみたかった。
魔物が素材にもならず、価値のある物を何も落とさないという世界。こんな世界だと冒険者という職業が成り立たず、魔物討伐は領主や傭兵の仕事になるだろう。
さらに、広域魔法と言う物もないのでとても地味。
きっと流行る事がない設定だとは理解してるんだけど、どうしても「普通ならこうなんじゃね?」とひねくれたくなってしまうんだよ・・・




