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Episode・pre-third

 次の日、おっさんは途方に暮れていた。


 勇者一行は何やらやっているらしいが、おっさんには声が掛からなかった。


「俺は無精者じゃないんだがなぁ。鑑定がおかしいだけじゃないか?スキルだかジョブが無精者って、なんだよ」


 たが、おっさんはオラ付きという立場らしく、彼女がデスクワーク中は何もやる事がない。


 おっさんには意外な事に、オラは女王の警護を預かる部隊長の1人であった。

 年齢の割に出世したエリートなのか、血筋の影響かなどと考えている。


 残念な事に、おっさんにはデスクワークのスキルはない。これまで零細企業の作業員しかやって来ておらず、未知の書類なんて捌けるスキルは持ち合わせていなかった。


 そして、昼をまわるとデスクワークは終わり、鍛錬に向かうらしい。


 おっさんもミラと共に付き従い、騎士たちが集う運動場へと向かった。


 道すがら


「トータ殿は何か得手はあるか?」


 などと聞かれたが、これまで運動部に所属したことが無いおっさんは、得手と言われても答えようがなかった。


 かわりに、武将は弓、槍、刀の万能選手だと話を逸らす。

 実際はそんな事も無いだろうが、中にはそんなチート武将も存在したのは事実であったが。


 オチに「俺は何も使えないけど」と言ったものの、オラの反応は違っていた。


「そうか、弓、槍、カタナ?か。カタナとは、どんな武器だ?」


 そもそも、刀が存在しない事に思い至らなかったおっさんは、使用法が近いサーベルを例示する。


「なるほど、ならばその辺りを使えるのだな」


 オラは何か誤解しているな。と、思うおっさんだったが、無精者ではないと示すため、苦笑いで済ませてしまう。


 運動場の脇には練習用の用具箱が置かれ、組み立て式の棚には棒や木剣、あるいは刃引きの模造剣らしき物が並んでいる。


 オラはその中からサッと模造サーベルを手に取りおっさんへと渡した。


「騎乗が基本ならば勝手は違うだろうが、まずは試しだ」


 などと、まるでおっさんの心情への配慮がない。 


 武器を振るった事など無いおっさんは、イマイチやり方が分からなかった。

 片手持ちにも違和感しかなく、適当に言い訳をしてすぐに手放してしまう。


「なるほど、カタナというのは両手持ちのサーベルか。しかし、騎乗中は片手で振るう筈だが・・・」


 オラがそう言うのを苦笑いしながら聞き流し、次は槍の代わりに棒を渡された。


「騎乗して振るうには長すぎるな」


 などとまた適当に言い訳する。


 一応、映画で見たような型らしきナニカの真似をやって見れば、案外体が動いた。

 召喚直後から妙に体が軽いおっさんは、勢い余って振りすぎる。


「ふむ。さすが召喚者だ。合わない武器すら使えるのだな」


 オラが納得しているので胸を撫で下ろすおっさん。


「弓か・・・」


 さすがに弓の練習は運動場では無理があった。


 無くてよかったと安心するおっさんだったが、現実はそううまくは運ばない。


 弓の練習場もあると言われ、ドナドナされてしまう。


 やった事も無いのにどうしようと不安になりながら練習場に着いた。


 そこには先客が居り、弓を放っている。


 先客がおっさん達に気付いて振り向いた。


「オラではないか」


 その口ぶりはかなり高位だと思われた。


「これは陛下、失礼いたしました」


 オラとミラが跪く。


 ん?女王がトップじゃないのか?と、疑問が頭を過るおっさん。


「その方が、アリシアに召喚されたという勇者か?」


 王者の風格漂う壮年の男にそう問われ、どうしたものかと言い淀むおっさんだった。


「陛下、この者は勇者と共に召喚されし1人になりますが、勇者に相応しい鑑定結果を得られませんでした」


 オラが素直にそう答える。


「そうか。して、鑑定では何と」


 感情の乗らない声でそう問う男性。


「はい。無精者と・・・」


 オラは素直にそう答える。


 キョドるおっさん。


「無精者、か。では、アリシアであればすぐに摘み出せと叫んだのではないか?」


 それに対し、オラがあの場での出来事をそのまま話した。


「そうか。アリシアも不器用な事だ。確かにお前を娶る者となれば、今や召喚者しか居らんだろうからな」


 と、変な方向に話が向かっている。


 オラもその意図があったとは思えないと否定しているが、おっさんにはその辺りの機敏はよく分からなかった。


「して、召喚者よ。そこのオラは齢500ともいわれる長命種、守り人の血を引いておる。もう何代も前、数百年昔の勇者と守り人の末裔よ」

 

 それを聞いて驚くおっさん。エルフっぽい種族の血を引いているから美しいのかと、どこか納得もしていた。


「驚きこそすれ、それ以上の反応を示さぬか」


 前王であろう人物はそう言ってオラを見た。


「畏れながら、いくら守り人の血を引こうとも、四十にもなる身を娶るモノ好きなど居りますまい」


 まさかのカミングアウトだった。二十歳そこらに見えるのに、ほぼ同い年と言うのは驚きだった。


「そうか。ところで、何用だったのだ?」


 前王もそれ以上何を言うでもなく、話を先へ進めた。


「はい、この者が弓の鍛錬をと申しており、案内してまいりました」


 サラッとオラも受け流してそう告げている。


 だが、おっさんは弓など扱った事がない。


「そうであったか。では、これなどはどうだ?」


 などと言って、無造作に自分の弓を差し出してくる。おっさんも場の流れでそれを受け取っていた。


 その弓はどこか見慣れた質感を持つ不思議な品だった。


「ほう、特に驚きもせずその弓を持つか」


 そう問われたが、おっさんからすればドラマや映画でよく見なれた弓でしかなく、新鮮味がない。あるとすれば、あまりに樹脂っぽい質感にこそ驚きがあった。


 促されるままに弓を持ち、矢を渡されてしまった。


 さてどうだったか、などとドラマや映画を思い出す。そう言えば、流鏑馬を見た事もあったなと、思い出しながら矢を番え、引いてみればかなり重い。

 だが、なぜかそれが自然と姿勢が定まり、スッと重いながらも力まず引き絞れるように馴染んでいった。

 おおよその矢の軌道がイメージでき、ここというタイミングで矢を放てば、綺麗に的へと吸い込まれていった。

 イヤイヤと試しにもう一度、やはり軌道がイメージできるので、放てば的へと吸い込まれた。


「ふむ、古の勇者の弓を模したソレを、何の迷いもなく扱うか」


 前王がどこか感心したようにそう呟き、オラとミラは驚きで目を見開いていた。


 おっさんは召喚後から体が軽いことを告げ、手に持つ弓が自身の国で昔使われていた武具のそれである事を伝えた。


「であれば、アレにも見覚えはないか?」


 そう言われて差された方を見れば、そこには大鎧が飾られているではないか。


「アレもそうです。武将が身に着けた鎧です」


 そう言えば、オラがさらに驚いている。


「なるほどな。鑑定がオカシイのではなく、読み取る事に手間取ったのかも知れん」


 確かに手間取っているように見えたのは確かだった。


「だが、我が国において弓を選ぶというのは、贅沢でもあり、ある意味では無精者と言うのはその通りであろうな」


 どこか茶化すように、前王はそう言った。


 

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本当に「武将者」?
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