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間話 最後の一日

 飛行場には爆音が響いている。

 旧式となった機体が身の丈に合わない大きな爆弾を背負い、もがくように離陸していく。

 

 俺の名前はデイヴィッド。

 ヴァントリアス帝国のパイロットだ。

 俺は空軍に入ってから3年になる。

 空軍ができたのは5年前だからキャリアでいけば中堅くらいだ。

 俺が空軍に入った理由は正直、あんまりいいもんじゃない。

 

 俺はもともと、農家だった。

 田舎育ちで、空とは全くの無縁。

 きっかけは些細だった。

 俺は父と喧嘩した。

 今思えば、俺が悪かったのかもしれない。

 それで俺は、家を出て、旅に出た。

 何とか首都までたどり着いたものの、知ってる人はいないし、裏路地に連れ込まれてカツアゲされるしで、散々だった。

 そんな時に目に入ったのがパイロット募集のポスター。

 俺は地上に嫌気が際していた。

 あの何もない、どこまでも広がる大空に逃げることができたらどんなに気持ちいいだろう。

 俺はその足で空軍の兵舎に向かった。

 

 みすぼらしい格好をした、ロクに風呂も入ってない奴。

 当然、門前払いされた。

 けど、そんな俺をみかねて何とか俺に入隊の試験を受けさせてくれた人がいた。

 それが今の俺の上官。

 おやっさんって俺は呼んでる。


 俺は基本出来な算術や読み書きはできたし、どうやら自頭の報も悪くはなく、試験は合格。

 そこから、おやっさんによる、地獄の訓練が始まった。

 どうやら、おやっさんはほかのどの隊より、厳しく指導することで有名だったらしい。

 俺はその訓練に何とか食らいついた。

 最初に空を飛んだ時のあの感動は今でも鮮明に覚えている。


 俺から三年。

 気が付けば腕も立つそこそこのパイロットになった。

 そんな時、俺に一つの指令が下った。

 

『敵に対して、特別攻撃を敢行せよ』


 要は敵に体当たりしろって命令だ。

 俺は国から死ねと言われた。

 この命令を出したのは恐らく辻閣下だろう。

 辻閣下は数々の戦いで勝利をおさめ、帝国の植民地を劇的に増やした名手。

 しかし、そんな辻閣下も、最近は負け続きで気が付けば首都が陥落。

 どうすれば勝てるかを模索した中で思いついたのが、必死必中の体当たりなのだろう。

 爆弾が必ず当たれば敵に被害を与えられる。

 それに、心理的な恐怖もだ。

 

「俺はこんなの認めないぞ!」


 真っ先に声を上げたのはおやっさんだった。


「貴様らは俺の可愛い部下に死ねと言うのか!」


 指令を伝えに来たお偉いさんに、おやっさんは嚙みついていた。


「これもお国のため、国家存亡のためには必要なのです。ここで負ければ、あなたたちは愚か、ご家族や友人もどうなるか分かりませんよ」


「だったら貴様らがいけばいいだろう!」


 俺はおやっさんの肩を叩いて静止させる。


「こいつらも、本当はこんなこと言いたくはないと思いますよ」


 見ると、兵士はうつむいていて、帽子のつばで目を隠している。

 人に死ねと言う仕事、誰がやりたいと思うだろうか。


「すまなかった。お前らも大変なんだな」


 おやっさんは謝罪した。


「お気遣い、感謝いたします」


 彼らはそう言ってその場を後にした。





 それから数日。

 ついにその日が来た。


「すまない、俺は何もできなかった」


 おやっさんがそう言って、俺たちに深々と頭を下げる。


「俺もすぐ、そっちに行くからな」


 おやっさんは涙ながらにそう言った。


「馬鹿なこと言わんでください。一人でも多く、生き残りましょ」


「だが.... 」


「俺たちの分まで、おやっさんは人生を謳歌してください。娘さんだっているんでしょ?」


「しかし.... 」


「そんで、寿命で死んだら、最高の人生だったって言って、俺らにその話聞かせてくださいよ。それまで   

 待ってますから」


 おやっさんは俺が言い終わるよりも先にその場で泣いた。

 男泣きっていうのか、泣いてる姿も様になっている。

 それから少しして、おやっさんが泣き終わると、俺の方に近づいてきた。


「お前に合わせたい人がいる」


 そう言って、俺を兵舎の方に連れて行った。

 自分の部屋に入ると、そこには、父と母がいた。


「あの時は、お前の気持ちも考えずにすまなかった」


 父は謝罪した。


 その瞬間、今までため込んできた何かが、爆発した。

 そして泣いた。


「ごめんなさい.... 俺、あの時意地になって.... 家を出て.... それで.... 」


 そして、父は、俺を抱きしめた。


 ああ、どうして今、仲直りしちゃうかな。

 俺は急に、死ぬのが嫌になった。

 あんなにも憧れた空が、今では嫌になっている。

 

「お前、特攻するんだってな」


 父は真っすぐ俺の目を見る。


「うん。間もなく出発なんだ」


「そうか。立派になったな。お前は我が家の誇りだ」


 そう言って、俺の背中を押した。


「どうして、連れてきたんです?」


 俺はおやっさんに質問する。


「以前、けんか別れした両親の話を聞いたからな。出身地も前に聞いていたし、見つけるのは難しくなか 

 った。父になったからか、お前のご両親の気持ちが痛いほどわかるんだ。息子が死ぬのに、喧嘩別れし

 たままなんて言うのはあまりにも悲しいからな」


 俺の人生は二度もおやっさんに救われてしまった。


 

 そして、俺は飛行機に乗り込んだ。

 飛行場には爆音が響いている。

 旧式となった機体が身の丈に合わない大きな爆弾を背負い、もがくように離陸していく。


 僚機と連絡を取りながら、飛行は順調。

 しかし、俺は死にたくなかった。

 せっかく仲直りした父と母と、俺はもう一度生活したかった。

 操縦桿を握って、進路を変えるだけ。

 トラブルとか言って理由をつければ別に責められることもない。

 頭ではわかっているのに、どうしてもできない。

 体が思うように動かない。

   

 手は震えていて、焦燥感も凄い。

 それなのに、どうして思い通りに動かないのだろうか。


 ついに、目標が見えた。

 敵戦車軍団。

 俺の死にたくないという意志とは反対に、手は勝手に操縦桿を操作し、敵に向かっていく。

 そして、急降下を開始。

 ああ、あと1分もしないで、俺は死ぬ。

 なんだかんだ、楽しい人生だった。


 俺は照準器を覗いて、最後の微調整をする。

 敵の対空砲火で見えずらいが、何とか調整を完了。

 いいコースだ。

 間違いなく、敵のど真ん中だ。


 そして、その時は訪れた。

 俺はあえて、無線を本部に飛ばした。 






「空軍の馬鹿野郎!」





 そして俺は死んだ。

そろそろ物語も終わりを迎えそうになりました。

最後に質問返しをしたいと思います。(実はやってみたかった)

質問や指摘等ございましたらぜひお願いします。

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