『戦争の天才』は最後の作戦を実行する!
この話は『戦争の天才』はイザベル・シードと対談する!を読んでからの方がよりお楽しみいただけます。
首都陥落から1年。
ヴァントリアス帝国では諸侯を集めた会議が行われていた。
「首都を落された我々に勝ち目はない!降伏するべきだ!」
公爵、リアム・リードは辻に向かってそう言う。
「もし、国民全員が奴らの虜囚となったら君は責任が取れるのかね?」
その質問にリアム・リードは答えない。
「我々の最大の工業地帯はまだ落とされていない。兵器を作れる限り、戦争はできる。となれば、敵に最後
の大打撃を与え、有利な講和に持ち込むべきだ!」
辻が言ったのは前世日本が考えていた『一撃講和論』に似たものだ。
「ですが、国民の士気は低く、兵士の損耗も激しいです。正直、これ以上は今後の国の根底が揺るぎかねません」
「今がまさに根底を揺るがす事態だというのに、何を言っているのかね。それに、兵士はまた徴兵すればいいだろう?」
「ですが、新兵を送っても練度不足です」
「構わんさ、新兵でもできる、必死必中の攻撃方法がある」
『必至必中』
この時の諸侯はまだ、その真の意味を理解していなかった。
「リード殿。貴殿は弱腰の敗北主義者と皇帝陛下にお伝えしておこう」
辻はこの言葉を最後に、会議室を出て行った。
「奴は異世界から来た悪魔だ。国益なんてもたらさなかった!」
そう言って怒りのあまり、机を叩いた。
‐‐‐
戦争は終結の兆しを見せ、敵にはもう反撃するだけの能力はない。
私は一度本国に戻って、溜まりに溜まった書類を整理していた。
しばらくこの部屋に来ていなかったが、掃除が行き届いていて、非常に奇麗だった。
メイドの、確かゲルデ・クライシェと言ったかな。
よく掃除されている。
そんなことを思っていると、ドアを3回ノックされた。
「入っていいぞ」
私がそう言うと、失礼します、と言ってゲルデが入ってきた。
そしてゲルデは、部屋の掃除を始めた。
少し見ない間に彼女はかなり大人びた姿になっていた。
子供の成長速度は恐ろしいものだ。
「陛下、戦場で猛威を振るっている、銃とはそれほどまでに恐ろしいものなのですか?」
彼女は突然、質問してきた。
「ああ、敵の攻撃の届かないところから、一方的に攻撃できる優れものだ。これはそのうちの日一つなんだがね.... 」
そう言って私は胸から拳銃を取り出す。
そして弾を抜いて、彼女に見せた。
すると彼女は恍惚とした表情を浮かべながら銃を眺めていた。
「撃ってみたいか?」
私の問いに彼女はうんと頷いた。
そこで私は一枚の紙を書き、彼女に渡した。
それは射撃訓練の許可証。
普通なら、決められた人間にしか渡せないが、私は彼女の両親を奪ってしまった。
少しでもその罪滅ぼしができるなら、喜んでやろう。
「仕事は他の人に任せていいから、言ってきていいぞ」
そう言うと彼女は勢いよく飛び出した。
入れ替わるように、ハベルゼンが部屋に入ってきた。
「陛下、こちらをご覧ください」
そう言って渡されたのはヴァントリアス帝国に関する資料だった。
敵、最後の拠点と言えるカンイ工業地帯は鉄壁であり、すぐに陥落させることは不可能。
敵は制空権こそ持っていないものの、対空機銃が多数配置されており、航空支援は不可。
高高度からの戦略爆撃は可能だが、範囲が広く、風も強いため、効果は薄い。
敵は陸上戦力も集結させているため、正面からの突破には多数の犠牲が必要。
内容はこんな感じだった。
どうやら敵は最後の最後で抵抗してくるようだ。
続いて、資料の二枚目にはこんなことが書かれていた。
敵、新兵、子供を使った体当たり攻撃を実行。
味方の士気の低下が懸念される。
私はこの文字を見た瞬間血の気が引いた。
これを手引きしたのはおそらく辻だ。
歩兵に爆薬を背負わせ、戦車に向かい体当たり、航空機に爆弾を持たせた体当たりを敵は敢行。
これはそのまま、前世の日本軍だ。
フェアンベルゼン王国には死ぬ美学なんてものはない。
国民や兵士からしたら何を考えているかわからない、恐怖でしかないだろう。
特攻の長期化は何の利益も生まない。
この戦争はすぐに終結させるべきだ。
「陛下、例のあれを使用するのはどうですか?」
ハベルゼンはそう言った。
私はその返答をすぐには返せない。
例のあれ、とは『三位一体計画』の事だ。
単刀直入に言えば、我々は核爆弾を完成させた。
かなり前、エルベルトが対峙した最強の魔法使いノティアが放った魔法『究極の爆発』はまごうことなき核爆発だった。
そこで、私が核爆発の原理をイレーナに教え、それをもとに、スクロールを作ってもらった。
完成には10年の歳月を要したが、何とか完成にこぎつけた。
前世はプルトニウムやウランを用いて行ったが、この世界では魔法を用いて核爆発を起こす。
その威力は絶大で、一発で都市機能を停止させるほどだ。
しかし、前世亜米利加はあろうことか、その爆弾を一般市民に向けて投下した。
そのような事をこの世界でしてはならない。
何の罪もない一般人の大量虐殺などあってはならないのだ。
しかし、今回は市街地ではない。
通常の爆撃をいくらか行った後で、避難勧告を出し、投下すれば、被害は最小限に収まるだろう。
しかし、それでいいのか。
核を使ったら、もう戻れない、何かを失うことになる気がする。
しかし、これ以上国民に犠牲を強いるわけにもいかない。
「三位一体作戦を実行する」
‐‐‐
指令が下ってからすぐ、核爆弾は戦線へ送られた。
直径1.5メートル、長さ3メートルにもなる超巨大な爆弾だ。
中にはスクロールと魔力石が大量に詰まっている。
それと時を同じくして、通常の爆弾による、戦略爆撃も行われた。
3日間行われたのち、ついに避難勧告のビラが配られた。
連日、決まった時間、決まった場所に爆撃をしていたので、職員たちはその時間になると、避難するのが習慣になっていた。
ついに、核爆弾が投下された。
投下してから数分。
辺りは閃光に覆われた。
そして、キノコ雲が辺り一帯を包んだ。
被害は甚大。
この一発で工場は機能を停止した。
翌日も核爆弾を投下した。
2発投下したところで、敵は白旗をあげた。
この地帯を無条件で引き渡すようだ。
核爆弾。
果たして使うのが正義だったのか。
使わないのが正義なのか。
あれはパンドラの箱なのか。
答えは神のみぞ知る。
そろそろ物語も終わりを迎えそうになりました。
最後に質問返しをしたいと思います。(実はやってみたかった)
質問や指摘等ございましたらぜひお願いします。




