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『戦争の天才』は敵の首都を攻撃する!

 南方戦線を再構築後、我々は前進を続けていた。

 そしてついに、中央戦線は敵首都まで進軍した。

 我々はそこで一度立ち止まり、部隊を整え首都攻勢に向けて準備した。

 

 その間、航空部隊による、徹底的な後方の破壊も行った。

 工場、食糧庫、航空基地。

 制空権を執れていない敵はなすがままにやられていく。

 それと、彼らに遅れること数ヶ月、我々も初めて4発の重爆撃機の運用を開始した。

 

 一式重爆撃機『天威』爆弾搭載量は5000㎏に及び、航続距離は2800粁(キロメートル)にも及ぶ。

 現在は50機が実戦配備されている。

 そして戦車は3式軽戦車と3式中戦車と3式重戦車の3つを配備している。

 軽戦車の方は前世亜米利加のM3を参考に、中戦車の方はソ連T-34を参考に、重戦車はドイツのⅥ号戦車を参考にしている。

 どちらもかなり強力だ。


 ついに敵との最終決戦。

 この作戦名は『天号作戦』

 由来は天下分け目からきている。


 そしてたった今、部隊は前進を開始した。

 入ってすぐ、敵の第一防衛線に侵入した。

 電撃戦ではなくなった今、求められるのは圧倒的火力。

 まず手始めに前世カチューシャを模した機動墳進弾砲兵による面制圧を行う。

 墳進弾は轟音を鳴らしながら敵へと向かっていく。

 その音と煙はまるですべてを威圧するかのようだ。

 これは敵の損害のほかに、恐怖を与えて、敵の戦意を無くす意味もある。


 敵はすぐさま、戦車砲を用いて反撃したが、威力が足りず、我々の戦車の装甲は打ち抜けなかった。

 念のため私は重戦車を前に出して守りを固め、そのまま前進した。

 距離が近づくほど、双方の命中率は上がり、損害が目立つようになる。

 と言っても、敵は戦車の装甲を打ち抜けないので、こちらに被害はせいぜい流れ弾を食らった歩兵程度だ。

 そして気が付けば、敵は撤退。

 初戦は見事勝利に終わった。

 前を見ると、超高層ビルが目に入った。

 今からここで、決戦を行うのだ。

 

 部隊は前進し、ついに市街地へ突入した。

 多くの建物に対して人はおらず、不思議な感じだ。

 そこで我々は一つ驚いたことがある。

 敵は対魔法結界を展開していなかった。

 何かがある。

 私の直感がそう叫ぶ。


「重戦車を前に出し、守りを固めろ。それと全員に防塵面を装着させろ」


 私は無線で指示を飛ばす。

 全員が防塵面を装着したのをみて、魔法使い部隊は作戦を開始した。

 

『強風(ウィンドウ)』

『岩弾(ストーンバレット)』


 目に見えないほどの小さな砂粒が、強風(ウィンドウ)で辺り一帯に運ばれる。

 そうして発生するのは砂嵐。

 砂嵐は辺り一帯を包み込み、我々の部隊を飲み込んだ。

 今回の作戦は2つの部隊に分かれて行う。

 まずは私が今いる正面からの制圧部隊。

 正面から火力を叩きこむ本隊。


 そして、迂回路を使用して奇襲を行い、敵後方から叩く奇襲部隊。

 奇襲部隊は戦略歩兵、戦術歩兵からなり、上陸作戦時に猛威を振るった狩猟部隊も加えている。

 通常都市内部に迂回路は存在しない。

 しかし、近代化されたこの都市ならではの迂回路がある。

 それは『下水道』だ。

 敵もさすがにそこまでは警戒していない。

 下水道の出入口に兵を配置していないのは事前の航空偵察で確認済みだ。


 砂嵐が終わってからすぐ、本体は進軍を開始した。

 そしてすぐに敵との交戦に入る。

 

 しかし、ここで、予想外の事が起こる。

 敵は高速で細い光を発射し、なんと、重戦車の装甲を打ち抜いたのだ。

 正面から打ち抜かれた戦車は炎上した後爆発。

 砲塔は吹き飛んだ。

 

 あれは間違いなく光だった。

 砲弾のようなものではない。

 魔法か?

 しかし、戦車には対魔法結界が貼られている。

 魔法は効かないはず。

 いや、確かイレーナは対魔法結界が張られている中でも魔法を使っていた。

 つまりあれは万能ではない。

 以前、どうしてそのようなことができるのかと聞いたら、「圧倒的な魔力の密度であれば無効化できる」と言っていた。

 要は圧倒的な魔力量を誇るものが大量の魔力を消費して魔法を発動させるらしい。

 そんなことができるのは世界でも数人。

 まさかたまたま、その数人に出会ったというのか?


 こうしてる間にもまた一両の重戦車が爆発した。

 時間が無い。


「部隊を散開させろ!軽戦車は敵側面に回り込め、中戦車は回避行動をとりつつ、敵に砲撃!重戦車は後退しろ!」

 

 私はそう指示を出した。

 市街地戦は戦車が思うように活躍しない。

 歩兵が重要だ。

 

 少しして、敵陣地への攻撃が成功した。

 軽戦車と中戦車の巧みな連携により、先ほどの敵は全滅した。


 恐らく、この都市に対魔法結界を張らなかったのはこのためなのだろう。

 対戦車魔法。

 厄介この上ない。




‐‐‐




 奇襲部隊は下水道を進み、最初の目標である、敵司令部の手前まで来ていた。

 司令部はビルの中にある。

 ビル付近には規模の小さい対魔法結界が貼られており、魔法は使えない。

 そこで部隊は剣で上まで登れるよう穴を開けた。

 そして、ビルの根元に持参した爆薬を一点に配置し、爆発させた。

 ビルは根元の一角を失ったことでバランスを崩し、崩壊した。


 部隊はすぐに地下道に戻って、次は弾薬庫を目指した。

 

 弾薬庫はすぐ近くにあるものの守りが固く、兵も多い。

 しかし、先ほどの爆発で、兵のいくらかは様子を見に離れている。

 まさに好機である。

 部隊はその隙に地面まで上がり、奇襲を開始する。

 先陣を切るのはエメ・レーラーとクルセス・マイヤー。

 どちらも大陸同盟きっての戦闘能力を誇り、銃弾程度なら躱せてしまう。


 エメとクルセスは華麗に銃弾を躱すと、中に侵入。

 敵と交戦した。

 敵は銃での適正距離を失い、銃剣での戦闘になったが、近接戦で2人に傷をつけられたものは一人もいなかった。

 すると、敵は何と、ついに機関銃と野戦砲まで持ち出してきた。


 けたたましい轟音とともに放たれた榴弾はエメを捕らえた。

 しかし、榴弾は爆発することなく真っ二つに斬られ、地面に落ちた。


「こういう弾は信管を外して斬れば爆発しないんでしょ?」


 エメはそう言って敵を野戦砲ごと真っ二つにした。


 クルセスは機関銃を向けられたが、意に介さず、突っ込んだ。

 

「化け物共が!」

 

 敵はそう言って機関銃を乱射するが、クルセスに傷をつけることはできない。


「体に魔力を込めれば、銃弾はききません」


 そう言ってクルセスは敵を倒した。

 

 それから部隊は弾薬庫を襲撃し、爆破した。

 これで、敵の継戦能力は無くなった。


 これより部隊は引き返し、本体との挟み撃ちを行う。




‐‐‐




 つい先ほど、奇襲部隊から作戦成功の報が届いた。

 敵司令部が瓦解した事で、敵は指揮を失い、連携した攻撃ができなくなった。

 こちらも、明確な戦線がなくなり、乱戦に突入。

 広大なこの都市での乱戦は同士討ちが起こる可能性が高いので気をつけなければならない。

 前世アメリカが行ったキスカ島撤退作戦での同士討ちのような真似だけは避けなくてはならない。


 それから少しして、奇襲部隊が前線に到着。

 部隊は3つに分かれ、支援を開始した。

 やはり市街地戦は戦車よりも歩兵が有利で、戦術歩兵、戦略歩兵が交戦を開始した瞬間、各方面の戦況が一気に好転した。

 敵の指揮系統が崩壊したこともあって、敵は見る見るうちに敗走。

 気が付けば各地で白旗が上がった。

 そんな中、ある一か所だけは頑強に抵抗していた。

 敵兵力は2万人。

 どうやら、現場指揮官が有能らしく、統制のとれた射撃、防御を行い突破できないそうだ。


「なら、私がいくわ!」


 エメはそう言って現場に向かった。

 私も後をついていく。


 それからエメは敵に攻撃されないぎりぎりのところに立つと、エメは目をつぶり、なにやら魔法を使おうとした。

 魔法の使えない私でも、エメの手に魔力が集まっているのが分かる。

 5分程度そうした後、ついに魔法を放った。


「私の思い通りの世界(ワールドイズマイン)」


 それはエルベルトやイレーナが使った最強の魔法。

 ありとあらゆるものを自分の思い通りにする魔法だ。


 敵の辺り一帯の建物は消え、武器も消え、地面のアスファルトすらなくなっていた。

 敵は茫然としていた。


「君たちの戦力は無くなった。おとなしく投降するのであれば、人道的な扱いを約束する」


 私はすかさず、投降を促す。

 しかし敵からの返答はない。

 敵は茫然としていた。


 少しして、敵からの返答が来た。


「我々は投降する」


 こうして敵は投降し、この都市における防衛戦力は無くなった。

 各地に少しはいるだろうが、各個撃破すれば問題ないだろう。


 こうして『天号作戦』は成功した。

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