『戦争の天才』は危機に陥る!
ヴァントリアス帝国では、会議が行われていた。
「やはり敵は一瞬で転移できるスクロールを開発していたようです」
「やはりな。当たったな、私の予想は」
そう言って辻は不気味な笑みを浮かべる。
「それと、南方戦線はどうだ?」
「現在、快勝を重ねており、転移スクロール奪取は目前かと」
「流石あの男と言う他ないな」
「彼なら、敵本土進攻も華麗にこなしてくれるでしょうね」
「ああ、なんて言ったって、広い大地を駆け回るのは彼の得意分野だからな」
‐‐‐
私の名前は石原孝雄。
南方戦線は崩壊しかかっている。
かろうじての防衛線もいつまでもつかわからない。
そこで、中央戦線の部隊の半数を南方への攻勢部隊とし、再編した。
目標は敵部隊の後方急襲。
『後手からの一撃』を狙う。
しかし、中央は山がちな地形であり、どうしても到着は遅れるだろう。
現在、私は攻勢部隊を率いて南方戦線へ向かっている。
「陛下!大変です!」
兵士が走ってこちらに近づいてくる。
「南方戦線が崩壊しました!」
その一言は私の心を容赦なく打ち砕いた。
「では、兵士の撤退を急がせろ。武器や兵器は捨てて構わん。転移スクロールまで全力で撤退しろと伝えてくれ」
「それが、敵は空挺降下によって転移スクロールを占領、したとの事です」
私は目の前が真っ暗になった。
「前線が崩壊した今、敵主力部隊は間もなく、転移スクロールに到着すると思われます」
「では、本土防衛部隊に伝えてくれ『これより決号作戦を実行する』と」
「かしこまりました」
まずいことになった。
南方戦線は崩壊、転移スクロールは奪われ、すぐに反撃はできない。
南方の転移スクロールの転移先はクライスト皇国。
こうなっては、本土防衛、ひいてはあいつに託すほかない。
‐‐‐
俺の名前はリノ・バステル。
つい先ほど、南方戦線が崩壊した報を受け取った。
転移スクロールも奪われ、すでに敵精鋭部隊は転移し、我が国の転移スクロール周辺を確保。
石原孝雄陛下からは『決号作戦』の指令が下った。
決号作戦の決は決戦、つまり本土決戦を意味する。
これに負けたら、この戦争は負ける。
なんとしても勝たねばなるまい。
正直、俺は戦争に詳しいわけではない。
石原孝雄陛下ほどの知略があるわけでも、高野長官ほどの先見の明があるわけでもない。
私は政治家であり、軍人ではない。
そうして、石原孝雄陛下は私を本土防衛の最高責任者にしたのか、わからないところもある。
しかし、戦争と政治は表裏一体。
血の流れる政治が戦争で、血の流れない戦争が政治とするなら、私は政治で、この戦争に勝とうと思う。
すでに、敵が本土に転移した事はラジオや新聞を通じて、国民が広く知ることとなった。
私は意図的にこの事実を拡散した。
そして、国民に総力戦の体勢を要求した。
工場勤務を募集し、志願兵を募集する。
国民と戦争を身近なものにして、兵士以外も積極的に参加させる。
そうしなければ勝てないだろう。
今回の決号作戦だが、まずは、部隊を整えて、防御陣地を構築する。
敵の兵力は10万を超えるという。
対するこっちは陸上戦力で2万しかいない。
攻撃するにはリスクが高すぎる。
航空攻撃によって敵戦力を減らして、更に2陣3陣の防御陣地を構築。
段階的に敵戦力を減らしていく方がいいだろう。
それから3日後、ついに敵主力が本土に転移したとの情報が入った。
敵は現在、部隊を編成しなおしているそうだ。
それと、敵精鋭部隊によって、飛行場を奪取された。
完全に予想外だった。
どうやら、敵先遣部隊が転移してすぐ、飛行場に向かっていたらしい。
しかし、敵は航空部隊の多くを損失したと聞く。
そこまでの脅威ではないだろう。
「閣下、敵指揮官が分かりました」
部下が俺に報告した。
「エルヴィン・ロンメルだそうです」
「聞いたことがない名だな。若い指揮官か?」
「わかりません、ですが、奴は南方戦線を突破したのです。気を付けた方がいいかと」
「そうだな。この戦争の勝ち負けは、この決号作戦にかかっている。絶対に負けられない」
エルヴィン・ロンメル。
どんな奴かは知らないがかかってこい。
俺が返り討ちにしてやる。




