『戦争の天才』は『狙撃の天才』と対峙する!
突破口を開いてから1か月が経過した。
部隊は快進撃を続け、ついに敵首都目前まで駒を進めた。
包囲殲滅を狙うため、主力部隊は3つに分かれている。
戦線は拡大し、中央戦線、北方戦線、南方戦線に分かれながらの進撃となった。
それに伴って、転移スクロールも各戦線に1つずつ、計3個設置した。
敵首都に近づくにつれ、敵は抵抗を激しくし、進撃速度は落ち始めている。
そんな中、私が担当している北方戦線のうちのある一つの区画で問題が発生した。
その区画は年中雪が降る特異な場所なのだが、現在敵の部隊によって足止めを食らっているのだ。
歩兵をいくら出しても帰り撃ちにあい、戦車も破壊されてしまう。
どうやら優秀な狙撃手がいるようだ。
しかし、何人いて、部隊がどれくらいの規模なのかはつかめていない。
雪で姿が見えない事から、私たちの間では『白い死神』と呼ばれている。
そこで、白羽の矢が立ったのがエメだ。
エメの強い希望もあって、戦線に投入することにした。
「エメ、もしかしたら敵の狙撃手の名前は..... 」
‐‐‐
私の名前はエメ・レーラー。
今、戦場に立っている。
火薬のにおいが辺りを包んでいる。
空は曇っていて、雪が降っている。
視界はいいとは言えない。
前進してすぐ、近くの兵士が撃たれた。
私はすぐに剣を抜く。
私が敵を探している間も、みんなが次々にやられていく。
「敵は狙撃兵だ、スコープの光の反射、マズルフラッシュをよく見るんだ!」
石原は私にそう言った。
私は目を凝らし、全神経を集中させる。
それでも、何も見えない。
こうなったら、『一か八か』よ!
「ねえ、私と決闘しましょ!」
私はそう言って誰よりも前に出た。
すると、敵は私に向かって狙撃してきた。
弾丸は正確に頭を狙ってきた。
私はそれを剣で弾いた。
「これで、大体の位置は分かったわ」
弾の飛んできた方向から、大体の方角は分かったわ。
私は全力でその方角へ走る。
敵との距離が詰まるにつれて、精度が増してゆく。
最初は頭を狙っていたのが、正確に眼球を狙うようになっている。
目には魔力をこめられない。
恐らく、それを知っての事。
瀬戸際で弾丸を弾いていると、ついに敵の姿を捕らえることができた。
狙撃手は、全身を白い格好で覆い、銃口には特殊な何かを装着している。
おそらく、マズルフラッシュを無くす装置なんでしょう。
「私は、エメ。あなたは?」
「僕はヘイヘ。シモ・ヘイヘだ」
石原から聞いた名前と同じだわ。
「貴方、転生者でしょ?」
「おや、僕を知っているんですか。君も転生者ですか?」
「いや、転生者の仲間からあなたの事を聞いただけよ」
私はそう言って彼との距離をゼロに詰める。
けど、彼も一瞬で、マシンガンを抜き、発砲する。
このマシンガンは厄介。
魔力で体を強化していても当たり続ければその強化が続かなくなって、そのうち撃たれてしまう。
私は、距離をとって、とっておきを放つ。
「姿なき刃」
見えない斬撃であれば、躱せないはず!
けど、シモ・ヘイヘはそれをぎりぎりで交わした。
頬から出血しているものの、かすり傷。
そして、流れるように反撃される。
シモ・ヘイヘは私の左肩めがけて、銃を撃った。
剣は振り終わりなので、剣では弾けない。
受け止めるしかない。
私は全力で魔力を込める。
しかし、その弾丸は私の肩を貫通した。
これで左腕は死んだ。
「どうして躱せたの?」
さっきの攻撃がかわされた理由が分からない。
「雪が不自然に切れていた」
そういう事ね。
姿が見えなくても実態はあるものね。
振っている雪が不自然になるのはその通り。
「じゃあ、どうして、銃で肩を貫通できたの?」
「スキル『最重の一撃』だよ。剣の威力をあげるスキルだけど銃に使うとこうなるんだ」
迂闊には近づけないわね。
でも、左肩をやられた今長期戦は不利。
こうなったら、やるしかないわね。
エルベルトに見せたら、怒られるでしょうね。
私は剣を地面に置く。
そして、腕で目を覆いながらただ真っすぐ全力で走った。
シモ・ヘイヘはマシンガンを撃つ。
私はその弾を一心に受ける。
『最重の一撃』は一回しか打てないスキル。
今は使えないはず。
ぎりぎりまで近づいたとき、すでに何発かは体を貫通していた。
そして、大降りに拳を構える。
どうやら彼の銃は弾切れのようね。
それを狙っていたのよ。
しかし、彼は銃床を私の左肩に叩きつける。
左肩、に鈍い痛みが走る。
けど、これで怯むほど、弱くはないわ。
私はそのまま、彼の左頬にむけて、全力の右こぶしをお見舞いした。
彼はそのまま、吹き飛び、地面に倒れた。
近づくと、血を流し、顔面がひしゃげて倒れていたが、死んではいないようだった。
私は彼を担いで、石原の元に戻った。
‐‐‐
エメが戻ってきた。
体にはいくつもの穴が開いている。
「大丈夫か!?」
「ええ、それと、この人はやっぱり石原の言ったとおり.... 」
「話は後だ!早く!医療班!」
エメはひょうひょうとしているが、間違いなく重症だ。
私はすぐに医療班にエメを託した。
敵の狙撃兵を倒してから分かったことだが、ここを防衛していた部隊はおらず、ただ一人でこの戦線を形成していたようだ。
まさかの事実に、全員開いた口がふさがらなかった。
それと、やはり、狙撃兵は『シモ・ヘイヘ』だった。
なにはともあれこれで、一件落着。
そう思った時、一人の兵士が走ってきた。
「陛下!大変です!南方戦線で敵に反転攻勢を仕掛けられました。連合軍は不意打ちに対処できず撤退。現在戦線は大きく後退しています!」
なんだと!
まずいことになった。
もし、そのまま食い止められずに転移スクロールまで後退してしまえば、最悪、本土に進行されかねない。
「死守命令をだせ!なんとしても転移スクロールを守り抜け!」
最悪、転移スクロールは破壊するしかない。
しかし、そうすれば南方戦線の補給がなくなる。
それは避けたい。
なんとしても、敵の攻勢は絶対に阻止しなければならない!




