『戦争の天才』は攻撃を再開する!
敵本土に橋頭保を気づいてから半年が経過した。
我々はその間、3か所に転移スクロールを設置し、防御を固めた。
今までは数ヶ月で戦争が終わっていた。
しかし、今回は半年たっても終わる気配がない。
両軍、疲れが目立ち始めている。
総力戦の底知れぬ恐ろしさを誰もが感じ始めていた。
しかし、いつまでも防御を固めているわけにもいかない。
そろそろ攻勢に出なくては。
すでに準備は済んでいる。
兵の配置も完了した。
野砲3078門
戦車2011両
航空機2643機
兵員230万名
からなる戦線突破用の部隊。
目標は敵防衛線の打破。
「作戦を開始せよ!」
私は司令部全体にそう命令する。
今回、明確な作戦開始時刻は決まってない。
この時間からこの時間までに開始するという事しか決まっていない。
敵に作戦開始時刻を知られないようにするためだ。
私の合図と同時、大量の航空機が離陸した。
これを見越し、私はあらかじめ、精鋭部隊『狩猟部隊』それと『落下傘部隊』に作戦を実行してもらっていた。
それは敵電探施設の破壊だ。
作戦は被害をだしながらも成功し、前線の電探はほぼすべて無効化された。
さて、今回航空部隊の攻撃回数は2回。
一つ目は前線にいる戦車、そして重砲部隊、航空基地への攻撃。
二つ目は後方指揮所、敵兵站への攻撃だ。
まず、航空機によって前線の戦力を減らす。
次に戦車、機械化歩兵によって電撃的に攻める。
それと同時に、敵後方の指揮所、敵兵站にも攻撃を加える。
そして、陸軍空挺部隊によって指揮所も抑える。
これによって、敵はどうしていいかもわからず降伏する。
というわけだ。
これは、前世の『電撃戦』と『エアランド・バトル』を混ぜたような戦闘教義だ。
電撃戦よりも一歩踏み込んで敵奥地まで同時に攻撃する。
なずけるならば『深部突破戦』だな。
それから数時間にわたって航空機による攻撃が行われた。
敵も航空機を出してきた。
かなりの数で、ざっと1000機を超えた。
しかし、練度が低いのと、敵は電探が使えない事も相まって何とか勝利することができた。
正直辛勝である。
こちらも600機を超える損害を出した。
しかし、これでここら一体の制空権は確保した。
すでに陸軍部隊は進撃を開始。
わたしも指揮車に乗り込む。
少しして敵と接敵した。
接敵して気づいたが、敵は思ったよりも混乱していた。
敵にとっては初めての近代戦。
航空機は見たことが無い者も多いだろう。
こちらに比べ、経験が無いからだろう。
これは勝機。
「戦車部隊、敵の重砲と戦車を優先的に破壊せよ」
私は戦車部隊にそう指示出す。
その指示どうり、戦車部隊は次々に重砲と戦車を破壊していく。
敵の歩兵は必至で小銃や機関銃を撃つが、その一切が戦車には効かない。
この世界では対戦車武器の発達が著しく遅れている。
戦車ができてから今に至るまでがあまりに短く、経験が浅すぎるからだ。
それに重砲を使えば撃破できるので、そこまで必要ないという風潮もある。
しかし、実際はどうだろうか。
重砲は動かないためいい的である。
こうなれば、敵は十分な対戦車能力を持っているとは言えない。
戦略歩兵に対処させるという手もあるが、所詮は多勢に無勢。
1000を超える戦車を前に戦線を覆す力はない。
尤もエルベルト級がいるのなら話は別だが。
「航空機は第二目標の攻撃に移ってくれ」
私は無線でそう指示を出す。
その間も、戦車部隊による攻撃は続く。
次の瞬間、隣の戦車が爆発した。
いきなりだった。
砲弾が当たったようにも見えない。
続いて近くの戦車も爆発した。
「何事だ!」
原因不明の戦車撃破に周囲は焦り始める。
「狙撃よ!石原!」
そう言ったのはエメだ。
「狙撃手が戦車の砲身に撃っているのよ」
馬鹿な。
ここから1000米は離れているんだぞ。
普通砲身に撃っても戦車は破壊されない。
唯一、砲弾が装填された時に当てられれば破壊はできる。
まさか、それができる狙撃手がいるというのか。
「私があいつを倒してくるわ!」
エメはそう言った。
「この砲弾と銃弾の雨をかいくぐっていけるのか?」
「ええ、問題ないわ。全身に魔力を込めれば傷はつかないわ。行って戻ってくる程度なら魔力も持つはずよ」
この10年エメは驚くほど強くなった。
10年前のエルベルトに引けを取らないほどに。
「わかった。任せよう」
そう言うと、エメは一瞬にして消えた。
とんでもない踏み込みだ。
その間も、戦車は撃破され続けている。
気づけば20両を超えたのではないだろうか。
少しして、エメが帰ってきた。
「ごめんなさい、逃がしたわ.... 」
そう言うエメは血まみれだ。
「大丈夫か!すぐに治療班を呼ぶからな!」
見れば、銃弾のいくらかは体に命中している。
「あいつ、強いわ。近づいたのを一瞬で察知して狙撃してきたもの。しかも剣の間合いに入れないためにマシンガンも使ってきたわ。びっくりするくらい精度が高くて、こんなになったわ」
そう言ってエメは傷を見せてきた。
「でも、軽くだけど肩を斬ったから、しばらくは戦えないと思うわ。あとちょっとだったのに、応援が来たせいでとどめをさせなかったわ。ごめんなさい」
「いや、無力化できれば十分だ。ありがとう」
敵の狙撃兵が消えたと同時、戦車の被害はピタッとやんだ。
そして、どんどん、優勢になっていき、気づけば一方的になっていた。
敵重砲も戦車もほとんど撃破したのだろう。
そしてついに、敵は白旗を掲げた。
そう、我々の航空部隊と空挺部隊によって、敵は指揮系統が無茶苦茶だ。
軍隊は完全な縦社会。
上の指示がなくなれば、撤退もできない。
敵は降伏した。
こうして、突破口は開かれた。




