『戦争の天才』は本土上陸作戦を実行する!
ヴァントリアス帝国では閣僚、軍首脳、皇帝が参加する最高位会議『最高統帥会議』が行われていた。
「ワハ島が攻略されるとはどういうことだ!」
怒号をあげるのは辻である。
それに真っ先に返答したのは海軍元帥のモンロー。
「正直に申し上げますと、今回どのように攻略されたのかが分からないのです。通信では、空から敵が空挺降下したところまでは報があったのですが、それ以降は不可解な報告でして.... 」
「どういう事だ」
「敵落下傘部隊によって対魔法陣が破壊されたのち、航空攻撃が行われ、その際に同時に上陸部隊がワハ島に上陸していたという報告なのです」
「なにがおかしいんだ」
「上陸用舟艇が一隻も見当たらないのです」
当然、これはヴァントリアス帝国側の勘違いである。
実際は航空攻撃が終わった後、転移スクロールによって転移されたものである。
「つまり何か?敵は船も何も使わず上陸したのか?」
「ええ、そう言うことになります.... 」
「そんな馬鹿な話があるか!奴らは神じゃない!奇跡なんてものは起こせないはずだ!」
辻は焦っていた。
辻はワハ島を拠点にフェアンベルゼン王国と戦う気だった。
奴らが攻撃を仕掛けてきたら完全要塞化されたワハ島で返り討ちにし、戦力を減らしたところで攻勢に出るつもりだった。
しかし、そう上手くはいかなかった。
青龍洋艦隊はほぼすべてが敵に接収、または撃沈され、陸上部隊も捕縛された。
攻勢のための牙を見事に奪われたのだ。
こうなってしまっては、もうこの先に行われるのは一つしかない。
本土決戦だ。
こうして会議の内容は本土決戦へと移っていく。
‐‐‐
私の名前は石原孝雄。
ワハ島攻略から6か月が経過した。
その間、潜水艦による船団攻撃が双方で行われたものの大規模な海戦は起きなかった。
そして今、大きな作戦が動きだした。
そう、敵本土上陸作戦だ。
兵力は
空母 22隻
重巡 7隻
軽巡 28隻
駆逐 90隻
そう、ほとんど大陸同盟の全海軍戦力だ。
しかし、敵はワハ島を失った今、本土へ艦隊を送り込むことはないだろう。
それに、敵は青龍洋艦隊の大部分を失っている。
この間に攻勢はしてこないだろう。
そして、上陸作戦陸上部隊の指揮官として、私が出向くことになった。
全体の指揮はリノ・バステルに任せてある。
敵本土に接近してすぐ、艦隊の電探が敵航空機を一機捕らえる。
恐らくは偵察機だろう。
高野はすぐに迎撃機を発艦させる。
そして15分後、敵の偵察機が姿を現した。
かなりの高高度にいるらしく、迎撃機はまだその高度に達していない。
「迎撃機を引かせろ、総員対空戦闘準備」
そして、聯合艦隊は対空戦闘を開始した。
敵は一機に対してこちらは大艦隊。
結果は明白だ。
すぐに偵察機は落とされた。
偵察機は高高度だからと奢って近づきすぎた。
練度不足が伺える。
さて、それからさらに本土に近づいたとき、偵察機から報告が上がった。
「敵ヲ発見セリ。戦艦十隻ヲ確認。大艦隊ナリ」
辺りは一斉に緊張感に包まれる。
高野は兵士に状況を聞く。
「敵の方角は分かるか」
「北北東に5000海里です」
高野はそれを聞いて、決断を下す。
「聯合艦隊はこれより艦隊決戦を行う。航空機は全機発艦!全艦戦闘態勢」
艦隊決戦。
これが意味するのは、どちらかが、壊滅するまで終わらないということだ。
それからすぐ、続々と艦戦や艦爆、艦攻が発艦し始めた。
1000機を超える数はまさに圧巻だ。
「聯合艦隊はアウトレンジ攻撃を旨とする。敵と一定の距離を保ち、接近を許すな」
敵は戦艦を主軸とする艦隊。
よって航空機によるアウトレンジ戦法を活用すれば完勝できるというのか高野の考えなのだろう。
「間もなく、第一波攻撃隊が接敵します」
第一波攻撃隊隊長にはあの男を採用している。
ハンス・ウルリッヒ・ルーデルだ。
彼なら戦果を出してくれるだろう。
そしてすぐ、報告が上がった。
「報告!敵戦艦1隻撃沈!ルーデル機からの報告です」
まさか、初手で戦艦撃沈の報を聞くと思わなかった。
すると突然、隣の空母が一隻爆発した。
「何事だ!」
「敵の砲弾です!恐らく戦艦砲が命中したのかと」
「馬鹿な!5000海里離れているんだぞ!」
その通りだ。
この距離で戦艦砲が当たるわけがない。
異世界では方が当たりやすくなる、なんて話も聞いたことがない。
そんな時、一つの仮説が頭をよぎった。
「なぁ高野。もしかして敵の弾には追尾機能が備わっているんじゃないのか?ゴーレムの物体認識能力を参考にすれば不可能ではない気がするんだ」
それを聞いた高野は黙った。
「報告!駆逐一隻、軽巡一隻が沈没!何れも砲弾の直撃です」
「どうやら、何かしらの技術で砲弾が命中しやすくなっているのは確定のようだ。攻撃隊に告ぐ、戦艦を優先的に狙え、先ずは戦艦の無力化が最優先事項だ」
聯合艦隊の弱点。
それは砲撃戦の能力が低いことだ。
前世、大艦巨砲主義は航空主兵論に打ち勝てなかった。
だが、異世界は違った。
大艦巨砲主義は航空主兵論と肩を並べている。
辻はもしかしたらこれを予測していたのかもしれない。
全くもって油断ならない奴だ。
こうして、双方がじわじわと消耗していく。
すでに双方かなりの被害を出している。
敵は航空機をほとんど出していない。
というか空母をほとんど持っていないのだ。
そのため、こちらの攻撃は通る。
双方が防御を捨てた殴り合い。
消耗戦。
先に音を上げたのは敵だった。
気づけば艦隊の半数を失っていた。
当然だ。
元の数が少なかったのだ。
勝負は決まった。
敵は旋回し、撤退を選択する。
「追え、一隻も逃がすな。すべて沈めろ」
敵は背を向けて逃げている。
それに対する高野の指示はこれだった。
「これから俺らは本土に上陸する。その際残存艦隊と本土とで挟み撃ちされたらひとたまりもない。今のうちに潰すんだ」
本土攻撃に集中するために敵艦隊は再起不能にする。
高野の判断は合理的だった。
航空隊は逃げる艦隊を追いながら攻撃を続行する。
時間が経てばたつほど敵の反撃は弱々しくなっていく。
そしてついに敵の戦艦は全滅。
残すは駆逐が3隻と軽巡が1隻になった。
こうなれば、もう反撃能力は皆無だ。
「人命救助のための駆逐を5隻、敵の方へまわせ。主力部隊はこれより敵本土に攻撃を開始する」
こうして、艦隊決戦は幕を閉じた。
しかし、これからが、この戦争を地獄たらしめるのだった




