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『戦争の天才』は大陸会議に出席する!

 辻との会談を行ってから1か月が経過した。

 あれから直ぐ、私は各国に1か月後に大陸会議を行う旨の電報を送った。

 

 そして今、大陸会議が行われようとしている。

 

 フェアンベルゼン王国からは私と高野。

 ヴィクトワール王国からは新しく国王になったヴァレリアン・ヴェルデ国王と以前私に民の安寧を願い、命を差し出した名将、陸軍大将ルヴォア・エリック。

 クライスト皇国からは国王エルベルト・クラッソと総理リノ・バステル。

 ジェストカン神聖国からは国王デクスター・デインとイレーナ・レイケルだ。


 たった今、全員が席に着いた。

 私は早速今回の議題を挙げる。


「日に日にヴァントリアス帝国との仲は悪くなり、大陸同盟との戦争が現実味を帯びてきた。そこで今回は対ヴァントリアス帝国の大まかな作戦を決めておきたい」


 私が話し終わってすぐ、高野が挙手をする。


「ヴァントリアス帝国との戦争しても、俺らは勝てない」


 彼の言葉に会場の空気が重くなる。


「あの国とは6000(キロメートル)も離れている。その中間地点にある島は1つで、しかもヴァントリアス帝国はその島を要塞化している。その島の攻略は一筋縄ではいかないし、本土まで補給線を伸ばすのは不可能。陸軍が行動できないようでは戦争に勝ち目はない」


 高野の発言はもっともだった。

 6000(キロメートル)離れていては補給はできない。

 しかも中継地点の島はヴァントリアス帝国領で、しかも要塞化されている。

 普通に考えればそこまで補給は届かない。


「ではもし、その補給が何とかなるとしたら?」


「どういうことだ?」


「私がこの世界に転生してすぐ、魔法研究所に一つ指示を出したんだ。それは、『転移スクロールの開発』そして、イレーナ長官の協力もあって、1年ほど前、ついに完成した。すでに実用化前の試験は終わっており、いつでも使用可能だ」


 転移のスクロール。

 それは戦争の基礎を根底から変える前代未聞の発明だ。

 従来の戦争では補給路が伸びれば伸びるほど、進軍は不利になっていく。

 しかし、転移スクロールを使えば、迅速に物資の輸送が可能だ。

 それに、迅速に兵も送れる。


 そして何より、単騎で敵の陣地内に忍び込み、スクロールを起動させればそこに大量の兵を送り込むことができる。

 守りの内側にいきなり兵を送り込めば一瞬で敵を打ち破ることができる。


「ここからは私の考えた作戦だが、まず大陸同盟各国の軍は国家の隔てを撤回し連合軍として再編する。

 陸も海もだ。

 そして、まず、海軍は高野指揮のもと、中間地点に位置する島『ワハ島』を攻略、そこに転移スクロールを設置し、攻撃拠点とする。

 次に、敵国沿岸部に砲撃を仕掛け、占領する。

 再度、転移スクロールを設置後、電撃戦を仕掛け首都を占領。

 首都さえ占領すれば我々の勝利だ」


 私がそう言い終わると、今度はリノ・バステルが手を挙げる。


「石原殿、ワハ島は既に要塞化されています。敵主力艦が常駐していてそう簡単に攻略できるとは思いません。たとえ海戦で勝っても、要塞から砲撃されれは上陸部隊も、我々の主力艦もやられてしまいます」


「空だ。空から戦略歩兵を空挺降下させる」


「飛行機が近づけば気づかれるのでは?」


「特殊改造した超高高度輸送機を使う。それと落下傘なしでの空挺降下を行う。敵の要塞とて、常に対魔法結界を展開しているわけではない。空挺降下してすぐ、神級魔法を叩きこめば、要塞はかなりの被害をおうことになるだろう」


 私の説明にリノ・バステルは納得したようだった。

 しかし再度、今度はまた高野が手を挙げる。


「この作戦、敵の反撃を考えていないようだな。最初に仕掛けるのが俺らという大前提がある。つまり、こちら側から仕掛けろと?戦争は極力回避するという考えに反している」


「はっきり言おう。ヴァントリアス帝国は、辻は、我が大陸同盟に戦争を仕掛ける気だ。こうなれば我々から仕掛けた方が勝率は格段に上がる」


「それでは前世と一緒ではないか!」


 高野は席を立ち、怒号をあげる。

 

「これでは我々は前世の日本と同じだ!前世はどうなった?日本は多くの民が死に、そして負けた!まさしく我々は今、その日本と同じなのではないか?」


「だったらどうしろって言うんだ!」


 私も、席を立ち、高野に言う。


「私はこの10年戦争をしないよう幾度も交渉した!だが、奴らは交渉する気なんてさらさらなかった!交渉するたび、奴らの条件は厳しくなった。最初は我慢し飲み込んでいたが、このままでは奴らの言いなりのまま、市民たちが苦しむだけだ!奴らに交渉の意志がないのにこちらが譲歩したって意味がない!挙句、奴らは戦争する気だ!このままいけばいいように利用された挙句、滅ぼされる!だったら、少しでも勝率を挙げるためにもこっちから先に仕掛けるべきなんだ!」


 私と高野は少し冷静になり、席に座った。

 そこにエルベルトが手を挙げる。


「では、最後にもう一度条件を送る、もしくは相手がこの条件を提示してきたら戦争をするというラインを決めるのはどうだ?」


「わかった。私は同意する」


 高野はそう言った。 

 他の者も首を縦に振った。


「ではこちらから送る条件を決めよう。

・禁輸の緩和

・国交の正常化

・互いの勢力圏拡大のための第三国への侵略戦争の禁止

・不可侵条約の締結

これでどうだ?」


 高野の出した条件はこれだった。


「異論はない」


「もしヴァントリアス帝国が

・大陸同盟の解消

・大陸同盟に対しての最恵国待遇を強要

・大陸同盟に不利な軍縮

 これを求めてきた場合には先制攻撃を許可するというのでどうだ?」


「異論はない」


 他の者も首を縦に振る。

 どうやら決まったようだ。


「では、今出たこちらが送る条件をヴァントリアス帝国に送ろう。結果次第でまた大陸会議を開催することになるかもしれない」


 こうして大陸会議は終了した。

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