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『戦争の天才』は『作戦の神様』と会談する!

「時に先生。現在、フェアンベルゼン王国とヴァントリアス帝国の仲は消して良いとは言えません」


 辻は茶をすする。


「そうだな。ヴァントリアス帝国は禁輸を課し、国交は断絶寸前だ」


「ええ、ですので、そろそろ貴国と戦争しようと思いまして」


 私は耳を疑った。

 あまりにもあっさりと辻は言ったのだ。

 

「どういう事だ?なぜ戦争をしなければならない?」


 私がそう言うと、辻は不思議そうな顔をした。


「聡明な先生の事ですから、すでに分かっていると思っていましたが.... ヴァントリアス帝国としては大陸同盟は我が国の存在をも脅かす危険な存在ですので、排除しておこうと思いまして。それは貴国とて同じ事でしょう?」


 愛いての国が邪魔だから戦争を仕掛ける。

 そんなのは中世の理屈だ。

 近代ではそんな理屈は通らない。

 通ってはいけない。


「確かに辻の言ってることはその通りだが、戦争をすれば多くの死者が出るそ。近代兵器で武装した戦争など、地獄そのものだ」


「ええ、それが何か問題でも?国家を維持する上で必要な犠牲でしょう?それとも、先生はまさか、死者が出るからなんて理由で戦争をしないおつもりですか?」


 この瞬間、私は心底、辻という男を軽蔑した。

 前世から思っていたが、奴には倫理も道徳もない。

 目的の為なら人の死もなんとも思わない。


「当たり前だ」


 私は奴の目を強く見て言った。


「先生も、ずいぶんぬるくなりましたね。満州事変の時はあれほどやる気に満ちていたのに」


「満州事変は私の人生で一番の失敗だ」


「御冗談を、あれは大成功でしょう?その後の奴らが無能だっただけで、先生の作戦はこれ以上ないくらいの成功でした。私にとってのあこがれですよ」


 私はふと、気になることがあった。

 ヴァントリアス帝国と、フェアンベルゼン王国の仲が悪いのは事実だが、どうして仲が悪くなったのかは謎だ。

 別に資本主義と社会主義のように思想が真反対なわけではない。

 大陸同盟としても、別に禁輸を課したり、敵対されるような問題を起こしたりもしてない。

 つまり、我々は敵対されるような行動はしていない。

 確かに国力が伸びたのはそうだが、それはヴァントリアス帝国だって同じことだ。

 むしろ我々は大陸同盟に入らないかと打診したし、脅威と捉えられないよう歩み寄ろうとした。

 しかし、その一切をヴァントリアス帝国は拒否した。

 普通に考えれば手を取り合うほうが双方に利益があるはずだ。


 そして、過去2度の戦争の際、ヴァントリアス帝国は義勇兵を送った。

 モンロー主義に似たことを行ってきた国が、急に義勇兵を送った。

 

 その時、私に一つの仮説が浮かんだ。

 一番可能性があり、一番最悪な可能性。


「貴様、さては私と戦争したいのだな」


 私が導き出した答えはこれだ。

 奴は私を尊敬している。

 それと同じく、奴は私を超したいのだ。

 軍人として、軍師として。

 過去2度の義勇軍派兵は私と勝負したいがためのものだったのではないだろうか。

 

 ヴァントリアス帝国はフェアンベルゼン王国との戦争の道を歩いているが、その先頭に立つのは辻なのかもしれない。


「ええ、そうですよ。私は先生を超えたい。軍人として最高の先生を私は超えたいのです」


 辻は笑顔だった。

 私の最悪な仮説は当たってしまった。


「この国の軍部は馬鹿が多い。私が少しそれらしいことを言えばすぐ、フェアンベルゼン王国は敵だと同調してくれましたよ」


「貴様一人が私を超えたいという理由だけで、世界を巻き込むつもりか?!」


「いえ、これはヴァントリアス帝国の為でもあります。この国が世界の覇権国家になるための」


「馬鹿な事言わないで!」


 エメがいきなり立ち上がった。


「貴方がだれなのか知らないけど、戦争はどんな理由があっても起こっていいはずないわ!」


「失礼、名前を伺っていませんでしたね」


「私はエメ・レーラー!上級冒険者よ!」


 一応、今回の会談のために国家特別護衛官という肩書を用意したのだが、どうやら無駄だったらしい。


「エメさんですね。これは仕方のないことなのです。国家を存続させるための、仕方のないこと」


「私たちはそんな事情知らないわ!」


「戦争というのは片方が仕掛ければもう片方は応じるしかないのです。たとえ大陸同盟が応じなくても、私がその場にあなたたちを引きずり出します」


 エメはぐうの音も出なくなり黙った。


「よし、わかった」


 私はそう言って立ち上がる。


「せいぜい、大陸同盟を打倒する作戦でも立ててるんだな。これで会談は終わりだ。私はこれでお暇させてもらうよ」


「つまり戦争してくださるのですね」


 私はその言葉を無視した。

 そして靴を履いて建物を後にした。


 建物を出てすぐ、エルベルトが私に質問してきた。


「最後のあれは戦争をするという意味か?それとも、しないという意味か?」


「答えはどちらでもないだ。正直、今後の展望は分からない。だが、どちらに転んでも対処できなければならない」


「つまり、さっきのは、どっちに転んでも、『流石先生』となるための布石、ということですね?」


 フェシリテがそう言った。


「その通りだ。心理戦は既に始まっている。私は奴の上だということを今から覚えさせる」


「流石だな」


 エルベルトが感嘆する。


「それと、早急に大陸会議を行う。もし戦争に突入した際に備えて、色々話し合う必要がある」


 大陸会議。

 大陸同盟の首脳と、もう一名を各国が連れて行う会議だ。


「急いで、帰ろう」


 この先、この世界がどうなるのかは誰も知らない。

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