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間話 フェシリテ・モントローズ

 私が父の仕事に疑念を抱いたのは14の時でした。

 父も母も貴族ではあるものの、もとは商人なので、常にどこかに行って仕事をしていたので家にいるのはまれです。

 毎年、私の誕生日くらいしか帰ってきませんでした。


 それでも、商売一つ、1世代で侯爵に成り上がって、王家に認められた父や母を尊敬していました。

 父はいつも、優秀な人間であれと私に言っていました。

 なので、私は本を読み、家庭教師に学を教わり、礼儀を身に着けました。


 先日は社会勉強の一環として小さな店を一つ与えられました。

 この店を成長させろと。


 私には才能があった。

 瞬く間に店の売り上げは右肩上がりになって、今では町一番の店になりました。


 それから、1年が経ち、そろそろ誕生日を迎えようとしたときの事。

 私はたまたま、父を街中で見つけました。

 久々に父を見て、嬉しくなって、私は思わず、追いかけました。

 すぐに父は小さな一つの建物に入っていきました。

 父に似つかわしくない、寂れた小汚い建物。


 父が入ってすぐ私が入ろうとすると、一人の門番に止められた。

 

「ここはお嬢さんが来るところじゃないよ。帰りな」


 門番はそっけなかった。


「私はフェシリテ・モントローズ。ヴィンセントモントローズの娘です。父に会いたいので、ここを通してくれませんか?」


 私の言葉に、彼は顔色を変えた。


「大変失礼いたしました!どうぞお通りください!」


 そう言って扉を開けてくれた。


「どうか.... ヴィンセント侯爵には不敬な対応をしたと言わないでいただけませんか?」


 彼は真っ青だった。

 額に汗もかいている。


「ええ.... わかりました.... 」


「ありがとうございます!」


 その当時、彼がどうしてそこまで焦っているのかは分かりませんでした。

 後にわかりましたが、このことが発覚したら、最悪彼は死刑だったそうです。

 貴族、ひいては領主に不敬をはたらいたとして。

 

 建物に入ってすぐ、嫌な匂いが鼻に入ってきました。

 生臭くて、鼻を刺激するような棘のある甘い匂い。


 そして、目の前の光景に心底驚きました。

 この光景は何年たっても忘れられません。


 人が鎖でつながれ檻に入れられていました。

 粗末な衣服と、生気のない目。

 中には私と同じくらいか、それよりも小さい子もいました。

 

 この時初めて、奴隷を知りました。


 本で、見たことはありましたが、現実は生々しく、何にも形容しがたい凄惨がありました。


「フェシリテ、どうしてここにいる」


 奥から現れたのは父でした。


「お父様を見つけたので.... それで.... 」


 私はそれ以上の言葉が出ませんでした。


「そうか。ここは私が経営する奴隷の販売所だ。確か、誕生日が近かったな。よし、今回の誕生日プレゼントは奴隷にしよう。ここから好きなのを一体選ぶといい」


「奴隷を買って.... 何をするんですか?」


「なんでもいいとも、狩りの標的でも、ペットでも、拷問でも、好きに使うといい」


 この時の私は、父の言ってることが理解できませんでした。

 いえ、理解したくありませんでした。


「いらないです」


「確かに、最初は少し衝撃かもしれないが、これも世の中だ。選べ」


 その時の父は恐ろしかったです。

 

「じゃあ、この子で.... 」


 私が指をさしたのは小さな女の子。

 私が彼女を買って、優しくしてあげれば、せめて彼女は救える。

 この、行き場のない罪悪感も少しは救えるかもしれない。


「名前は何て言うんですか?」


「一応、アリス・ジルベールという名前はありますが、ここでは174番と呼んでいます」


 そう言って、支配人が鍵を開けて、少女を出した瞬間でした。

 彼女の生気のない目は一瞬にして、憎しみの目に変わりました。

 そして、私に襲い掛かろうとしました。


 しかし、鎖のせいで、私には届きませんでした。


「なにをする!」


 ここの支配人は一瞬にして、彼女の首を飛ばしました。


「大変失礼いたしました!」


「貴様、私の娘に不良品を売ろうとしたのか」


「滅相もございません!まさか、あれがあのような行動に出るなど、予想外でして.... 」


「理由はどうでもいい。貴様は不敬罪で投獄だ」


「そんな、どうかお慈悲を.... 」


 彼の抵抗むなしく、彼は店の外に連れ出されました。


「奴隷選びはまた次にするか」


 そこから私は一つ決めました。

 この家を出ようと。


 それから、販路の拡大と称して、様々な船、航路を調べました。

 結果、ヴィクトワール王国が一番近くていいことが分かりました。

 流石に父の権力も外国には及ばない。


 それから、店の売り上げを金に変え、家にある金品も持ち出して、準備は完了しました。


 夜、店の閉店時間、私は街に逃げました。

 そして、店に一つの手紙を書きました。


 フェシリテ嬢は預かった。

 返してほしければ町のはずれのデキレイまで来い。


 デキレイは港と真反対の方角。

 いい時間稼ぎになるでしょう。

 しかも誘拐されたことにすれば、失踪に比べて余計な捜索をしなくて済む。


 私はそのまま、船に乗り、ヴィクトワール王国に向かいました。

 人生初の船旅がこんなのだとは予想もしませんでした。

 

 ヴィクトワール王国についてすぐ、私はある場所に向かいました。

 それは冒険者ギルド。

 冒険者なら、身元不明の人も簡単になることができ、しかも完全実力主義。

 

 私は早速、受付に行きました。

 隣には男女2人組もいました。

 

「すみません。冒険者になりたいんですけど」


「では、お名前とご年齢を教えてください」


「フェシリテ.... フェシリテ・ジルベールです。15です」


「かしこまりました。パーティーはどうされますか?自分たちで一から作るか、今あるパーティーに参加するか選べますが.... 」


「じゃあ、作ります」

「作るわ!」


 私と同時、隣から威勢のいい声が聞こえてきた。

 隣の人は耳の長い緑髪のエルフと青い髪に茶色の目をした青年。


 これが、エメとマルテとの記念すべき最初の出会いでした。

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