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冒険者ギルドに転移したら、何度も死に続ける王女殿下に出会った件、知らぬ間に彼女と死の運命を共にする契約が結ばれていた  作者: ぼうせん ゆきりん
第一章 『死に寄り添う海月』

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第一章27 『流浪の冒険者』

 朝の微光が、まだドルイラ王国の広大な上空を覆う濃霧を切り裂く前のこと。冒険者ギルドの、あの重々しく粗末なオークの門扉が、微かに震える二つの手のひらによってゆっくりと押し開けられた。


 キーッと耳障りな木擦れの音とともに、空気の中に沈殿していた麦芽酒の澱の匂いと革の汗臭さが一気に押し寄せ、九世奏は生理的な嫌悪から思わず顔を背け、小さく二度、咳き込んだ。


 大ホールの中は酷く薄暗く、粗削りな石柱に掛けられたいくつかの油灯が、薄黄色い不安定な光を放っているだけだった。まだ時間が早すぎるため、広々とした酒場の長椅子には、宿酔から覚めやらぬまま粗悪な陶器の器を抱えていびきをかく低級冒険者が、ほんのまばらに座っているだけだった。


 奏は深く息を吸い込み、両手を大腿の両側にきつく握り締めた。昨夜の王宮の廃墟と万メートルの高空で冷や汗と泥に塗れ、無残な姿となったあの黒い露臍短衫は、今は硬くなって皮膚に張り付いている。一歩歩くたびに、粗い布地の繊維が、極度の栄養不足で鳥肌の立った腹部と激しく擦れ合い、ヒリヒリとした刺痛をもたらした。


 彼は同じように泥だらけのノンノンを連れ、一歩一歩、一枚の花崗岩を切り出して作られた巨大なカウンターの前へと移動した。

 カウンターの奥では、ギルドの制服を纏い、栗色の長髪を一分の乱れもなく後頭部でまとめた受付嬢が、うつむいたまま、細長い羽ペンで分厚い羊皮紙の帳簿にサラサラと何かを記録していた。二人の足音を聞くと、彼女の手首は極めて正確に半空で静止し、それからゆっくりと顔を上げた。片眼鏡の奥から現れたのは、公式化されすぎて何の感情も浮かんでいない、清冷な顔立ちだった。


「俺たち、冒険者になりたいんです!」

 奏は受付嬢に向かって、その一言を放った。


 数日間にわたり水を一滴も口にしていないこと、そして極限の高空の狂風の中で死に物狂いで叫び続けたことにより、彼の声は極めて shaggy に枯れていた。最後の一文字を吐き出した時には、喉の奥から明らかな、吐き気を催すような血の味がこみ上げてきた。

 だが、これこそが、長い日々の果てに奏が最も実現したかった夢だった。


 この悪意に満ちた異世界の暗巷で初めて目覚めてから、肉体を鋼の刺で貫かれ、冷たい解剖台の上で生きたまま切り刻まれ、灰白の世界で無情に斬首されるという、数々の凄惨なループを経験してきた。彼のすべての足掻き、すべての計算は、ただこの瞬間のためにあった。この世界に本当に生きている人間のように、太陽の下に立ち、己の籌碼を差し出すために。


 受付嬢はその言葉を聞いても、すぐに申請書を取り出そうとはしなかった。片眼鏡の奥にある、過剰なまでに鋭い瞳が微かにきらめいた。

 彼女はまず奏を見て、その破れ果て、廃倉庫の麻布や苔の生臭さを微かに漂わせている露臍短衫に一秒だけ視線を留めた。次いで、彼女の目線は少し下がり、隣の長椅子に座って、元気なさそうに二つの白い腕で贅肉のない露臍の腹部をきつく押さえているノンノンを見た。ノンノンのあの黒く太い龍の尾は、今はコンクリートの床に力なく引きずられ、龍鱗が床と擦れて絶えず弱々しい音を立てている。


 二人の容貌と特徴を確認すると、受付嬢の元の無表情な顔の筋肉が、極めて唐突に一瞬だけ硬直した。彼女は分厚い羊皮紙の帳簿をパタンと重い音を立てて閉じ、それから淡々と言った。

「お二人とも、随分と名の知れた犯罪分子のようですね」


 大ホールの中の空気が、一瞬にして水滴が滴り落ちそうなほどに粘りついた。


 それを聞いた奏とノンノンは、思わず気まずそうに数歩後退した。

 奏の踵は床の上で硬直したまま擦れ、小さな埃を巻き上げた。胸腔の中で心臓が極めて激しく収縮するのを感じ、無数の死によって冷酷に近いまでに洗練されたその墨色の瞳には、今、言いようのない窘迫が素早く駆け抜けた。


 そう、彼らがギルドに入ったその瞬間から、どこへ行っても世間の耳目の中心に立たされているような感覚があった。


 理由は簡単だ。二人が公然と王宮へ乱入して王女を奪い去り、さらにその王女が魔法学院へと送られる原因を作ったからである。

 ドルイラ王国が建国されて数百年の間、深夜に重銀甲衛兵の鉄甲防線を天天地覆に引っかき回し、あの気高い大皇子をバルコニーで狂人のように絶叫させた凡人など、一人もいなかった。言うまでもなく、彼らが奪ったのは、至宝のように保護されていた長公主ルフィアなのだから。


 しかも、二人は事後、怪物のように強大なうづき・かすみの助力があったため、いかなる罪にも問われなかった。

 その上で、彼らは大通りを堂々と通り抜け、王宮から三街も離れていないこの冒険者ギルドへとやってきて、冒険者の申請をしようとしている。内情を知る上層部の眼線やギルドの高官たちの目には、これがここ数年で最も大胆な二人であることは明白だった。


 奏は自分が他人に多くの噂話をされていることを自覚し、局促そうに自分の短衫の寒酸な裾を引っ張った。

 だがノンノンはまだ状況が掴めていない。彼女のあの尖った耳は、極度の震撼のために狂ったように震え、白い頬には信じられないという駭然が満ちていた。床に垂れていた龍の尾が、極めて唐突に半空で驚愕の弧を描いた。


「私たちが王宮に押し入ったこと、バレちゃったの?!」

 その澄んだ甲高い声は、死寂の広まった大ホールの中で格段に耳障りに響いた。先ほどまでいびきをかいていたいくつかの低級冒険者たちが、朦朧としながら口を動かし、寝返りを打ってこちらを見ようとする。


 奏は恐怖で全身が冷たくなり、慌てて片手を伸ばし、ノンノンのあの喋り続ける口を必死にきつく塞ぎ、声を低くして静かにするよう促した。

「当たり前だろ! バカ、声がデカい!」


 ノンノンは口を塞がれ、ウーウーと籠もった声を漏らすしかなかった。その明るい大きな瞳から不機嫌な陰霾が一掃され、代わりにようやく事態を察した驚愕が宿った。先ほどまで元気よく立っていた尖った耳が、この瞬間、極めて明らかに両側へと垂れ下がり、後ろの龍の尾も力なく床を不貞腐れたように叩いた。


 奏が気まずそうに手を引っ込めると、ノンノンはようやく焦りを感じた。彼女は仕方なさそうに舌を出し、声の調子を変え、恥ずかしさと畏怖を滲ませながら奏のボロボロの衣の角を引っ張った。


「私たち、もしかして……冒険者になれないの?」

 ノンノンのその泣き出しそうな問いかけを聞き、奏はハッとした。


 ようやく築き上げた確信と気楽さが、一瞬にして崩れ去る。もし冒険者になれなければ、ギルドの正規のルートを利用して食料を得ることができなくなる。そうなれば、ここから最短でも丸四年間の徒歩の時間を要する最北の中央聖域へ、飢えた腹を抱えて向かうしかない。


 これじゃ、餓死してしまう――。

 合法的な通行証を持たなければ、本物の流浪のネズミのように、道中の三つの魔獣平原と二つの禁忌の海で尽きることのない怪物たちに生きたまま引き裂かれ、終わりのない死亡ループを繰り返すことになる。


 奏の瞳孔はきつく収縮し、硬直したまま顔を回し、受付嬢を見つめた。

 受付嬢は語らない。彼女はただ静かにその場に立ち、あの長い羽ペンが彼女の指先で極めて手慣れた様子で一回転した。それから片眼鏡の奥の視線が、同じデザインの黒い露臍装を着た若い男女の体を再び一巡した。


 奏とノンノンも語らない。


 大ホールの中は再び短い死寂に陥った。ただ高い天窓の外を時折吹き抜ける朝風が、長椅子の上の粗悪な麻布を揺らし、カサカサという摩擦音を立てているだけだった。二人の呼吸は止まり、彼らの運命を決めるカウンターの奥の、あの両手を死に物狂いで見つめていた。

 丸一分間の絶対的な静寂の中で、受付嬢の指先が羽ペンを回す微かな軋み音だけが響いていた。


 最後に、受付嬢の鉄のように冷たい顔の上で、口元が極めて密かに引きつり、それから諦めたように溜め息をついた。彼女は引き出しを再び開け、鈍い金属光沢を放つ黄銅のバッジを二枚、花崗岩の台の上に放り投げ、ふっと笑って言った。

「冒険者になれますよ」


 フゥ――。

 その言葉を聞いて、奏の千切れそうなほど張り詰めていた神経が、ようやく微かに緩んだ。彼は脱力したように花崗岩の彫刻が施されたカウンターの縁にすがり、大ホールの埃の匂いが混ざった空気を大きく、大きく吸い込み、全身を制御できずに軽く震わせた。


 受付嬢は手続きの準備を始めた。彼女は細い指を伸ばし、羊皮紙の上に極めて鋭い手つきで二つの複雑なギルド契約の紋路を描き、顔も上げずに尋ねた。

「どのようなタイプの冒険者を目指されますか? この王国に縛られる登録冒険者になるか、あるいは流浪の冒険者となり、各国の冒険者ギルドで任務を受け取るか、選択できます」


 奏はそれを聞くと、視線を微かに動かし、ノンノンを一瞥した。

 ノンノンのあの垂れていた尖った耳がピクッと動き、瞬時に再び立ち上がった。輝く豎瞳がじっと彼を見つめている。


 彼に迷いはなかった。脳裏に突如として浮かんだのは、万メートルの高空で、涙痕に塗れながらも朝光の下で鮮やかに咲き誇った長公主の美しい顔だった。

『約束したんだ、俺は必ず彼女を見つけ出す』


 ここの白い王宮はただの泥沼に過ぎない。そしてあの白髪の水母辮の王女は、今まさに純白の神聖木で作られたあの飛空艇の上で、ドルイラ王国の外にある魔法学院へと急速に遠ざかっている。奏がいずれの王国にも縛られるわけにはいかなかった。


 そのため、彼は気楽に、そして躊躇なく選択した。

「俺たちは、流浪の冒険者になります」


 受付嬢は頷き、羽ペンが羊皮紙の縁に、決別を象徴する重い横線を引いた。しかしその直後、彼女は呆れたように大きな白目を剥き、極めて現実的な口調で注意を促した。

「ですが、受け取れる報酬は固定の冒険者より数割少なくなりますが、受け入れられますか?」


「数割少なくなる?!」

「報酬が少ない」という言葉を聞き、奏は躊躇した。彼の眉が深く潜められた。この異世界における金銭の重要性を、彼は痛いほど知っている。これからの四年の遠征、十分な補給がなければ、彼らは数歩も歩まぬうちに二つの枯骨に変わるかもしれない。


 だが、隣のノンノンは彼の想像以上に直率だった。

 ノンノンは床を直接重々しく一歩踏みつけ、白い頬には大雑把な「気にしない」という色が満ちていた。あの黒い大きな尾が半空で極めて愉快な弧を描き、重く一点、頷いた。


「ご飯が食べられればそれでいいじゃない!」

 ノンノンのあのでありながら、どこか窮屈な雰囲気を漂わせる顔を見て、奏の心の底で極めて無力に首を振った。だが、ご飯さえあれば運命にしがみついて死を共にするという同伴者の豁達さが、極めて唐突に彼の心の中の最後の懸念を拭い去った。


 奏はそれゆえ、同意した。

「受け入れます」


「結構、契約成立です」

 受付嬢は記入し終えた二通の羊皮紙を古い魔導具の圧縮機の中に差し込んだ。低く重い轟音とともに、内部の歯車が苦しそうに噛み合い、回転し始めた。


 受付嬢の手続きを待つ間、奏とノンノンは大ホールの一角に戻り、力なくギルドの長椅子に腰掛けた。

 ノンノンは飢えていたが、それでも活発に尾と小足を揺らしていた。あの古びた冒険皮靴が硬い長椅子の下縁をパチパチと叩き、清脆な衝突音を立てている。あの利口な黒い短髪が彼女の動きに合わせて揺れ、白い腹部が激しい呼吸のために微かに起伏していた。まるでこの方法で、腹の中の飢餓感を紛らわせようとしているかのようだった。


 奏もまた、酷く飢えていた。

 彼は両手を硬直させたまま膝につき、全身の力を失ったようにうつむいていた。

 奏がこの異世界に越境して以来、ただの一度も食物を口にしたことがない。


 あの反復して重置される周目の中で、彼は逃亡しているか、あるいは殺される途中にいた。彼は無数の死の色彩を見てきたが、この世界の一片のパン、一滴の清水の味だけは知らなかった。今の状況を真実に語るなら、全身が抗議のように震えていた。


 指先は冷たく、血の気が全くない。無数の死によって淬煉された本能が、今、脳に向かって狂ったように警報を鳴らしている。彼の墨色の瞳の焦距は散漫になり、ただ歩くだけで気絶しそうな不快感が襲ってくる。


 胸腔の中、かつてないほど灼熱したあの心臓が、今は破れた戦鼓のように、栄養不足のために鼓動を加速させ続け、ドクドク、ドクドクと耳膜の中で粘りつく重い轟音を立てていた。低血糖がもたらす強烈な眩暈により、彼の目の前の世界は、時折、惨烈な死の白さに染まった。


 どれほどの時間が経っただろうか。

「九世奏、ノンノン、受け取りに来てください」


 受付嬢の清冷な声が、ついにこの折檻を破った。

 二人は脱力したように長椅子から立ち上がり、硬直した足取りを踏み出した。


 やがて、彼らはようやくカウンターで、自分たちの流浪冒険者バッジを受け取った。

 それは手のひらほどの大きさしかない黄銅製の札で、縁が極めて敷衍に打まれており、粗末な表面が油灯の反射を受けて鈍い烏光を放っていた。奏はバッジを目の前に近づけて注意深く見た。そこには名前と、発行所である「ドルイラ王国」の文字がはっきりと刻まれていた。


 これが、おそらく彼らの起点なのだろう。

 指先でその上の凹凸のある字体に触れると、奏の心の底が極めて密かに悸動し、それから深く息を吸い込んだ。この瞬間から、彼は暗巷に隠れる偷渡客ではなく、合法的な流浪者となったのだ。


 まさにその時、受付嬢の帳簿を押さえていた片手が、引っ込められなかった。片眼鏡の奥の目が微かに細められ、極めて唐突にその一言を放った。

「手数料として五十クリスタル球を支払ってください」


 その言葉は目に見えぬ驚雷のように、大ホールの中にようやく緩和したばかりの空気を直接粉砕した。


 奏は呆然とし、全身が極めて明らかに硬直した。彼は躊躇がちに顔を回し、ノンノンを見た。

 ノンノンもまた、その明るい豎瞳を朦朧と見開き、気まずそうに首を傾げて奏を見た。


 二人は生唾を飲み込んだ。


 五十クリスタル球。その数字は現在の彼らにとって、天文学的な数字に他ならなかった。五十個どころか、奏は今、微かに光るクリスタル球の破片すら半個も持ち合わせていない。あの黒い龍の尾が床の上で極めて気まずそうに縮み、ノンノンは無意識に手を自分のあの凹んだ露臍の腹部へと動かした。まるでポケットから何かを探し出そうとするかのように。だが、最後につまみ出したのは、廃倉庫で付着した半塊の枯れた青苔だけだった。


 受付嬢は目の前の、顔色が極めて唐突に鉄青へと変わっていく二人を見つめ、仕方なさそうに手を伸ばし、その白い手のひらを半空で極めて敷衍に振った。

「お金が支払えないのであれば、この冒険者バッジを使用することはできません」


 彼女は、あの「ドルイラ王国」と書かれた二枚の黄銅バッジを再び引き出しの中に回収しようとした。


 だめだ。

 そんなことはさせない。


 奏の瞳孔はきつく収縮し、彼の爪は手のひらに深く食い込み、その皮膚から鮮血を絞り出しそうだった。彼はあれほど凄惨を極めた回档を経験し、ようやくの思いでノンノンを連れてここまで辿り着いたのだ。たかが五十個のクリスタル球のために、この最後の関門で生きたまま足止めを食らうなど、絶対に御免だった。


 まさにその時。

 いかなる魔力の兆候もなく、いかなる空間の波動もなかった。

 大ホールの中の空気の流れが、極めて唐突に止息した。薄暗く、気怠げでありながら、実体化した海嘯のような重々しい威圧を伴う漆黒の気配が、何の予兆もなく長街の門の外の陰影から浸透してきた。


 一枚の黒い布地が、寒風よりも何万倍も速く、音もなく折れ返り、カウンターの前方の光影の中へと切入した。

 かすみが冒険者ギルドに現れたのだ。


 少し前、白い王宮の大門の前で片手で剣を抑える威圧を放ち、万軍を死に体のごとく定格させた黒袍の将軍は、今も変わらず深遠なる漆黒の長袍を纏っていた。彼はゆっくりと両手を広い袖口から揣出し、頭の上の黒い兜帽を低沈な空気の中で微かに後ろへと退け、あの利口な短髪を覗かせた。

 しかも、に奏とノンノンの背後に現れたのだ。


 その高大な影は、居高臨下な、上位強者の持つ戯れと審視を伴い、低沈で平穏な声が、この死寂のホールの唯一の音符となった。

「その五十クリスタル球、私が支払おう」


 パタ。

 幽暗な微光を放つ、ずっしりと重いクリスタル球の入った小さな袋が、あの修長く冷たい大手によって花崗岩のカウンターの上に無造作に放り投げられ、清脆な衝突音を立てた。


 受付嬢は来客の姿を確認した千分の物の一秒の間、全身の肉体が極めて奇妙にその場に僵持し、まるで生気のない鉄の彫像のようになった。彼女は黒袍の下の、あの深遠な眼眸を死に物狂いで見つめ、呼吸さえ手できつく捂し、慌てて二枚の黄銅バッジを奏の前へと恭々しく差し出した。


 こうして、奏とノンノンは流浪冒険者バッジを獲得した。

 手の中の、二枚の失いかけた牌子を見つめながら、奏の唇は硬直したまま開いた。この、王国全体において「絶対的な暴力の代名詞」を代表する怪物に対し、彼は一体どんな表情で向き合えばいいのか分からなかった。


 三人は冒険者ギルドの二階へと移動した。

 階下の大ホールの喧騒と汗臭さに比べ、二階の貴族議事庁は格段に僻静だった。分厚い紫の紗幕が外の市井の喧騒を完全に隔絶し、足元のオークの床は拭き清められて、ぼやけた死白の層を浮かび上がらせていた。


 奏は巨大な天使の石彫の死角の縁に脱力したように寄りかかり、昏暗な光の中で頬を極めて唐突に赤く染め、申し訳なさそうに感謝を述べた。

「ありがとうございます、かすみ将軍。また迷惑をかけてしまって……」


 かすみはバルコニーの護欄の前に静かに立ち、その深遠な目で遠くの碧藍に洗われた朝光を注視していた。両手は相変わらず気怠げに黒い布地の袖口の中に揣まれている。

「端金だ。私が君を訪ねた理由こそが本題だ。現任の国王は、実は服毒などしていない。王子と王女を欺くための狂言だったのだ」


「何だって――?!」

 奏はその言葉を聞き、突如として驚愕した。


 脳裏にあった、これまでの数周目の情報――「大皇子の弑父奪位」「骨髄に深く浸み込んだ慢性毒」という固有の情報が、この一瞬にしてかすみの言葉によって粉砕された。奏の唇は硬直したまま開き、墨色の瞳孔はきつく収縮し、全身がこの過剰に膨大な情報量の前に、言いようのない不快感を覚えた。


 あの偏殿の二階のバルコニーで過剰なまでの憤怒を浮かべていた大皇子、あの冷たい客室で子供のように泣いていたルフィア……。最初から最後まで、彼らはあの死に体に見えた老いぼれの掌の上で弄ばれていたというのか?!


 だが、かすみは彼に驚愕する時間を与えなかった。

 高大な黒袍が翻り、逸散した威圧の波紋は実体化した海嘯のようになり、生々しく奏の喉元まで出かかった驚呼をきききと喉の奥へと押し戻した。かすみは顔を回し、その気怠げな瞳に僅かな玩味を浮かべた。

「そして国王は、君にグルセ王国へ向かってほしいと託した。あそこは魔法学院へ向かう必経の路でもある」


「グルセ王国?」

 その見知らぬ名前を聞き、奏は自分の短衫の裾を引っ張り、長期の飢餓のために混乱した頭脳を強引に冷静にさせた。彼はその目的が全く理解できず、清秀な顔には不解が満ちていた。


「なぜグルセ王国なんだ? あの国王は……一体俺に何をさせたいんだ?」

「もし君が望むなら、グルセ王国の危機を解決してやってほしい。グルセ王国からは久しく貿易の往来が途絶えている。ドルイラ王国とグルセ王国は古くから交誼が深い。それゆえ、君に助力を託したいのだそうだ」


 奏はそれを聞くと、ノンノンを一瞥した。

 ノンノンはその時、あの明るい豎瞳で朦朧と彼を見つめており、黒い大きな尾が半空で困惑の弧を描いていた。彼女には複雑な国家の貿易など理解できるはずもなかったが、隊長の選択こそが自分の進む方向であることは知っていた。


「どうせ必経の路だ、問題ないだろ?」――奏は声を潜め、同伴者に尋ねるようであり、また自分を言いくるめるようでもあった。


 かすみは同意を聞くと、ふっと笑ってポケットから一袋のクリスタル球を取り出した。

 それは極めて高級な黒い鹿皮で縫製された金入れで、縁には金線で繁茂する飛鳥の紋路が彫刻されていた。かすみの手首が一振りされると、黒い鹿皮の金入れがパシッと、奏の硬直した手のひらの中に激しく叩きつけられた。


「ここに三百個のクリスタル球がある。いささか吝嗇ではあるがね」

「三百個?!」


 奏は重々しい袋を見つめた。その粗い皮の表面は、窓の外から差し込む惨白な朝光の下で、極めて沈着な質感を折射しており、ずっしりとした重量が彼の細い手首を極めて明らかに下落させた。


 ノンノンはその中できらめく多くのクリスタル球を見ると、彼女のあの垂れていた尖った耳がピクッと動き、瞬時に極度の雀躍のために狂ったように震え出した。その明るい大きな瞳から飢餓の陰霾が一掃され、あの美しい顔には今にも涎が流れ落ちそうだった。彼女は猛然とその場から跳び上がり、両手を自分のあの露臍の腹部にきく押し当て、大声で叫んだ。


「奏隊長、やっぱりあなたについていくのが私の最高の選択だったわ!」

 あの黒く太い龍の尾が半空で狂ったように甩動し、ヒューヒューと風の音を巻き起こした。流浪冒険者の計画において、この三百個の光るクリスタル球は、食べきれないパン、飲みきれない濃湯を意味し、彼らがついに同じ穴で朽ち果てずに済むことを意味していた。


 ノンノンのあの現金で可愛らしい姿を見つめながら、奏はしかし、同伴者のように興奮してはいなかった。

 無数の死によって冷酷に近いまでに洗練されたその墨色の瞳の中では、神情が再び狠辣で決絶なものへと戻っていた。彼は重い鹿皮の袋を腰に結びつけ、すべての注意力を眼前のあのかすみへと強引に集中させた。


 奏は突如として冷静になった。この異世界はこれほど危険なのだ。単に王宮に乱入するだけで、一体何度死んだことか。

 彼は因果の偏離の背後にある代価を痛いほど知っている。あの国王がこれほどの假死の手段で全天下を欺くことができるのであれば、彼が托してきた「グルセ王国の危機」が、普通の土匪の毒殺や小泥棒の騒ぎであるはずがない。いかなる未知の木門の背後にも、ある唯物の死地が隠されている可能性があるのだ。


 奏の視線はかすみの兜帽の下の陰影を死に物狂いで見つめ、沙哑な声でその最も核心となる質問を投げかけた。

「実を言ってくれ、危険か?」


 空気はこの瞬間、再び死寂へと沈み込んだ。外の朝光が少しずつ大理石の床の上の陰影を蚕食し、駆逐していく。高空から時折伝わってくる飛鳥の鳴き声だけが回帰していた。


 かすみは一瞬、間を置いた。

 かつて単身で兵となり、一万の兵を相手に戦い、最後は衣服に塵一つつけずに立ち去ったあのかすみが、ゆっくりと右手を黒い布地の中から揣出し、深遠な眼眸の中に極めて古怪な審視を閃かせた。


「私にとっては、危険ではない」

 奏は一対の目をきく細め、口元を歪め、象徴的な死魚目を浮かべた。


「ってことは、めちゃくちゃ危険だな……」

 一万以上の精鋭正規軍魔術師団を単独で圧倒できる怪物が「危険ではない」と言うのだ。魔力すら持たず、スキルも使い物にならない自分に換算すれば、それは実質的に死亡率九十九パーセントに達する絶命の絞肉機に他ならない。


「だけど、受け入れるよ。できる限り努力する」

 奏は笑った。その干からびた清秀な顔の上で、笑顔の深淵には死に物狂いで抗うという狂気が満ちていた。彼は自分のあの破れかぶれの黒い露臍短衫に触れ、それから隣でバッジを抱えて馬鹿笑いしているノンノンを見た。


 四年遠征の第一歩はすでに踏み出されたのだ。当然、ここで引き返すわけにはいかない。


 奏はその中から五十クリスタル球を取り出し、かすみへと返した。かすみが拒絶するよりも早く、奏は立ち上がった。

「ノンノン、ご飯食べに行こうか?」

「はーい!」


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