第一章16『第二次の生活』
牢獄の高所に設けられた狭い窓の外では、いつの間にか、ねっとりとした深い夜色が引き際を迎えていた。分厚い塵と煤にまみれた鉄格子を通り抜け、幾筋かの薄暗く清冷な朝光が斜めに差し込む。その光は、この陰湿で湿った空間を満たす、カビ臭い微細な埃を白々と照らし出していた。
「起きた?もう朝だよ。もうすぐ僕たちは自由になれるね」
少しの陰りもない軽快な声が、静まり返った石壁の間に小さな木霊を響かせた。
奏の瞼が激しく痙攣した。喉の奥から濁った呻きが漏れる。彼は極めて重い身体をどうにか引き起こし、氷のように冷たくて粗い石の床に指の関節を死に物狂いで食い込ませた。長い間、身体を丸めていたせいで、大腿と脊椎が激しい痺れを訴えて悲鳴を上げていた。
鉛を流し込まれたように重い頭を振り、彼は困惑しながら周囲を見回した。
「俺は昨晩、考え事をしていたはずじゃ……どうして急に一晩中眠ってしまったんだ……幸い、何も起きなかったみたいだけど……」
彼は手を上げ、どこか神経質に自分の首元に触れた。血は流れていない。あの頭部が切断された時の氷のような死の感覚も、何百メートルもの高空から墜落して全身の骨が粉々に粉砕されたあの幻痛もない。周囲は相変わらずあの狭い軽罪用の牢屋であり、対面に座っているのは、昨夜からずっと喋り続けていたあの龍人族の少女だった。
お腹がグウと鳴った。
そのあまりにも不調法で、それでいて異常に大きな腹鳴の音が、何の前触れもなく奏のお腹の中から炸裂した。もともと青白かった彼の顔が一瞬にして真っ赤に染まる。彼は無意識のうちに両手で腹をきつく押さえたが、胃袋が狂ったように身をよじり、互いに摩擦し合っているかのようなその猛烈な飢餓感は、じわりじわりと冷や汗になって彼の額から滲み出てきた。
「それに、めちゃくちゃ腹が減った……二日間も断食の罰を受けていたんだから……」
生理的な極限の飢えにより、彼の唇は乾ききって今にも血が滲みそうだった。丸二日、彼はまともな食べ物を何一つとして喉に通していなかった。低血糖のせいで、思考さえも一瞬だけ停止しかけていた。
傍らに座る龍人族の少女は、彼のその狼狽した様子を見て、思わずクスリと笑った。ボサボサの短髪の間に隠れた二本の黒い龍の角が、彼女の笑い声に合わせてリズミカルに揺れる。
「あの王女様が去った後、君は二、三言何か呟いて、それからそのまま気絶するように眠っちゃったんだよ。ところでさ、どうしてそんなに王女様が無事だって確信してるみたいな顔をしてるの?どこからそんな自信が来るわけ?」
少女は上半身を微かに前傾させた。縦長の瞳を持つ細い目を少し細め、純粋な好奇心と探求の光を宿しながら、奏の泳ぐ視線をじっと見つめてくる。
奏の心臓が、この瞬間にどきりと跳ね上がった。
どこからの確信か、だって?
それは、俺が一度死んでいるからだ。
この世界の最も理不尽な根底のシステムを目撃したからだ。もしルフィアが昨夜、王宮の奥深くで蛇毒によって命を落としていたか、あるいはあの権力者たちの暗殺によって完全に息絶えていたなら、今この瞬間に九世奏がこうして五体満足で飢えに耐えているはずがない。彼はもっと早い時間に、あの容赦ない切断音か、あるいは死神のあの反吐が出るほど不快な黒い鎌とともに、旅籠のロビーの長椅子の上で跳ね起きているはずなのだ。
今、自分がまだ生きていて、時間が冷酷に前へと進んでいる。それ自体が、ルフィアが少なくとも現時点で、この王国のどこかで未だ平穏に呼吸をしているという紛れもない証明だった。
だが、そんなことを口にできるはずがなかった。
ひとたび「リロード」や「死神」、あるいは契約のシステムに関するいかなる情報をこの無関係な異世界の住人に漏らせば、虚空に潜むあの黒い鎌が千分の一秒の猶予もなく彼の喉を切り裂くだろう。骨の髄まで刻み込まれた生理的な恐怖が、奏の喉元まで出かかった言葉を強引に飲み込ませた。
「ただの、勘だよ……」
奏は微かに顔を背け、乾いた、掠れた声で言った。その視線は泳ぐように牢屋の隅にあるカビの斑点へと落ちた。
少女は眉をピクリと跳ね上げた。細かな黒い鱗に覆われ、尾の先端に小さな毛房がついた龍の尻尾が、石板の上で不気嫌そうにパタパタと微弱な音を立てる。彼女がそのあまりにもおざなりな回答に強い不信を抱いているのは明らかだった。しかし、奏のその疲弊と驚懼に満ち、まだ涙の跡さえ乾きき返っていない狼狽した顔を見て、彼女は結局のところ魚のような死んだ目をしてみせ、それ以上の追及をやめた。
「まあいいや。どっちにしろ君にはスキルがないみたいだし、ただの一般人だもんね」
彼女は少し退屈そうに唇を尖らせ、再び身体を丸めて元の位置へと戻した。両腕を胸の前で組み、その口調には、高位種族が凡人を見下ろす時に特有の、上から目線の断定が含まれていた。
スキルがない。
その四つの言葉は、まるで細くとも鋭い針のように、奏の最も敏感な神経を突き刺した。彼はスキルを持っていないわけではない。それどころか、あの純白の空間で天使から直接授かった、階級さえ「未知数」である神秘的な能力を所有している。しかし、あの忌々しい能力は、これまで【他人に口外できない契約】となって自分を縛り付ける以外、白兵戦において彼に何一つの微小な助けも与えてくれなかった。彼は未だに、衛兵の腹部への一撃さえ耐えられないほど脆弱なままだ。
だが、奏は少女の言葉から鋭く別の情報を捉えていた。彼は石壁を支えにしながらゆっくりと立ち上がり、飢えのために足元が微かに浮つくのを強引に踏みしめ、低い声で尋ねた。
「それって、君にはスキルがあるってことか?」
その言葉を聞いた瞬間、先ほどまで元気がなかった少女は、まるで何らかの活力を注入されたかのように、その場から勢いよく跳ね起きた。彼女はまだ未発達で少し平らな胸を張り、二本の黒い龍角が朝の光を浴びて異様な質感を放つ。龍の尻尾までもが高々と上を向いていた。
「私は優秀な龍人族だよ!当然、生まれつきのスキルを持ってるに決まってるじゃん!」
彼女は誇らしげに頷いた。その微かに赤みを帯びた瞳の中には、見せびらかすような下世話な輝きが満ちており、一本の細い指を奏の目の前で振ってみせた。
「私は自分の速度を加速させて、さらに重力を無視できるんだ。これが私のスキル――【急速小猫】!凄いでしょ?」
空気は、この瞬間に奇妙な静寂へと陥った。
奏は、自分を「誇り高き龍人族」と称するその短髪の少女を、少し呆然とした目で見つめた。自身の速度を上げ、さらに重力を無視する。それはどんなファンタジーの格闘小説であっても、間違いなくトップクラスの隠密・暗殺の神技だ。
しかし……。
奏は口元を引きつらせ、少し機械的に、静かに尋ねた。
「そのスキル……自分で名前をつけたのか?」
「ステータス画面にそう書いてあるんだよ!」——少女は不服そうに頬を膨らませ、両手を虚空で忙しなく動かしながら、自分の威厳を証明しようとした。
「私は猫族じゃないけど、きっとこのスキルは猫族に有利なものなんでしょ?でもね、このスキルのおかげで私の泥棒稼業はたくさんの実績を上げてきたんだから!追っ手から何度も逃げおおせたのも、これのおかげだし!」
彼女はそう言いながら、非常に得意げに顎を突き出した。まるで、パン屋に潜入して硬い黒パンを数個盗み出すことが、歴史に刻まれるべき伝説の叙事詩であるかのような態度だった。
彼女のその犯罪に対する自覚のなさ、むしろ逃走スキルに対して自画自賛している様子を見て、奏は少し呆れたようにため息をついた。相次ぐ致命的な打撃と冷酷な扱いにさらされてきた彼にとって、目の前の荒唐無稽で跳んで跳ねるような、しかしどこか人間味のある龍人族の少女は、この世界に来て以来、数少ない、張り詰めた神経を緩めさせてくれる存在だった。
――ガチャン!
重苦しく耳障りな鉄器の衝突音が、突如として通路の奥から炸裂し、二人の間のどこか滑稽な対話を遮った。
密集した足音が、忌々しそうに唾を吐く数人の声とともに急速に近づいてくる。昨夜、銀の甲冑を身に纏っていた数人の衛兵たちが陰険な顔つきで歩いてきた。そのうちの一人が重々しい黒鉄の鍵を握り締め、手荒な動作で鍵穴へと差し込み、力任せに回した。
扉が強引に引っ張られた際に出る乾いた呻き声とともに、少し冷気を含んだ風が外の自由な空気を巻き込んで吹き込み、牢屋の中に二日間こもっていたカビ臭さを一瞬で吹き飛ばした。
「出てこい、トラブルメーカーのガキども」
先頭の衛兵が床に座る二人を見下ろすように一瞥した。その瞳には隠しきれない軽蔑の色彩が滲んでいる。彼は金属の靴の先で頑丈な鉄格子を蹴り、不快な音を響かせした。
「この二日間で少しは反省したことを願うな。次やったら、二日程度じゃ済まないからな!早くしろ、いつまでも中にいて空気を汚すんじゃない!」
奏は少しの躊躇いもなく、痺れた膝を支えながらゆっくりと立ち上がった。彼の太ももは飢えのために抑えきれず微かに震えていたが、それでも彼は歯を食いしばり、一歩一歩、極めて確固たる足取りで、自分を二日間閉じ込めていたあの黒い鉄門を跨ぎ超えた。龍人族の少女の足取りはそれよりも遥かに軽快だった。彼女はまるでようやく檻から放たれた小鳥のようで、衛兵の鍋の底のように黒い顔に向けて目立たないようにあっかんべーをしてみせると、一跳びにするようにして奏の後ろについてきた。
暗く狭い石造りの通路を通り抜け、王宮の側門から放たれた目も眩むほどの眩しい太陽の光が奏の顔を遮るものなく照らした時、彼は思わず腕を上げ、目の前を死に物狂いで覆った。
目が刺激され、生理的な涙の膜が張る。彼は朝の少し草木の清香を含んだ空気を大きく吸い込み、すでに汚れ、黄ばんでしまった自分のTシャツを通り抜けていく微風を感じていた。
こうして、奏と龍人族の少女は解放された。
王宮の外郭にある大理石で敷き詰められた広場の端に立ち、周囲の人流が少しずつ騒がしくなっていく。二人は一本の噴水の傍らで足を止めた。一時間ほどの間、雰囲気には奇妙な沈黙が流れていた。
「じゃあ、ここで解散だね。役立たずの一般人のお兄さん」
少女は自分の身につけている少し古びた麻布の短衣を叩き、背を向け、太陽の光に向かって奏に手を振った。そのまま去っていく構えだ。
奏は彼女のその少し細く、小さな背中を見つめ、胸の内に理由のない奇妙な名残惜しさを抱いていた。このお互いを欺き合い、権力者の陰謀が渦巻き、粗野な冒険者たちと冷酷な死神がのさばる第十四号の異世界において、パンを盗んだことで同じ牢屋に入れられたこの少女は、唯一悪意を持たず、それどころか昨夜彼が最も絶望し崩壊しかけていた時に、少し不器用な言葉で一筋の微光を差し伸べてくれた「同類」だった。
背を向けて歩き出す前、奏はその少女とどこか気が合うような感覚を覚えていたため、下意識に振り返って彼女を見た。
そして彼が予想だにしなかったのは、あの少女もまた、同じように振り返っていたことだった。
二人の視線が、少し冷たい朝風の中で衝突した。少女も奏が振り返るとは思っていなかったようで、一瞬だけ呆気に取られ、少し気まずそうに手を後ろに回した。あの黒い龍の尻尾が少し不安そうに地面を払い、それから、そのまだあどけなさの残る顔に、再びあのいたずらっぽい、気ままな笑みが咲いた。
奏は深く冷たい空気を吸い込み、少し急切に前へと半歩踏み出し、その機に乗じて尋ねた。
「君の名前は?」
少女は首を傾げた。その短い髪が朝の光を浴びて淡い墨色を反射する。彼女は微かに顔を上げ、笑った。
「私のことは、幼名のノンノンって呼べばいいよ!君の名前は?」
奏はその柔らかい響きの名前を聞き、心の底の陰霾がまた少し吹き飛ばされたように感じた。彼は彼女のあの独特な縦長の瞳を真剣に凝視し、一字一字、はっきりと答えた。
「九世、奏」
「珍しい名前だね。幸運を祈るよ!馬鹿みたいに死んじゃダメだからね!自由を楽しみなよ、奏!」
ノンノンは清々しく高らかに叫んだ。言葉が落ちたその刹那、彼女の目の色が突如として変わった。先ほどまでの怠惰さと下世話な輝きは瞬時に霧散し、代わりに捕食者のような絶対的な鋭敏さが宿る。
彼女の足元の青石板の地面から、肉眼で辛うじて捉えられるほどの、極めて微弱な気流が突如として広がった。
言い終えるや否や、ノンノンはスキルを発動させ、身体ごと肉眼ではほぼ捕捉不可能な一条の黒い流光へと変じた。彼女の両足はあらゆる物理の常識を違え、極めて軽快に、王宮の外郭にあるあの高さ数メートルに及ぶ垂直な石壁を直接駆け上がった。いささかの減速もなく、いかなる這い上がる動作もなく、彼女はそのまま壁に沿って飛ぶように狂奔し、スライドするかの如く進んだ。短髪が狂風の中で激しく後ろへと引っ張られる。
わずか二秒ほどの時間で、彼女の姿は反転して飛ぶ黒燕のようになり、極めて鮮やかに高聳する囲い壁を飛び越え、奏の視野から完全に消失した。
ただただ感嘆するばかりの奏だけが、間抜けにその場に立ち尽くしていた。乾いた唇を微かに開き、その瞳には隠しきれない震撼が満ちていた。
これこそがノンノンのスキル。スキルの呼称こそ可愛らしく、あるいは猫族に有利なために存在する【急速小猫】だが、その実用性は文字通りトップクラスだった。何しろ逃走系のスキルなのだ。一歩間違えれば死を招く災いを被るこのような残酷な異世界において、一瞬で地形を無視し、重力を無視して現場を離脱できる能力ほど、人に安心感を与えるものはない。
奏は非常に羨ましかった。彼は首を落とし、寒さと飢えのために少し青白くなり、細かな擦り傷に覆われた自分の手のひらを見つめた。
もし自分にもこのようなスキルがあったなら、死神の鎌に直面した時、あるいはあの高々とした衛兵たちに直面した時、もう少し融通の余地が生まれたのではないだろうか?
しかし、今の彼はただ王宮に目を向けることしかできなかった。
彼はゆっくりと身体を翻し、視線を再びあの巨大な階段の上にそびえ立つ、神聖かつ森厳な白色の宮殿へと投じた。ルフィアはあの中にいる。彼のような凡人には到底触れることのできない権力の中心に。昨夜、彼女が見せた氷のように冷たい視線と決絶とした背中が、再び走マ灯のように脳裏を駆け巡り、一枚の重苦しい巨石となって、彼の胸元を強く圧迫した。
どうあっても、彼はまず確認しなければならない……。
「おい!お前、まだ懲りてないのか!出てきたばかりだというのに、また王室の方々に付きまとおうとするなんて!」
大門の側、昨夜、奏を殴打したあの銀甲の衛兵が、鋭く彼の動作に気づいた。衛兵の大きな手が猛然と腰の佩剣の剣柄へと押し当てられ、重々しい金属の靴が石板の上で刺すような「コツン、コツン」という音を響かせる。彼は大声で叱責しながら、不善な顔つきで奏へと接近してきた。
その隙のない殺意と、腰のあたりに微かに疼く幻痛の感覚が、奏の全身を凍りつかせた。
今の彼には食べ物もなく、武器もなく、ただ立っているだけでさえ多大な意志力を消耗する状態だ。ここで引き続き正規の衛兵と衝突を起こすのは、自殺行為以外の何物でもない。
奏は急いで立ち去るしかなかった。
彼はほとんど狼狽しながら首を落とし、周囲から徐々に集まってきた、探求と嫌悪の混ざった視線を避け、足元の歩幅を速めた。広い大理石の階段に沿って一気に駆け下り、命からがら逃げるかのように平民区の密集した街道の中へと突き進んでいった。
三十分後。
平民区の中央、冒険者ギルド。
早朝のギルドのロビーにはすでに多くの人々が集まっており、空気の中には安物の麦芽酒、劣悪な乾燥煙草、そして汗の混ざり合った刺すような臭いが充満していた。体躯が逞しく、顔つきの粗野な冒険者たちが木製の机を囲んで座り、粗魯に大笑いしながら、どこかのダンジョンにいる怪物や、昨夜どこの酒場で引っ掛けた女についての話を大声で交わしていた。
この喧騒と騒がしさの中で、奏は一人、冒険者ギルドの片隅にある長椅子の上に座っていた。
長椅子の木材はいくつかの亀裂が入っており、縁には毛羽立ちがあり、冷たく、そして硬かった。奏は両膝の上に肘を突いて支え、十本の指を自分の髪の中に深く差し込み、背中を微かに丸めながら、静かに思考していた。
いかにしてルフィアを救い出すか?
その問題はまるで答えのない死のループのように、彼の脳裏を狂ったように盤旋していた。
王宮へ強行突破する?冗談じゃない。先ほどは衛兵の一瞥だけで、彼は命からがら逃げ出すしかなかったのだ。自分はただの普通の十七歳の日本の高校生だ。魔法も使えず、剣術も知らず、一枚の硬いパンさえ自分の手で稼ぐことができない。
それとも、もう二度とルフィアの件には口を挟むべきではないのだろうか?
実際、最も理知的な選択は、ここで手を引くことではないのか?
自分はここで立ち去るべきなのか?
あの白髪のクラゲのような三つ編みの王女は、昨晩はっきりとこう言ったのだ。「私とあなたにはそれほど多くの関わりはありません。これ以上付きまとわないでください」と。あの冷淡で、嫌悪に満ち、どこか反吐が出るような差別を孕んだ瞳は、十分に彼を目を覚まさせるものだったのではないか?彼女は明確に、明日になれば解放されるから「第二の人生を大切にしてください」と告げたのだ。
それこそが、彼がこれまでずっと夢にまで見てきた解放ではないのか?今ここで立ち上がり、この町を出て、あの忌々しい、陰謀と毒刃に満ちた王室から遠く離れ、一人の普通の冒険者としての生活を送れば……。
しかし、それに伴って湧き上がってきたのは、さらに深い階層の、恐怖に近い未知だった。
俺が立ち去った後、契約違反にはならないのか?
もし王国の門を一歩踏み出した瞬間、背後から暗殺者が追ってきたら……それは根本的な自由などではなく、懲罰だ。
それに、死亡した後は一体どこへリロードするというのだ?
現在のセーブポイントは、なぜか最初のギルドの門前から、旅籠の長椅子の上へと移動してしまっている。もし今回、逃亡の過程で再び何らかの「不可抗力」によって死亡した場合、セーブポイントはさらに前へと移動するのだろうか?自分が大牢に閉じ込められた瞬間に?あるいは、ルフィアが完全に死亡した後の、二度と取り返しのつかないポイントにまで?
あらゆる事象が奏の煩悩を絶え間なく刺激した。目に見えない運命の鎖によって喉元を死ぬほど締め付けられるその窒息感は、彼をほぼ呼吸困難に陥らせていた。
しかし、ルフィアが昨日見せたあの視線もまた、彼の脳裏から離れなかった。
たとえその視線が反吐が出るほどの差別であり、まるで彼が道端で物乞いをし、権力者にすがりつこうとする汚らわしい虫ケラであるかのような扱いだったとしても。その視線を回想するたびに、奏は自分の自尊心が地面に叩きつけられ、あの精緻な長靴によって粉々に踏みにじられたように感じていた。
だが、もしあの老薬師やノンノンの言う通りだとしたら……。
「王女様は、君を巻き込みたくなかったんだよ」
「去り際に少し足が止まった。明らかに王女様は君との約束を気にしてる。情勢に迫られてのことかもしれないよ?」
その二つの言葉が、まるで休むことを知らない振り子のように、彼の耳の奥で狂ったように衝突していた。
もしかしたらルフィアには他人に言えない事情があったのかもしれない。もしかしたら彼女は昨夜、わざとあの高々とした、人に嫌悪感を抱かせる態度を取ることで、王宮内で彼女を監視している間者たちに二人が無関係であると思い込ませようとしたのかもしれない。ただ、彼女を狙うあの毒刃が、ついでにこの凡人の喉まで切り裂いてしまわないようにするために。
もしそうなら……おそらく奏は手を貸して助けるべきなのだ。
「は……はは……」
奏は突如として、掠れた、低い苦笑を漏らした。彼はゆっくりと髪の中から手を引き抜き、力を入れすぎたせいで少し痙攣している指の関節を見つめた。
助ける?何を使って助けるというのだ?
老薬師の言う通りだ。彼のこの身体は、怪物が横行し、権力者が我が物顔で振る舞うこの異世界において、あまりにも脆弱すぎる。彼は広場で大声を張り上げるだけで狂人扱いされて捕まる身なのだ。一体何を根拠に、自分が首を切り落とされかねないあの王室の嵐に参画できるなどと思っているのだ?
長い間考え込んだ末、奏は諦めたように立ち上がった。
彼の瞳の奥の光はこの瞬間に完全に暗転し、もともと張り詰めていた肩が微かに崩れ落ちた。まるで、ようやくこの理不尽な世界に対して妥協したかのように。
「もういい……俺はただの凡人だ、何の能力もない……」
彼は空気に向けて、細く聞き取れないほどの声でひとりごとを漏らした。
彼は諦めたのだ。
その重苦しい無力感は、彼の心の底にあった最後の一筋の、中二病的な「転移者が世界を救う」という幻想を綺麗さっぱりと剥ぎ取ってしまった。彼は英雄になる必要などない。ただ生きていたいだけだ、たとえ泥沼の中で転げ回る犬のように生きることになろうとも。この町を離れず、ただルフィアの件が決着がつくのを待ちさえすれば……。
奏は少し硬直した歩調を踏み出し、真っ直ぐに冒険者ギルドの大門の方向へと歩いていった。
外の太陽の光は少し眩しく、喧騒の街道、パンを叫び売る商人の声、行き交う馬車の音が瞬時に彼の感官へと押し寄せてきた。彼は深く息を吸い込み、あの白髪のクラゲのような三つ編みの輪郭を自分の脳内から完全に消去してしまおうと試みた。
しかし、まさにその時、第一の周回の記憶が脳裏を襲撃した。
――ドォン!
その瞬間、周囲の本来騒がしかった市井の音が、まるで刹那の間に消音ボタンを押されたかのように静まり返った。世界は本来の色彩を失い、一片の刺すような、惨烈な灰白色へと変わった。
彼が大門を踏み出そうとした足が、何かに阻まれた。その感覚は極めて奇妙で、まるで右足全体が何らかのねっとりとした、氷のように冷たい泥沼の中に沈み込んでしまったかのようだった。いくら力を入れようとも、二度と前へ半歩も動かすことができない。
彼の目の前で、景色が突如として歪みを起こした。
それは第一の周回の冒険者ギルドの中だった。空気の中にはまだ劣悪な麦芽酒の酸臭が残留している。一人の、全身に氷冷な気息を漂わせ、粗布の衣類を身に纏いながらもその高貴な気質を隠しきれない白髪の少女が、ぽつんと一人で依頼板の前に立っていた。
あの粗野な冒険者たちは、下品な言葉を使って彼女を嘲笑し、彼女の全ての救いを拒絶していた。
奏は当時の自分を見ていた。傍らで冷淡に立ち尽くしている自分を。
そして、全ての人の前で高傲に背筋を伸ばしていたあの少女が、身体を翻し、唯一声を上げて嘲笑しなかった異郷の人間である彼と面したその瞬間、彼女のあの琉璃のように澄んだ瞳の奥には、突如として熱い、そして絶望に満ちた涙の膜が浮かび上がっていた。
彼は自分の声を聞いた。冷酷かつ理知的に彼女を拒絶したあの声を。「他の人を当たってくれ」と。
それに伴って湧き上がってきたのは、第一の周回においてルフィアが助けを拒絶された時の泣き声だった。
「お願い……助けて……」
ルフィアは当時、涙を流していた。なぜだ?
その声は極めて細く、まるで自らの人格そのものを泥濘の中に踏み砕かれたかのような卑微さを伴っており、生命に対する最後の、絶望に近い乞いとなって、何の前触れもなく奏の鼓膜の深奥で狂ったように炸裂した。
「うっ……!」
奏の瞳孔が激しく戦律した。その突如とした精神的衝撃により、彼の視界は一瞬にして完全にぼやけ、額の青筋が浮き上がり、彼は大口を開けて荒い息を吐き、胸元が激しく起伏した。
ダメだ、ダメだ、考えるな!あれはもう過去のことだ!あの周回で彼女はもう死んだんだ!
奏は歯を死ぬほど食いしばり、それから目を閉じて外へと歩き出そうとした。彼はその目に見えない強大な抵抗に真っ向から抗い、強引に右足を前へと大きく一歩踏み出し、物理的な位置の移動によってこの忌々しい幻覚を吹き飛ばそうと試みた。
しかし、足が踏みしめたのは、まるで目に見えない液体のようだった。
冷たい。ねっとりとしている。そして人に反吐を吐かせるような、濃厚な鉄錆の臭いが漂っている。
奏は下意識に目を開け、視線を落とした。
本来の綺麗な大理石の階段はいつの間にか消失しており、代わりに、一片のじわじわと広がり、温熱な気息を放ち続ける暗赤色の血溜まりが現れていた。
そしてその血溜まりの中央、目の前に現れたのは、記憶にある第三の周回において、ルフィアが全身を麻痺させられて倒れながらも、なお奏と会合するために這ってきたあの悲惨な一幕だった。
あの白髪の少女は身体の半分が劇毒によって腐食され、一面焦げ黒くなっており、彼女の象徴であるクラゲのような三つ編みは力なく血水の中に垂れ下がり、塵土と汚れにまみれていた。彼女の爪は地面を狂ったように引っ掻いたせいで全て反り返って裂けており、いくつもの見るも生々しい血痕を残していた。
しかし、すでに呼吸することさえ過分なほどに虚弱になり果てていながらも、あの瞳だけは未だ彼が身を隠していた方向を死んだように見つめ、最後の力を振り絞って彼の方へと這い寄ってこようとしていた。
「早く……」
「あ……ああ……」
奏の両足の力が抜け、危うくその虚幻の血溜まりの中に直接膝を突きそうになった。彼の顔色は半分も血の気がないほどに真っ白になり、大汗を流し、全身を水の中から引き揚げられたかのように濡らしながら、狂ったように数歩後退し、背中がギルドの大門の堅硬な木枠に重々しく激突した。
奏が再び瞬きをすると、幻象は全て消失した。
太陽の光は相変わらず熾烈で、街道は相変わらず喧騒に満ちており、血溜まりも、惨死した少女もおらず、ただ大通りの上を吹き抜ける、少し熱を帯びた微風があるだけだった。
ただ、奏の収まらない心拍だけが取り残されていた。
――ドクン!ドクン!ドクン!
重苦しい心音の響きが鼓膜の中で狂ったように回帰し、彼の頭を割れるように痛めつけた。彼は自分の胸元を死に物狂いで掴んだ。そこは空っぽのはずなのに、激しく痛んでいた。
そうだ……。
どうして忘れることができるというのだ?
自分とルフィアは、これほど多くの周回を共に経験してきたのだ。
この冷酷で、荒唐無稽で、一人の仲間もおらず、四方に凶悪な人間がのさばる忌々しい世界において、あのルフィアという名の少女だけが、第三の周回で全身を麻痺させる蛇毒に侵されながらも、二つの街区を這って超え、万蟻に骨を噛まれるような激痛に耐え抜いてまで、冒険者ギルドへと戻り、自分ともう一度顔を合わせようとしてくれたのだ。
彼女は、あんな人間ではない。
彼女は約束を守り、情義を重んじる……。
彼女が昨夜見せたあの差別と嫌悪に満ちた視線は、決して彼女の本意などではない。彼女はただ、彼女のあの不器用な方法を使って、全ての危険を一人で背負い込もうとしたのだ。この脆弱な凡人である自分が、この太陽の光の下で、そのいわゆる「第二の人生」を平穏に送り届けることができるように。
「ルフィアは言ったんだ……俺は彼女の新しい仲間だって……俺と彼女は同じ冒険団なんだ!彼女は、俺の仲間だ!」
奏はゆっくりと両眼を開いた。
本来、瞳の奥に充満していた凡人としての懦弱、利己心、僥倖、そして恐怖は、この瞬間にまるで激しい暴雨によって洗い流されたかのように、みるみるうちに亀裂を生じ、そして完全に沈殿していった。
代わりに宿ったのは、一種の神経質に近い、清醒の極みにある狂気だった。
奏はついに悟りを開いた。
「ルフィア……」
奏は契約のために救うのではない。それは……。
ルフィアとの約束のために……。
二人は約束したのだ、一緒に冒険者になるのだと!
クソ食らえ死神、クソ食らえ他人に口外できない契約。あの天使が一体どんな企みを持っていようとも、この世界の根底のシステムがどれほど氷のように冷たくとも、この九世奏がすでにこの命をこの泥沼の中に何度も叩きつけて砕いてきたのだ。
ならば今回の周回において、自分のために足を止め、自分のために一人で死地へと赴こうとするあの白髪の少女が、再びあの氷冷な白色の宮殿の中で、誰にも知られず死んでいくことなど、絶対に許さない。
凡人がどうした?スキルがないのがどうしたというのだ?
時間がまだやり直せる限り、自分が完全に発狂していない限り。
奏はゆっくりと頭を上げ、その少し刺すような太陽の光を迎え、口元を少し歪な、しかしこれ以上なく確固たる弧度へと釣り上げた。彼は身体を翻し、大股で迷いのない足取りで薬店の方向へと歩き出した。
「すべては、まだ間に合う――」




