第一章10 『真相の質問』
首筋に残る幻痛はまだ収まらない。だが奏は、もうその恐怖に構ってはいられなかった――脳裏に繰り返し響くのは、第一の周回であの大男が口にした、あの忌まわしい言葉だった。
「手足を失った」
その一言は、まるで赤く焼けた鉄針のように、彼がこの世界に転移してきた初日から深く記憶の奥底に突き刺さっていた。そして今、暗殺者が姿を現し、銀鱗蛇の毒という真実が引きずり出されたことで、ついにその針が爆発し、彼が抱いていた甘い安堵を一瞬で打ち砕いた。
「もし……もしあの毒液の恐怖が、ただの麻痺じゃなかったとしたら……!」
奏は荒い息を吐きながら全力で走りつつ、心の中で自分を問い詰め続けていた。
銀鱗蛇の毒は、全身を麻痺させ、声を出すことさえできなくさせる。だが、もしその麻痺の時間が異常なほど長ければ、毒液そのものが血肉を侵し、筋肉が長時間の麻痺と血流不足によって徐々に萎縮し、壊死し、最終的に完全に機能を失って脱落してしまうのではないか。
ルフィアの腕にある傷は浅いものだったが、あの小刀の刃に残っていた毒液が確実に付着している。今は何の異常もないように見えるが、もしこのまま放置すれば、明日の朝には、第一の周回で見せつけられたあの四肢を失った死体が、ゆっくりと現実のものとして再現されるのではないか。
「だめだ……そんな最悪の可能性に賭けるわけにはいかない……!」
奏は歯を食いしばった。両足は鉛を詰め込まれたように重かったが、それでも歩みを緩めることはできなかった。視線は狂ったように通りを挟む店の間を探し回ったが、固く閉じられた木の戸はどれも、彼の徒労を無言で嘲笑っているかのようだった。
「頼む……どこか一軒でもいい、開いている店があってくれ……!」
通りの両側には、すでに灯りが消え、完全に夜の闇に沈んだ店が一軒、また一軒と続いていた。昼間あれほど賑わっていた看板も、今はすべて死んだような、生気のない輪郭に変貌している。奏の激しい喘ぎ声は暴走する心臓の音と混ざり合い、この人気のない通りにひどく耳障りに響いていた。
いくつの通りを駆け抜け、いくつの角を曲がったのか、もはや境界も分からなかった。両足はすでに感覚を失い、肺は焼けるように痛んだが、それでも彼は足を止めようとはしなかった。自分が無駄にする一分一秒が、ルフィアの命を、取り返しのつかない深淵へと滑り落としていく一分一秒になるかもしれないと分かっていたからだ。
ついに、街中の薬屋がすべて閉まってしまったと絶望の淵に立たされたその時、彼の足は、狭く暗い路地の前でぴたりと止まった。
あの路地だった。彼が痛いほど知り尽くし、そして最も恐れている、あの呪われた路地。
「ここは……」
奏の瞳孔が、瞬間的に収縮した。これこそが、第一の周回でルフィアが無残に命を落としたあの処刑場であり、今日ルフィアが話していた、あの薬剤師のおじさんがいるという唯一の通り道でもあった。
路地の奥には、ぽつんと灯りが一つだけ灯っていた。古びた木の窓から、湿った石畳の上に頼りない光が漏れている。
そこは薬屋だった。軒先には、奏には読めない奇妙な文字が書かれた木の看板が掛かっており、今もなお、店は静かに開いていた。
奏の呼吸が、その瞬間、完全に停止した。
彼は思わず二歩後ずさった。背中にはいやな冷や汗がにじみ、首筋の幻痛が再びその肌に貼りついたかのようだった。ここはまさに、王室を裏切った可能性が極めて高く、この惨劇の黒幕である可能性が極めて高い、あの薬剤師のおじさんがいる場所なのだ。
「行ってはいけない……これは罠だ……!」
奏の両足は、抑えようもなく震えていた。脳裏には何度もルフィアの顔が浮かぶ。もし今、迂闊にここへ足を踏み入れたら、第一の周回の悲劇がそのまま再演されるのではないか。この路地そのものが、最初から自分のような死を知らぬ侵入者を狩るために仕掛けられた死地ではないのか。
しかし、彼の足は、その瞬間、再び止まった。
この街全体で、灯りが灯っているのはこの一軒の薬屋だけなのだ。
「これ以外に……もう道はないんだ……!」
奏は下唇を強く噛み、血の味をはっきりと感じた。ルフィアの腕からじわじわと滲み出る血、第一の周回で見せつけられたあの四肢を失った死体、そして死の間際に彼女が残した、早く逃げて、という言葉が頭の中で狂ったように渦巻く。
「もし今ここで怖がって引いてしまったら……明日、絶望するのは俺じゃないのか?!」
奏は深く息を吸い込み、自分を丸ごと呑み込もうとするほどの恐怖を、無理やり喉の奥へ押し戻した。
彼は全身の勇気を振り絞り、一歩、また一歩と、灯りの漏れるあの木の戸へとゆっくり歩み寄った。
ギシッ――。
木の戸は、彼が手をかけると同時に、重く長い軋み音を立てて開いた。
薬屋の中には、乾燥した薬草と何かの刺激臭の混ざった濃い匂いが漂っていた。壁には様々な薬草の束がかけられ、隅の棚には大小様々なガラス瓶が並んでいる。瓶の中には色も形も様々な液体や粉末が入っていて、薄暗い油灯の下で奇妙な光を放っていた。
カウンターの向こうには、腰の曲がった、灰白色の髭を生やした老人が、一冊の厚い薬典に顔を埋めるようにして読んでいた。戸の音を聞いて、彼はゆっくりと顔を上げた。
それは、ひどく濁った、しかし何とも言えない深い光を帯びた怪しい目だった。
奏の心臓が、その瞬間ほとんど停止しそうになった。これが、あの薬剤師のおじさんなのか。
老人の視線は奏の全身を一巡した。奇妙な図柄が印刷された見たこともないTシャツから、冷や汗と恐怖と疲労に満ちたその顔まで。最後に、彼の口元に意味深な笑みがゆっくりと浮かんだ。
「こんな時間に……まだ客が来るとはね」
老人の声は低くしわがれていて、何とも言えない含みのある響きを持っていた。まるで、奏がここに来た目的を、最初からすべて見透かしているかのようだった。
「何を探しに来たんだい?」
奏の喉がごくりと動いた。手のひらはすでに冷や汗でびっしょりだったが、引き下がることはできなかった。彼はその恐怖を強引に呑み込み、老人の濁った目を真っ直ぐに見据えた。
「私……『銀鱗蛇の毒』を和らげる解毒薬を探しています」
その言葉が落ちた瞬間、薬屋の中の空気が、一瞬にして凝固した。
老人はそれを聞いて、顔の笑みは少しも消さなかったが、その濁った目の中には、ほんの一瞬だけ奏の身体を完全に硬直させるほどの、鋭い光が走った。
「『銀鱗蛇の毒』……」
老人は低く、その名を繰り返した。その口調には、何かを了解しているような、また何かを揶揄するような響きがあった。奏には、それが単なる職業的な好奇心なのか、それとも事情をすべて知り尽くした上での、隠そうともしない探りなのか判別できなかった。
奏の心臓は激しく跳ね続けていた。彼はすでに脳の中で無数の最悪のケースを想定していた。もしこの老人が今ここで態度を変えたら、どう逃げるべきか、どちらの方向へ走るべきか、次の回帰の瞬間まで耐えられるか。
しかし老人は、それ以上何も言わず、ただゆっくりと立ち上がった。その腰の曲がった姿で背後の壁一面の薬瓶棚へと向き、骨ばった指が瓶の間をしばらく行き来した後、最終的に、目立たない茶褐色の小瓶を一つ、しっかりと取り出した。
「持っていきなさい」
老人はその薬瓶を、そっとカウンターの上へと滑らせた。瓶にはすでに少し黄ばんだラベルが貼られ、奏には読めない文字が乱雑に書かれていた。
奏は呆然とその薬瓶を見つめ、なかなか手を伸ばそうとはしなかった。
彼の頭の中は、めまぐるしく回転していた。この劇毒は、ルフィアの話によれば王国全体でもごく数人しか持っていない代物だという。そんな稀少で致命的な毒物の解毒薬が、こんなにも簡単に、こんなにも無造作に、ただの街の薬屋の棚に置かれていて手に入るものだろうか。
これはあまりにも、簡単すぎる—?
「これは……」
奏は唾を呑み込み、声が震えるのを抑えられなかった。
「本当に……解毒薬なんですか?」
老人はそれを聞いて、低い笑い声を漏らした。その笑い声には、少年の疑心暗鬼を見透かした後の、楽しげな響きがあった。
「お前さん、この毒が、四肢を腐らせ、骨肉を萎縮させるものだと思っているのか?」
奏は全身を震わせた。彼は思わず小さく頷いた。脳裏には再び、第一の周回で見せつけられたあの四肢を失った死体が浮かび、その恐怖は、彼がこの薬屋に足を踏み入れた瞬間から一度も消えたことはなかった。
老人はただ首を振り、皺だらけの顔に、どこか無力な苦笑を浮かべた。
「『銀鱗蛇の毒』は、確かに劇毒だ。成体の象を麻痺させるのにも十分すぎるほどだが――しかしこの毒は、あくまで麻痺の毒であって、血肉を侵し人を肢体腐敗させるような邪悪な呪毒ではないよ」
老人はそう言いながら、その薬瓶を奏の方へさらに押し寄せた。
「中毒した後、全身が麻痺し、確かにその苦痛は耐え難いものだがね。ただ鎮痛の丸薬を数粒飲み込みさえすれば、その数時間の激痛を耐え抜き、毒性が自然に抜けるのを待てば完全に回復できる。不可逆な後遺症など、決して残らないさ」
奏はその場に立ち尽くした。その言葉は、まるで一筋の雷のように、彼の脳裏に深く根付いていた毒に関する恐怖の霧を、一瞬で切り裂いた。
もし、銀鱗蛇の毒自体が、肢体の欠損や壊死を引き起こすものではないのだとしたら。
それなら、第一の周回で、あの暗い路地に倒れていた、両手両足を失ったルフィアの、あの不完全な遺体は――一体何が原因だったのか。
奏の呼吸が、急に激しくなった。一つの、極めて恐ろしい、しかし異様にはっきりとした答えが、彼の脳裏で轟然と爆発した。
毒でないとすれば、残る可能性は一つしかない。
あの手足は、最初から毒液に侵されて壊死し脱落したのではない。あの小刀を持った暗殺者の手によって、生きたまま、一刀一刀、切り落とされたのだ。
奏の顔色は、その瞬間、完全に紙のように白くなった。
彼は今夜の戦いを思い出した。暗殺者が軽々と口にした、正体を特定できる生き証人は誰一人残してはならない、という言葉を思い出した。暗殺者が月光の下で見せた、冷たく光るあの目を思い出した。あれは単に命を奪うためだけの殺意ではなかった。あれは明らかに、ある種の残酷な興味を帯びた、意図的な拷問だったのだ。
なぜ、すでに毒で完全に麻痺し、抵抗する力すら奪われた人間の四肢を、わざわざ切り落とす必要があったのか。
それは、何らかの残酷な見せしめのためだったのか。それとも、ルフィア自身も気づいていない、何らかの秘密を、彼女の肉体から拷問によって問い詰めるためだったのか。
「小僧、お前さんの顔色は、入ってきた時よりもひどくなっているじゃないか」
老人の声が、奏をその、彼を完全に呑み込もうとしていた暗い思考の深渊から、急に引き戻した。
奏は思わず顔を上げた。背中はすでに冷や汗でびっしょりだと分かっていたが、老人の前で、わずかな異変も見せるわけにはいかなかった。彼はまだ、目の前のこの老人が、本当にただの薬剤師なのか、それともすでに暗殺者と密かに結託している本当の黒幕なのか確信が持てなかった。
「何でも……ありません、ただ少し驚いただけです」
奏は無理やり声を落ち着かせ、手を伸ばした。わずかに震える手で、鎮痛丸薬の入った茶褐色の薬瓶を、しっかりと手の中に握り込んだ。
「いくら……いくらですか?」
老人は手を振った。その濁った目に、再び意味深な笑みが浮かんだ。
「いらないよ、こんな大したものでもない。お前さんへのプレゼントだ」
「ただ――」
老人の言葉が、ふいに止まった。その年老いた目が、急に鋭さを帯び、奏の両目をじっと見据えた。まるで彼の全身をすべて剥ぎ取って見透かそうとするかのように。
「教えてくれ、坊や。お前さんがこんなに必死に解毒薬を探しているのは、誰のためだ?」
奏の心臓が、ぎゅっと縮んだ。その問いに込められた深い意味に、全身の血が、その瞬間凍りついたかのようだった。
「……友人のためです」
老人はそれを聞いて笑い、顔を背け、無造作に手を振って、奏に去るよう促した。
奏は言われるままに去ろうとしたが、手の中の薬瓶を見つめ、老人への疑いを抱きながら、ルフィアにこの怪しい薬を飲ませる勇気が持てず、再び振り返った。
老人は奏のその躊躇いに気づき、顔から笑みが消え、驚きと興味の表情を浮かべた。
「どうした?俺を疑っているのか?」
「はい」
奏のそのあまりにも真っ直ぐな返答に、老人はふっと笑った。
「なぜだ?」
「あなたは――」
老人は急に真面目な顔になった。
「俺が聞きたいのは、お前さんがなぜそれを知っているのか、ということだ。なぜあの路地に危険があると知っていた?なぜ王女が来るのを止めた?なぜ王女のそばに現れた?なぜ首当てを買った?なぜ今夜暗殺者が来ると知っていた?なぜ俺を疑う?」
その突然の連続した問いかけに、奏は自分の一挙一動が、すでにこの老人の目にすべて映っていたことを悟った。この老人がただ者ではなく、この事態に深く関わる怪しい存在であることは、もはや否定できない事実だった。
奏は長い間考え込み、最後に深く息を吸い込んだ後、ほとんど自滅的とも言える答えを口にした。
「全部、俺の勘です!」
次の瞬間、老人は両手に思わず力を込め、持っていた厚い薬典をバリリと引き裂いてしまった。しかし老人はすぐに冷静さを取り戻し、魔法でその薬典を元の綺麗な状態へと修復した。
「これは予想外の答えだな……面白くない答えだ。よし、お前は何を聞きたい?俺は二つの問いには誠実に答え、一つの問いには嘘をつくとしよう」
奏は頷き、努めて背筋を伸ばした。
「一足す一は?」
「二だ」
奏は理解した。
「二足す二は?」
「四だ」
奏は笑った。
「あなたは私の敵ですか?」
老人は思わず思考が止まり、困惑した顔で奏を見た。まるで目の前を歩く本物の阿呆を見るかのような目で。
「お前は、俺のこの答えが自動的に嘘になると分かっていながら、それでもそんな問いをするのか?」
「嘘こそが、真実を見分ける最良の手段だからです」
奏は確信を持って老人の両目を見据えた。
老人は無力げに、ふっと笑った。
「賢い坊やだ。答えは『敵だ』。俺はお前の敵だ」
その答えは、極めて簡単に一つの事実を示していた。もし老人がこの問答の規則を厳格に守っているのなら、老人の出した最後の答えは嘘。つまり、彼は敵ではない、ということだ。
「よかった!ありがとうございます!」
奏は言い終えると、老人に向かって深くお辞儀をし、すぐにその場から走り去った。
「本当に面白い子だ……」
老人は思いに沈みながら、奏が去っていった暗い方向を、いつまでも見つめていた。




