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第8話 『キメラ』

 私は地下鉄の『処刑人』と対峙していた。ミアによると、この気味が悪いヤツは『合成獣(キメラ)』禁断の実験の成れの果てだとか。


――ヒュンッ


 キメラが予備動作なしで、突っ込んできた!


「……っ!」


 完全に関節の稼働(うご)きを64した動き。キメラは予測困難な動きで、私を翻弄した。捌くのが精一杯で、これではパリィも狙えない。

 一進一退の攻防が続く。僅かでも気を緩めれば、確実に8られる。キメラは出鱈目な動きで、的が絞れない。


「――交差刃(クロスカッター)っ!」


 キメラは常軌を逸した跳躍で、交差刃を回避。アレを避けるっ⁉ カウンターをもらい、私の胸部から血(?)が噴出した!


「ぐっ……⁉」


 私は距離を取って、烙印(スティグマ)で回復を図る。キメラはキョロキョロしていた。もしかして見えてない、(ある)いは視力が極端に弱い……?

 私は左手から『雷撃(スパーク)』を放った。下水を這って、閃光がキメラを捉えた! 効いてる……この機を逃す手はない!


 私は正面から、致命的一撃(ファタールヒット)をお見舞いした! キメラはまだ動ける……見た目はスカスカだが、存外にしぶとい!

 キメラは半狂乱となり、前肢の鎌を振り回す。『処刑人(エクスキューショナー)』は窮地になると、狂化(バーサク)状態になる。


 こちとらパイプ兵で、学習済みだ。それに規則正しい攻撃(リズム)は、タイミングを取り易い。

 私は左手のグローブで鎌をパリィして、トドメの一撃を放った。キメラは身をくねらせ、やがて黒い塵と化した。


「……最後まで、気持ち悪いヤツだったな」


 私は吐き捨てるように呟いた。出来れば、対戦を拒否したいくらいだ。さっさと次に進もう。


 ◇ ◇ ◇


「そろそろ終点みたいね」


 相当、地下鉄を歩いた。際限なく湧き続ける黄泉人、警備兵を処理しながら。それももう終わる。私が『セーフティ』で休息していると……

 ピピピ……ミアから通信が入った。珍しいな、向こうから連絡してくるなんて。


『リア、そろそろ地下鉄を出る頃ね? ただスラム街に抜けるには、試練を避けて通れないわ』


「試練……?」


 私は訊き返す。通信にはGPSが備わっていて、ミアは常に私の居場所を把握している。


『そう。これから貴女が、戦い抜けるかという試練ね。今まで以上に手強い敵だけど、見返りも大きいわ。貴女は今以上に強くなれる』


 要するにここで苦戦するようでは、これから先は厳しいってことね。上等じゃない。


「ミア、私のやることは変わらないわ。何が待ち受けていても、私は乗り越えてみせる」


『迷いはなさそうね? 健闘を祈るわ、リア』


 ミアも私への態度が、軟化している。最初はもっと事務的だったのに。いこう……『私自身』を知る為に。

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