第69話 『アルティメットリア』
「私が世界を救う……?」
『そうだ。お前と莉愛は、人類最後の希望。AIを止められるのはリア、お前しかいない』
「………………」
急にそんな事を言われても……私は戸惑った。ただ……
私は『これまで』ずっと、記憶を求めて戦ってきた。けど、それは私の記憶ではなく、莉愛のものだった。正直、落胆した。私は今まで、『なんの為』に戦ってきたのか。
――それでも
再会したミア、途中で出会ったエミリーやサラ、それに地域のみんな。どれも私にとっては、掛け替えのないものだ。
『AIの暴走を停めた後は、お前の好きに生きたらいい。リア……お前だけが頼りなのだ』
好きに生きろって言われてもね……まず私が成すべき事は、女神一派を止めること。莉愛やミアも気になるしね。
間もなく、『最終更新』も終わりそうだ。高田のホログラムも薄れている。聞きたい事があるなら、今のうちだ。
「リサ姉さんについて、訊いていい? ついでに私が戦った幼い少女についても」
『…………っ!』
私の問いにドクターは、やや戸惑った。
『……分かった。お前には知る権利がある。私には“三人”の娘がいた。上から理彩、莉愛、そして璃来だ。次女の莉愛は知っての通り、人工冬眠についた。長女の理彩はその時、私と一緒にいて……』
ここでドクターは言い淀んだ。
「ムリに話さなくていいわ」
『いや……私自身、ケジメをつけたい。莉愛を人工冬眠させたはよかったが、護り手がいなかった……。理彩は……私が莉愛を護ると宣言し、自らの意思で私に人工生命体に改造してくれと懇願した……』
え……? 人間からAHになるなんて、可能るの……⁉
『……当然、私は猛反対した。こんな事例は前代未聞だし、何より大切な長女を改造するなどという外道なマネは……。だが、理彩の決意は固かった。誰が莉愛を護るのだと』
それなら、あの異質な強さも納得できる。
『……最終的に私は折れて、急ピッチで理彩に改造を施した。襲撃の際、流れ弾が当たって精密には出来なかったが……』
「……自分の負傷を省みず、姉さんを改造したのね。早期治療すれば、助かったかもしれないのに」
『私は助かろうなどと、微塵も思わなかった。娘たちの痛みに比べたらな。理彩の改造が完了し、私は力尽きた。あのコは私に言ったよ。“父さん、後は私に委せて”とな』
「………………」
リサ姉はそんな経緯で、『セラ』になったのか。莉愛が目覚めるまで、孤独で戦い抜いたのだろう。何年も何年も……
「リサ姉については分かったわ。リラは?」
『リラは……あのコは幼い頃から、体が弱くてな。14歳の誕生日を迎える前に亡くなった……』
……ぁ……
「ごめんなさい」
『いや……いいんだ。リラを創ったのは、完全に私のエゴだ。お前のバックアップにする予定だったが、またAIが誤判定してずっとドームで“待機”していた』
ってことは、リラと『共闘』してた可能性もあったって事ね。ドクターはチラリと腕時計に目を落とした。
『さて……そろそろ最終更新が終わる頃だ。お前は“究極のAH”として生まれ変わる。この世界の行く末は、お前に掛かっていると言っても過言ではない』
「随分、責任重大なことを押し付けるのね。まぁいいわ。私がやらなきゃ、あのコらも報われないし」
『それは重々承知している。リアよ、今まで辛い思いをさせて申し訳なかった。もう少しだけ踏ん張ってくれ』
プシュウウウウ……ちょうど最終更新が終わり、カプセルが開いた。一見『前』と変わらないが、体の奥から力が漲ってくる。
これが潜在能力を解放した『真の私』
同時にドクターの姿も消え掛かっている。
『……リアよ。最後に一つ、私の“ワガママ”を聞いてもらっていいか?』
「どうせ最後だし、言ってみなさい」
『……たった一度だけでいい。“父さん”と呼んでくれないか?』
ドクターは莉愛の父親だが、私にとっても『生みの親』には変わりない。私は「分かったわ」と深く頷いた。
「おやすみなさい……父さん」
それを聞いたドクターは、満足そうに消えていった。人類と人工生命体の『共存』を切に願った『孤高の天才』は、その激動の生涯を静かに終えた。
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