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第68話 『ドクター』

『久し振りだね、リア』


「……………………」


 高田(ドクター)に対して、私は思わず身構えた。こうして直に会うのは、あの『災害』以来か。(もっと)も当時の私は、ちょうどこの部屋にあるカプセルの中にいたが。


『そう構えなくてよい。私はお前の敵ではないのだから』


「……信用できないわ」


 私がそう呟くと、ドクターは一瞬だけ悲しむ顔をした。


『……そう言われても、私には弁解の余地がない。私がもっと警戒していれば、このドームを襲撃される事はなかった』


「そういう話をしてるんじゃない。貴方は『少女たち(あのコら)』を見殺しにした……!」


『…………』


 私の静かな怒りに、ドクターは黙った。やがて、重い口を開いた。


『……今さら何をどう取り(つくろ)ったところで、言い訳にしかならないだろう。ただ、これだけは信じてほしい。あのコらは、決して失敗作では……』


「――嘘だっっ」


 私の怒り爆発、ドクターは何も言わなかった。ただ目だけは、私から逸らさなかった。


「じゃあなんで『廃棄』したのっ⁉ あのコたちだって、最後まで必死に足掻いたっ」


『違うんだ、リア……聞いてくれ。これには深い事情がある。もし私の言うことが信じられないなら、制御装置を完全に破壊してくれ』


「………………」


 そこまで言うのなら、話くらい聞いてあげるか。ドクターは長話になるから、私に『カプセル』の中に入れと促した。


 なんでも私の『最終更新(アップデート)』をしたいとか。私は少し戸惑ったけど、大人しく従った。カプセル越しでも、会話は可能だ。


 ◇ ◇ ◇


『さて……どこから話したものやら。私と友人の橘は、次期AIを開発していた』


『橘』というのは、ミアの苗字だ。つまり、彼女の『父親』に当たる。


『ところが……某国が我々の技術に介入してきて、特殊部隊がドームに侵入した。今でも悔やみ切れない……』


「それでハッキング式にしたのね」


 私にドクターは、「ああ」と答えた。


『……リアが見た少女たち。彼女らは元々、平和利用の為に創ったのだ。救助、医療、復興活動などのな。ところが中枢の制御装置が破壊され、AIが暴走してしまった……』


「………………」


 (あなが)ちウソじゃない。世界中のAIが暴走した事で、一気に非日常に突入した。


『暴走した回路は、少女らを基準に満たないと判定し廃棄し始めた。私が止めるべきだったが、莉愛を護る為にそこまで手が回らなかった。少女(あのコ)らには、本当に申し訳ない事をした……うぅ』


 恐らく『本心』だろう。ホログラムにも関わらず、ドクターは嗚咽(おえつ)を漏らした。


「それで? 私にどうしろと?」


『……最終更新が終われば、お前は本来の力を取り戻す。リア……お前には、世界の修復を頼みたい。そうすれば、制御装置は正常に回復しAIの暴走は停まる』


 世界の……修復


『……勿論、私に頼み事をする資格などない。だが、それでも頼む! もうお前しかいないのだ。この世界を救えるのは……!』 

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