第65話 『私たち』(ホラー注意)
「――やめてっっ」
管制室に響く声は、意外にもミアだった。
「……ミア殿。なぜ止める?」
「……一応、莉愛と同じ顔だからね」
ミアはそれだけ答えた。セラは忌々しそうに私を見た。
「命拾いしたな。まさか私が『標的』を二度も逃すとは」
助かった……? まさかミアが私を助けてくれるなんて。安心したのも束の間だった。
「誰が『タダ』で還すと言った? 貴様には、『死』より過酷な現実を与える。『奈落』で己の正体を知るのだな」
何を言って……考える間もなく、私の体は宙に放り出された。一瞬ミアと目が合ったけど、彼女はすぐに目を逸らした。
ミア……貴女の『本心』は一体? 私は高いドームから、深い穴底へと墜ちていった……。
◇ ◇ ◇
どれくらい経っただろうか? あまりにも長く墜ちているより、『浮いている』感覚だ。
どこまで墜ちるの? 『私』は一周回って『誰』なの? 『RTypeX』って……うっ、頭が!
ドボーーーンッッ‼ 私の思案は強制的に中断された。どうやらここが『終点』みたい。私は思いっきり、プール(?)にダイブした。
「――ケホっ、ケホっ、うぅ……」
私は激しく咳き込みながらも、なんとか起き上がった。朱く染まった両手……えっ⁉ まさか辺り一面が『血』なの……⁉
私は慌ててデータベースに照合してみたけど、どうやらこれは血液によく似た液体みたい。少しは安心したけど、全身がベトベトであまりいい気分じゃない。
とりあえず、ここから脱出して早くスーツを新調したい。けど、足が思うように動かない。最初はぬかるみに足を取られたと思った。けど、『実際』は違った。
思いっきり足を引っこ抜くと、『何か』に掴まれていた。よく見ると、それは『ヒトの手』だった……
「……っ⁉ いやぁああああっっ」
私は本能的に『手』を蹴飛ばした。身震いが止まらない……黄泉人とも違う。そもそも『ここ』は何なのっ⁉
――ボコッボコッッ
プールから次々と這い出てくる『異形』所々ボロボロだが、私は『それ』を見て呆然となった。その『顔』には見覚えがある……というか、間違えるわけがない。
何故なら、起き上がった者はいずれも『私』だったからだ……
「――いやぁああああああああああああっっ」
私は絶叫した。何なの……質の悪い冗談はやめてっ! 『私たち』は、亡者の群れのように私に迫った……!
さらにプール全体に、無機質な音声が流れ始めた! それは耳を疑う内容だった。
――No.2026 失敗した 廃棄
――No.2027 失敗した 廃棄
――No.2028 失敗した 廃棄
――No.2029……
「……………………」
なんてことだ……ここに居るのは、いずれも『私』に成り損ねた存在。いかに高田が天才とはいえ、数多の『失敗』を経て私に至った。
延々と続く音声。こっちの頭がおかしくなってくる……!
――失敗した
――失敗した
――失敗した
――失敗した
――失敗した
――失敗した
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「――やめてぇええええええええええっっ」
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