第31話 『遠征』
「………………」
私はゆっくりと目を開けた。自身を確認するも、特に異常はない。だが、『斬られた』感触は残っている。
チン…サラの納刀する音だけが響いた。
「今の拙者の太刀、見切れたか?」
「……四連までなら、なんとか」
私は正直に答えた。サラは一つ、納得したように頷く。
「合格だ」
「…は?」
私は面食らった。いきなり何を……?
「今のは風林華閃・序……八連激だ」
恐ろしい事をサラリと言う。まだ太刀筋を二回も残しているの?
「それで? 考えは変わったか? 悪いようにはしないが」
淡々と述べるサラ。余計なことは言わないタイプらしい。私とエミリーは、顔を見合わせた。
「……一つだけいい? 貴女が所属する『大聖堂』は、私たちと敵対する意思はないという認識でいいかしら?」
「それは貴女ら次第だ。それにリア、大聖堂のリーダーは貴女の父親とは旧知の仲だ」
……なんですって?
私はサラの顔を覗いた。ウソを吐いてるとは思えない。
「……何故、貴女がそれを?」
「リーダーが拙者の身内でな。女神一派に関する情報も多い。それに自身に関しても、知りたいのは山ほどあるだろう?」
こちらが『断れない』カードを次々と出してくるサラ。強さだけではなく、交渉にも長けているようだ。
「分かったわ。行くだけ行くのもアリかもね」
「……ちょっと、正気なの⁉」
エミリーは反対したが、何より必要なのは『情報』だ。それにサラだって今は『中立』だけど、どう転ぶか判らない。
私はサラと今後の段取りを決めて、この日はひとまず解散となった。
◇ ◇ ◇
――ガタンゴトン
私は地下鉄の列車に揺られていた。少し前まで壊滅状態だったが、ここまで復旧していたなんて。改めて『大聖堂』の影響力を垣間見た。
「てか、この列車揺れすぎじゃない? 前時代じゃないんだからさぁ」
「なぜ貴女がここに……って訊くだけムダね、エミリー」
私の正面に座っているエミリーは、あれこれボヤいていた。
「え? なんか言った?? このエミリー様が手伝ってあげるんだから、感謝しなさいよね」
大方ヒマなのか、オズに手伝わされるのがイヤなんだろう。まぁ戦力として、数えられるからいいんだけど。
――ガシャーンッ!
列車がアナウンスもなく、乱暴に停まる。大勢乗っていたら、ケガ人が出てただろう。エミリーが、ボヤきたくなるのも分かる。
扉が開き改札を抜けた私たちは、思わず息を呑んだ。そこには、全くの『別世界』が広がっていたからだ。
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