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keepAlive  作者: かけ座布団


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10/38

Ep.1-10 これから

決着の後の展開は早かった。

キョウとキリはこの町を引き上げることを決め、すぐに旅支度を済ませた。

エコ達は一度宿に戻ったものの、二人を見送りをするハナに付き添うため、息つく暇もなく町外れまでとって返すことになった。

街道の片隅、人通りの邪魔にならない場所ではキョウとハナが話し込んでいる。

「ハナ様が元気でやっていると、姉君にも伝えておきますね」

「……うん。ありがとう」

「いずれまた様子を見にきます。それまでは、時々でいいので手紙を出してくださいね」

「うん」

エコとベルは手持ち無沙汰だ。で、リッカはというと――

「くれぐれもハナ様を頼むぞ」

「おう」

「いいか、ハナ様は目を離した瞬間に見失いかねん。常に注意を払え」

「お、おう」

「あとは――」

なぜかキリに熱心に話しかけられている。

あまりに熱心すぎてリッカは戸惑っているものの、嫌がっている様子はない。

さっきまでの戦いはなんだったのか。あれだけやり合って何の確執もないらしい。

なんて単純な奴らだろ。エコは思った。


会話の時間は長く続かなかった。特にハナにとっては、あっという間の時間だっただろう。

家出中の身であっても、家族同然の人間と会って、また別れるのは、きっと軽い出来事ではない。

「では、またしばらくの間お別れです」

「元気でね。キョウ、キリ」

「ええ。ハナ様も」

キョウとキリが背を向ける。

と、キョウだけが足を止めて振り返り、ハナに何かを囁いた。

(ハナ)

(……キョウ?)

(ハナにとって良い相手が見つかったら教えてくださいね)

(キョウ!)

……。

囁き声でも聞き取れてしまったのは、エコがハ(・)ナ(・)の(・)事(・)情(・)を知っているからだろうか。

エコの隣にいるベルや離れた場所にいるリッカが、キョウの言葉に気付いた様子はない。

リッカとベルはまだ、ハナが家出していること、それを認めさせるために戦ったことしか知らない。

(詳しいことはハナと相談して、いずれベルにも伝えよう)

(リッカは……うん。まあ、当面は先でいいかな)


二人の姿が完全に消えるまで見送るハナの後ろ姿を、みんなで待っていた。

沈黙がなんとなくむず痒い。

「ま。これで一件落着だね」

わざとらしいかもしれないけれど、エコはあえて口に出してみた。

じっと彼方を見つめていたハナが、突然振り返った。

「みんな!」

振り返ったハナが、その勢いのまま飛びついてきた。リッカとベルも巻き込んで。

「ちょ――」「おわっ」「にゃっ」

泣きそうな顔のハナが、ぎゅっとみんなを抱きしめる。

「みんな、本当にありがとう!」

街道を歩く人の目が少し恥ずかしくて居心地が悪い。けれど、エコ達はハナが満足するまでずっとそうしていた。

(……本当に良かったと思う)

(ハナと出会えて、また冒険を続けられて、良かった)

(で。リッカ)

(不可抗力とはいえ、どこを触ってる)

ハナがみんなを放した後、エコはリッカに蹴りを入れてやった。


――いつもの食堂。いつものように、夕食より少し早い時間から駄弁っている。

ただし、これからは四人だ。

話題の中心は、一度中断していた、次の冒険の行き先についてだ。

いや、少なくとも最初はそうだった。素材系の資源(リソース)を狙うのはどうかというところから次第に話が逸れ始め、今はベルとリッカが防具について熱く語っている。ハナはもっぱら聞き手……もとい、驚き手?に回っている。

これはこれで楽しそうだからいいけれど。

エコはそっとテーブルを離れ、カウンターにいた給仕のところへ。

「リーナ」

「あら、エコ。どう、調子は?」

「悪くはないよ」

「なら良かった。スープしか注文しなかった時は心配してたのよ」

彼女、リーナはテキパキと手を動かしながらも、よく話を聞いてくれる。

パーティの愚痴が話せる数少ない相手だ。

「今は大丈夫だけど……でも、もう大変だよ。リッカはよく暴走するし、お金はすぐなくなるし……色々決めなきゃいけないし……」

「あら、リーダーしてるじゃない」

リーナは店に入ってきた客に手を振った後、いたずらっぽく笑った。

「たった三人や四人のパーティのリーダーでも、こんなに大変だなんて思わなかったよ……」

「そんなこと言わないの。ほら。これサービスだから☆」

リーナはウインクをして、さっきまで用意をしていた飲み物を置いてどこかのテーブルへ去っていった。

「……お客さんに出す分じゃなかったんだ」

リーナは本当に気が回る。活力に溢れていて、明るくて小さくて可愛い。まるで星みたいだ。

あんな子になりたい。なれないけど。

ため息が出る。けれど、ないものは仕方ない。みんなのところに戻ろう。


席を離れている間に、話題は装備の話からまた素材の話になり、どうやら冒険の行き先の話に戻ってきたらしい。

「火山の方とかどうかなって。鉱石がよく取れるらしいし」「火山!」

「素材集めには良いって言うよな。他は、……骨とか?」「骨!」

「防具には骨もいいって聞くね。どっちがいいんだろう」

「火山じゃないか? 鉱石を売れば骨より稼げるだろ。……お、エコ。どこ行ってたんだ」

「……ちょっとね。飲み物もらってきたよ」

「あ、ありがとう」

ベルがテーブルの上を整理し、リーナは空いた場所にリーナからもらった飲み物を置いた。

「ねえエコ、聞いて聞いて。骨だけなのに動く生き物がいるんだって」

ハナは腕をぶんぶんと振って驚きを表現している。

「……動く骨もいるし、逆に肉だけで動くのもいるよ。……まあ生きてないから生き物じゃないんだけど」

「不思議!」

もう落ち込んでいた時の面影はない。最初に会った時のハナだ。


食事をとり、他愛ない話題を挟みながら、目的地を絞り込んでいった。

有力な候補は、火山帯のどこかかと、骨が出没するエリア。どちらにするか、具体的にどこに行くかは、ギルドにある依頼(クエスト)次第で決める。

そこまで決めた時だった。

エコはふと、思いついた。

「そうだ。ちょっと他に決めたいことを思いついて」

みんなが注目する。

「あたしたちの、パーティの名前を決めよ」


この話し合いは冒険の行き先以上に結論が遠く、何日にも渡って話題の中心になった。

けれど、そうして決まった名前で、エコ達は四人組のパーティとして名を上げていくことになる。

それはもう少しだけ先の話だ。


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