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第11話 マリアのやっていた事がヤバい!

10.5話にしようか迷いましたけど、割と本編なので11話という事で

10話と同時掲載ですので、読んでいらっしゃらない方はそちらから読んで頂けると幸いです。

  時はマリアが消えた直後へと遡る。


(私は第1闘技場にいるわぁ。捕まえてごらんなさぁい)


 メアの声が直接、頭の中に響くように聞こえた。

 結局、彼女が転移したのは本棟などでは無かったのだ。


 本棟からおよそ3kmほど離れた所にある第1闘技場。

 今日は風が強いのだろうか、その中心に舞い降りた彼女はツインテールを激しく靡かせながら辺りを見回す。砂以外不純物の一切ない大地、1km程奥には高さ5mはあろうかと、円を囲むように大きく堅固な壁がこの闘技場を囲んでおり、薄っすらと蒼く発光したそれは、既に防御魔法陣が起動されている事が伺える。

 壁の上に設置された観客席には一切の人影が見えない。


 先生は何処へ行った……?


 そんな思考と並行しつつ彼女はもう一つの思考に耽る。ここに来ると前期の最終日、最終試合、最後まで勝利を諦めず何か勝つ方法は無いかと模索し、最後まで力強さを失わなかった彼の瞳を思い出す。怯えは無かった、震えの無い真っ直ぐな瞳を見たのはいつ振りだっただろうか。


(あの勇者くんでも思い出してたのかしらぁ)


 最初と同じで発信源が全く分からない。

 まるで脳へ直接語りかけられているような錯覚へと陥る。


「わざわざ来て差し上げたのですよ? 姿を表したら如何でして?」


 いいわよぉという声が脳内に響くと同時、霧が発生し、マリアの目の前でゆっくりと霧が集まるように彼女を構成してゆく。

 輪郭がはっきりとし、完全に現れた瞬間


「《永久凍土(エターナルプリズン)》!!!」


 タイムラグほぼ無し、回避不可且つ必殺の爆風が全方位へと撒き散らされる。

 風に当たれば一瞬で凍てつき、術者が許さぬ限り、決して溶ける事ない氷土が闘技場を覆う。


「かの邪神サタナイエル必殺の魔法。

 ここまで完璧な再現だと最早マリアちゃんが邪神そのものじゃないかなんて思っちゃうわよねぇ」


 が、その程度で負けるメアでは無い。

 服に氷は付着しておらず、完全に避られたと見ていいだろう。


「……少しだけ、本気を出して差し上げます」


 身体強化は全魔力の半分程度を回す。

 ……その数値およそ10万、既に彼女の身体能力は《竜人族》や《獣人族》すらも追随を許さぬほ、住む世界が違うと言っても過言では無い。


 砂埃すらも動かぬ、1秒を100万で分割した、いや最早時間の停止した世界に住まう彼女はゆったりとした足取りでメアに近づく。


 マリア以外は動く事の許されない絶対の世界、メアのしなやかな首を優しく手のひらで包み込むように添え、身体強化を5000程度まで減らす。


 メアでも認識できるようになった世界で彼女へと語りかける。


「貴方がどれだけの強者であろうとわたくしに勝つ事は出来ませんの。チェックメイトですわ」


 メアは一切動じない。

 突然マリアが目の前に現れ、首を折られる直前であると言うのにだ。


「あらぁ、やってみなさぁい? 私は()()()()()()()からぁ」


「ならお言葉に甘えさせて頂いて」


 首を折ろうと力を入れた瞬間、メアの首をマリアの手がすり抜ける。


「っ!!!」


 完全に想定外の事態。時間停止し、距離を取る。


「はぁ、はぁ、はぁ」


「流石マリアちゃんねぇ、小細工なしの単純強化でそこまでの密度を完成させるなんてぇ。でもぉ、それって身体の負担が大きすぎて連発するような物じゃ無いんでしょぉ?」


 唇に人差し指を当て、挑発するように、いや実際に挑発しているのかもしれない。

 事実彼女は慢心していた。

 実力者であると分かっていたが、まさかすり抜けるなんていう反則技を持っているとは思っていなかった。


 時間停止はノーリスクでは無い。 身体に相当の無理をさせているのだ。もちろん脳にも相応の負荷をかけている。

 実際は使っても彼女の体感で10秒が限界のような魔法、普段は緊急回避として残しているのだが、即座に潰そうと思った彼女の慢心が最高級の手札を無意味に切らせてしまった。


 すり抜けの原理すら分からないが、幸いメアは弓を持っていない。

 つまりは未だ攻撃意思が無いと言う事だ。

 ならばどうにかして時間を稼ぎ、解決の糸口を見出すまで


「そういえば先生が本棟にいなくてよろしいのです? いない事がバレたら貴方の信用はガタ落ちの筈ですけど」


「あらぁ?私は向こう()()いるわよぉ?」


「つまり貴方は2人いるとでもおっしゃりたいんですの?」


「たった2人しか居ないと思うのかしらぁ?」


 正に売り言葉に買い言葉、マリアが揚げ足を取ろうに逆に取られてしまう。

 すり抜ける魔法と複数人いる事は繋がるのか、どちらにせよ明らかに精霊魔法の範疇を超えている。

 勝てないならば角度を変えてみるか


()()()()()()()()は精霊も捨てたのですの?」


「んー? 元々《エルフ族》は()()()()()()()()よぉ? 妖精様……いいえぇ、レティシア様はあくまで唯一無二の存在よぉ」


「妖精を様付けですか……彼女が大罪人であるということはご存知でしょうに」


「そんなのマリアちゃんの方が良く分かってるじゃなぁい。あの方は本来私達人類が被らなければならなかった罪を一身に背負ってくれたのよぉ? だからこそ貴方たち王族は連合名にあの方の名を刻んだのでしょぉ?」


 この女一体どこまで知っているというのだ

 レティシアの罪の真実など王族でも極一部にしか知らされていないような情報だ。

 見事に流され、次は何を言おうかと悩んでいると今度はメアから話し始めた。


「ねぇマリアちゃん? どの物語も主人公は《ヒト族》だったわぁ。その理由が気になって100年くらい旅をしたのぉ。 結局わかんなかったんだけどねぇ、いろんな物を見てきたわぁ。こんな私でも受け入れてくれた人はいたわぁ。だからねぇ、これだけは覚えていて欲しいのぉ、世界は貴方を受け入れてくれるわよぉ」


 その言葉がマリアに届くことは無い。


「わたくしは、いいえ、そう、貴方とわたくしは違いますわ。

 申し訳ありませんが、それはありがた迷惑ですわ」


「ううん、貴方は昔の私と全く同じよぉ。 さぁ、続きを始めましょうかぁ、今の貴方じゃ私に触れる事すら出来ないわぁ」


 何もない空中から弓を取り出す。装飾など何もない、ただ気を曲げただけのような質素な弓。

 とても彼女ほどの実力者が持つような弓とは思えない。

 だがしかし、ただの弓とはいえ弓は弓だ。《エルフ族》が弓を向ける。これ即ち敵と定めたということ。

 魔力で形成された淡いエメラルド色の矢を継がえる。


「その魔法、解析させていただきますっ!!!」


 体への負担が完全に抜けたわけでは無いが、それでも支障なく戦えるまでは回復した。恐らく先生もそれを見抜いて火蓋を切ったのだろう。

 手を掲げたマリアの眼前に赤、黄、青、緑、何色もの魔法陣が形成される。

 正しく臨戦態勢。同時の魔法陣を20以上起動させながらもそれを空中へと留め続ける神技。


「できるものならぁ、してみなさぁい」


 本気のマリアと、本気のメア


 最高峰の実力者同士の戦いが、レイ達が悩んでいる裏で今、始まろうとしていた。

ここまで読んで下さった皆様へ格別の感謝をm(_ _)m

次話は3/17 0時投稿予定です!

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