第9話 次の試練へ
カサリスが見せた、雷の剣。
彼は2属性の魔法が操れる存在だった。
「カサリスも2つの魂を・・・?」
ジンはその光景に呆気にとられる。
「いや、わしは一人じゃ。話したら長ごうなる。今に集中せい。」
どうやら他の方法で複属性になれるようだ。
が、カサリスの言う通り今は今に集中せざるを得ない。
「コツは流し続け、循環させるイメージじゃ。まずは手のひらぐらいの球体からやってみるとええ。」
長し続け、循環させるイメージ・・・
ジンは集中した。
球体に流し続ける・・・
バリバリッ・・・。
バチバチバチ!
ジンは見事に雷の球体を作って見せた。
「できた!」
しかし、集中をを切らした途端、球体は弾けて消えてしまった。
「まだまだ維持できんの。その感覚を忘れるな?次じゃ。」
ジンは頷き、再度集中した。
「・・・あれ?」
今度は・・・できない。
同じようにやっているのに、再現できない。
何度やっても、出来ない。
さっき確かに、出来たはずなのに・・・。
「焦るな。」
カサリスの低い声が響く。
「今のお主は形を作ろうとしておる。それは違う。」
ジンの肩がわずかに揺れる。
「流れを止めるな。形は後からついてくる。」
魔力は流す・・・、循環・・・。
ジンは頭の中で反復する。
流す・・・!
再び乾いた音が鳴り響く。
さっきより小さく、少し歪だが球体ができた。
「流れ・・・を止めず。流して・・・循、環。」
ジンは球体を維持した。
この感じ・・・を、覚える。
球体は数秒維持できたが、やはり弾けて消えてしまった。
「だっ、はぁっ、はぁっ・・・。」
「うむ、数秒は持ったの。」
ジンは左手を見つめる。
やはり、手が痺れる。
しかし。
「さっきより・・・長く・・・。」
「うむ。」
カサリスは小さく頷く。
「確実に前に進んでおる。じゃが・・・」
僅かに目を細めた。
「まだ流れに振り回されておるな。」
しかしじゃ・・・。
まだ限界には届かせん。
今ここでゼンを出す訳にはいかんからの・・・。
ジンは深呼吸し、息を整えながら、ゆっくりと顔をあげる。
「分かる・・・。次は出来るきがする・・・。」
その瞳には、先ほどまでとは違う確かな光が宿っていた。
「もう一度・・・。」
痺れて痛むのを我慢しながらもう一度手をかざした。
「ほう。」
カサリスは静かに見守る。
深く息を吸い、ゆっくりと吐く。
形を意識しない、流し、巡らせる・・・。
パリ・・・。
小さな音と共に、淡く揺れる光が生まれる。
バチバチ!
先ほどよりも明らかに安定している。
ジンの表情がわずかに変わる。
「流れてる・・・。」
今度は魔力が止まっていない。
1秒、2秒、3秒──
球体は揺れながらも、確かにそこに留まっている。
「くっ・・・。」
ジンは歯を食いしばる。
10秒。
「・・・はっ!はぁ!」
弾ける。
「今のは悪くない、この感覚を忘れるな。」
カサリスの声が静かに落ち着いた。
ジンは荒く息を吐きながら、僅かに笑う。
これなら・・・、出来る・・・。
数時間後──
ジンは、長い間球体を維持することに成功していた。
「うむ。ここまで維持できれば及第点じゃ。」
魔力を使っての修行はここまでじゃ。
また、魔力使い果たしてゼンが出て来てしまうしのぅ・・・。
「はい・・・。」
ジンは肩で息をしながら、ゆっくりと頷いた。
手の痺れはまだ残っている。
だが・・・確かに、掴んだ。
流す感覚、循環させる感覚。
「明日からは次の段階じゃ。」
その言葉に、ジンの胸が僅かに高鳴る。
次の段階・・・。
期待と不安が入り混じる中、ジンは拳を握った。
「まだ時間があるのう・・・。」
カサリスはしばらく考え、口を開いた。
「ジンよ、ついて来なさい。」
そう言うと、流環の間を後にした。
廊下を渡り、階段を上り、また廊下を歩いて行く。
カサリスは一つの扉の前で立ち止まった。
「ここで少し待っておれ。」
そう言うと、カサリスは何処かへ歩いて行ってしまった。
部屋を開けると・・・。
そこには6畳ほどの広さで、机が5つ並んでいた。
ジンは、その一つに座って、カサリスの言いつけ通り待っていた。
静寂の中、ただ待ってるのはなんだか落ち着かず、魔力コントロールのイメージトレーニングをしていた。
しばらくたって、扉がノックされる音が聞こえた。
ジンはハッと目を開ける。
ガチャッという音と共に、ロイスが入って来た。
「ロイス!?」
ロイスは軽く手を振りながら微笑んだ。
「待たせちゃった?」
「いや、大丈夫。」
ジンは立ち上がりかけて、少し戸惑いながら座り直す。
ロイスはその様子を見て、くすっと笑った。
「校長先生に頼まれて来たの。ジンに文字を教えてあげてって。」
そう言いながら、机の上に数枚の紙とペンを置く。
「文字・・・。」
ジンは紙を覗き込む。
そこには見慣れない文字が並んでいた。
ジンにはさっぱり読めなかった。
「これが、この世界の文字。」
ロイスは指でなぞりながら説明する。
「この世界の言語は、大きく分けて2種類あるの。リュナ文字とガルナ文字。」
「リュ、リュナ・・・ガルナ・・・?」
「リュナ文字は普段使うやつで、ガルナ文字はちょっと強調したり、特別な時に使うかな。」
ジンは小さく頷く。
ロイスの説明によると、この世界には2種類と数字のみで成り立っているらしい。
漢字やアルファベットのような複雑な体系は存在せず、全てがこの文字で表現されると言う。
「言葉と合わせると、この文字が・・・あ、でこの文字が、い。ね。」
言葉と合わせて文字を教えて貰いながら、
「文字列も一緒だ。これなら覚えられそうだよ。」
「ほんと?じゃぁ、早速書いて覚えましょ。」
そう言うとロイスは隣の席に座った。
「そう言えば、今日もカサリス校長と修行してたんだよね?」
「うん、今魔力行使まで習って、球体なら少しだけ・・・。」
「えっ、もうそこまで来てるの!?すごいじゃん!」
ロイスは身を乗り出す。
「でも、なかなか安定しなくて・・・。そうだ、家で練習できないかな!?」
ジンはロイスの方を向いて提案した。
しかし・・・。
「それはやめた方がいいよ?」
ロイスは苦笑する。
「部屋、吹き飛ぶかもよ?」
「それは困るな・・・。」
一生懸命なジンの姿を見て、ロイスは微笑んだ。
「明日からは次の段階か・・・。」
だがその時、ジンはまだ知らなかった。
その次の段階が、選別だと言うことを・・・。




