第10話 魔力武器化への入口
──流環の間
ジンは左手を伸ばし球体をつくる。
その持続時間は、
「よし、1分!」
「ふう・・・。」
カサリスは口角を少しあげる。
「さて、ここからが本番じゃ。魔力武器化、魔力の武器化じゃの。」
カサリスは座って続ける。
「剣、槍、盾、ナイフ・・・。色んな形に変化自在じゃ。」
ジンも話を聞こうとカサリス前に座る。
「もちろん弓などにも変化できるんじゃ。」
「色んな武器が作れるんですね。」
カサリスは頷いた。
「自分の戦い方や、戦闘によって応用が効く。早速やってみるとええ」
ジンは頷き、立ち上がった。
「・・・くっ!」
球体を作る事から急に形あるものに変化させようとしても魔力の流し方が悪いのか、全く出来ない。
「また形だけを作ろうとしとる。その形に沿って魔力を流すんじゃ。」
カサリスは静かに手は出さず、ジンの魔力暴走を紙一重で抑え込みながら見守っていた。
ほんの少しでも制御が甘くなれば流環の間は吹き飛んでしまう。
形に沿って魔力を流す・・・
まずは簡単な槍を作ってみよう。
ジンは集中した。
──バチバチ!
「ぐっ、ぎぎ!」
ジンは歯を食いしばる。
ジンの手には短い棒状のものが出来上がった。
しかし、すぐに弾ける。
「まだじゃ!力んどる、力を抜け!」
カサリスの言葉が鋭く刺さる。
ジンは頷く。
力じゃない。
力まず力を抜く・・・。
槍の形に沿って魔力を流す・・・。
今度は先程よりも少し長くなった。
しかし、穂先は揺れ、柄は歪み、次の瞬間には霧散する。
「何かが・・・違う。」
両手を膝につき、荒い呼吸をしながら小さく呟いた。
力を抜く、形に沿って流す・・・。
頭では分かっている。
だが、身体がついてこない。
くそっ!こんな所で躓いていられない!!
「焦るでない。」
カサリスの声が静かに響く。
「一方向に流すでない。流し、循環させるんじゃ」
「流し、循環させる・・・。」
ジンの中で何かが繋がった。
球体の時も流しつつ循環させていた。
今は無理に作ろうと一定の方向に流してた・・・。
だから歪み、弾ける。
形に合わせて流し、循環させればいい。
ジンはゆっくりと深呼吸した。
肩の力を抜く。
魔力を槍の形に沿って、流し、循環させる・・・。
──先程まで暴れていた魔力が静かに流れ始める。
バチバチバチ!
ジンの手の中で光が収束していく。
やがて──
「でき、た・・・。」
ジンの手には1本の槍が形成されていた。
まだ不完全ではあるが、さっきまでとはまるで違う。
確かに形として存在している。
数秒・・・。
その形は崩れずに保たれていた。
「ほう・・・。」
カサリスが僅かに目を細める。
「ようやく、入口にたったの。」
ジンは槍を見つめたまま、小さく拳を握った。
「ジンよ・・・ほれ。」
カサリスから魔力ポーションを受け取った。
「少し休憩じゃ。」
そう言うとカサリスは座った。
「お主も座れ。」
ジンはカサリスに促されて座ることになった。
「さて・・・、お主文字はロイスに習っておるな?」
「はい、家でも覚えるために書く練習してます。」
ジンは頷いた。
「よろしい。」
ジンはふと、ここに来た時の出来事を思い出した。
「カサリス校長・・・。」
「なんじゃ?」
ジンは少し視線を落とす。
「ここに来てすぐ、赤い目をした獣に襲われました。ロイスは魔獣って言ってたんですが、この世界はあんなのばかりいるんですか?」
カサリスの表情が少しだけ変わった。
「うむ。それはロイスの言う通り、魔獣じゃの。」
「この世界には元、魔物と人間が共存しておった。」
カサリスはゆっくりと語りだした。
「魔物も凶暴なのはまぁおったが、人々は食材として魔物を狩っておった・・・。じゃが、100年程前からじゃ。」
「100年前・・・?」
「そうじゃ。魔物よりも凶暴で、倒せば霧散し魔結晶を残す存在が現れた。」
ジンは無意識に拳を握る。
「あ奴らは明らかに異常じゃ。まるで・・・。」
カサリスは言葉を切った。
「どこか、違う場所から来たかのような・・・の。」
ジンは顔を上げる。
「別の場所・・・?」
カサリスは続ける。
「うむ。北の果てに人を阻むようにそびえる山脈が続いとる。その先に行った者は誰1人として帰って来んと言われておる。」
「・・・。」
「魔獣はそこから来ておると考えられておるんじゃ。」
ジンの胸が僅かにざわついた。
「北の果ての山脈・・・。カサリス校長は?」
「ふむ、流石にわしも行ったことないのぅ。」
そう言うとカサリスは立ち上がった。
「さて、休憩は終わりじゃ。ついてこい。」
「・・・?」
ジンはカサリスについていく。
そして、1本の木の前で立ち止まった。
「ほれ、ここに立て。」
木から数m、離れたところに
ジンは立たされた。
「槍・・・か、さっきのもう1回作って、あの木に向かって投げてみぃ。」
カサリスはそう言うと1本の木に指さした。
「投げる!?」
「そうじゃ。」
ジンは驚きつつもカサリスの言う通りに槍を形成した。
あの木に向かって投げる・・・。
ジンは勢いよく、木に向かって槍を投げた。
が、1メートルも届かず弾けて消えてしまった。
「うむ、形成は出来とる。じゃがそれは持つ槍じゃ。」
「持つ槍・・・?」
「まだお主の手の中で魔力が閉じとる。」
ジンはハッとした。
確かに、形を保つことばかりに集中していた。
「放つなら外へ放出しろ。」
カサリスの言葉が静かに響く。
ジンは再び槍を形成する。
今度は・・・。
投げるその瞬間に意識する!
「・・・いけっ!」
ジンは槍を放つ。
──バチッ!
先程よりも長く飛んだが木の手前で弾ける。
「まだじゃ。循環を閉じたままに投げとる。解放するんじゃ」
ジンは自分の手を見つめる。
循環している魔力を解放・・・。
ゆっくりと息を吸う。
ふと、ロイスの事が頭を過ぎった。
──僕はここにいるよ。
あの日の約束を思い出す。
ジンは槍を構えた。
「いっけー!」
循環していた魔力が外へと解き放たれる。
先程よりも早く、長く。
槍は一直線に飛び──
ドスッ!という音に遅れ、雷鳴が走り、木が軋みながら黒く焦げた。
木に突き刺さったが、浅い。
だが、確かに届いた。
「・・・やった。」
ジンは小さく拳を握った。
カサリスが僅かに口角をあげる。
「ようやく、武器になったの。」
──カサリスの修行を受け始めて1週間が経ち
ジンは魔力の武器を安定して形成出来るようになっていた。
ロイスの居るクラスと合流して野外演習を行う事になった。
辛く、苦しい野外演習になるとも知らず・・・。
ジンは胸の奥で静かに高揚していた。
最後まで読んでいただきありがとうございます✨️
ジンの魔力武器化、形になりましたね!!
この先どうなるんでしょう・・・。
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次回も楽しみに!!




