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オルビス・ファンタシア~魂の交差~  作者: 蒼香 海斗
第4章 風に乗る歌声
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第70話 鎖の音と歌声

「はぁっ・・・!はぁっ・・・!」


狭い石畳の引かれた裏路地を、一人の少女が走っていた。

両足には足枷がつけられ、ぺちぺちと走る足音に続いて、鎖の音が路地に反響する。


「おら!待ちやがれガキ!!」


その少女をガタイのいい男が走って追いかけている。

少女は逃げながら口角を上げ、鼻歌を歌っていた。

その鼻歌は追われているとは思えない程、透き通った旋律だった──


ジン、ロイス、フリーシアは校長室に訪れていた。


「カサリス校長。今日、旅立とうと思います。」


「おお、そうか。」


カサリスは三人の顔を順番に見ると、「無事、帰って来るんじゃ。」と声をかけた。

三人は校長室を後にすると、正門の前に止めた従車へ向かう。


「ロイス、本当にいいんだね?」


ロイスは大きく頷く。


「うん!もう決めてることだから。」


三人は正門を抜け、従車に乗り込もうとした時、風が優しくロイスを撫でる。

従車に乗り込もうとしたロイスの足が止まり、空を仰いだ。


「お姉様?」


ロイスはフリーシアの顔を見る。


「なんか・・・歌声、聞こえなかった?」


フリーシアは首を傾げた。


「何も聞こえなかったわ?」


ロイスは不思議そうな表情をし、従車に乗り込んだ。


凄く綺麗な歌声が聞こえた気がしたんだけどな・・・。


ロイスはそう思いながら従車に乗り込む。

従魔は低く唸り声をあげ、力強く石畳の道を蹴った。

三人は来た道とはまた違う街の出口から出て、新たな道を選んで北へと向かう。

ジンは従車の中で地図を広げた。

ロイスとフリーシアは上からその地図を覗く。


「この道を行くと、五日ぐらいで街に着く。」


「レナールの街ね。」


ジンは頷く。


「その手前に村があるみたいだから、そこで一泊して街に向かおう。」


ロイスとフリーシアは頷いた。

日が暮れ、橙色に揺らめく空に夜が滲んでいた頃、ジン達はまだ森を抜けることが出来なかった。


「これじゃ野営できないね・・・。」


ロイスは従車の窓から外を覗く。


「夜の内に森を抜けたい。少し従魔を休憩させよう。」


ジンは従車を道の縁に止めた。

従車から降りたジンは、従魔に水を与えた。

従魔はその水を飲み干すと、道端に生えている草を食べ始めた。

ジンは従魔の体を撫でていた。

その時、森の奥から複数の刺さる視線を感じる。

森に視線を向けると、複数の火の玉がぼやりと浮かんだ。

従車を挟む様に、反対の森にも火の玉が複数浮かぶ。

ザッ、ザッ・・・。

と、人が歩く足音が聞こえて来て、森の暗闇から姿を現した。

その数、十二人程。

全員が軽微な武装をしている盗賊だった。


「にぃちゃん一人かい?」


「ロイス!フリーシア!」


全員が剣を取り、その内の一人がジンに襲い掛かる。

ジンは咄嗟に魔力武器化(アルマニティ)で剣を作り出し、一人目の太刀を防ぐ。

鉄と鉄がぶつかり、弾ける鈍い音が響く。

ジンは盗賊の剣を伝わせ、電撃を流し込む。


「がぁぁ!」


更に三人がジンに襲い掛かる。

ジンはしゃがみ、三人同時に切り伏せる。


「どうしたの!?」


ロイスとフリーシアが従車のドアを開くと、既に数人が従車を囲んでいた。


「何だ、こんなに可愛い子がいたのか・・・。」


「盗賊・・・ね。」


フリーシアはゆっくりと従車から降り、地に足がついた途端、激しい冷気を放ち、正面五人を腰まで凍らせる。


「な、なんだこいつら!」


「甘く見ないで!」


ロイスは反対の窓を開け、残りの五人に炎の球をぶつけ、後方に弾き飛ばす。

ジンは二人を見てホッと、小さく息を吐く。


「この人達、どうする?」


ロイスも従車から降りて来た。


「そうだな・・・。」


ジンは盗賊の武器を全て没収し、縄で足と手をくくって動けない様にして道の端に並べた。


「連れて行くのが一番いいけど・・・。誰かが通った時、見つけてくれるさ。」


ジンは手を二回、パン!パン!と、払った。


「お前ら、こんなことして、ボスが黙っちゃいねえぞ!」


ジンは立ち上がると、体に電気を走らせる。

バリバリという乾いた音と、紫電の閃光が瞬く。


「お前らこそ、こんな悪事を働いて、これから先普通に生きて行けると思うなよ・・・。」


魔力で圧を出し、盗賊たちをにらみつける。

その瞳は、暗闇に光る閃光で鮮やかな薄紫色に光っていた。


「ひいぃぃ!」


フリーシアは後ろで腕を組み、小さく息を吐いた。


「ロイス、炎の球を空に打ち上げて破裂させることはできる?」


「え?うん。」


「じゃ、派手にお願い。」


ロイスは頷くと、サッカーボール程の炎の球を作り出し、空へ打ち上げた。


「さ、僕達も先を急ごう。」


三人は従車に乗り込み、旅路に付いた。


「あのままで大丈夫かな?」


ロイスは窓越しに盗賊たちが残された方向を伺っていた。


「大丈夫だよ。戻ろうにもこの従車じゃ乗せきれないし、置いていくしかない。一応、ロイスの放った炎がグルナーレの誰かに見られてたらきっと来てくれるさ。」


「うん・・・。」


ロイスは少しだけ、不満な表情を浮かべ、窓を覗くことを止めた。


「さて、没収した武器、売ったらいくらになるかな?」


ジンは盗賊から没収した武器達を見て、目を輝かせていた。


「これじゃどっちが盗賊か分からないわね。」


フリーシアはロイスを見ながら肩を落とす。

ロイスは口に手を当てて、ふふっと笑った。

夕日は消え、宵闇に呑まれた頃、空の上には赤く、鈍く光照らす月が一行を見下ろしていった。

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