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オルビス・ファンタシア~魂の交差~  作者: 蒼香 海斗
第3章 失われたもの
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第67話 届かなかった手

ジンは、学校まで、もうすぐの所まで戻って来ていた。

後ろを振り向くと、カサリスが向かった方角の空が光り、雲が割れていた。


「間に合ってくれよ・・・。」


ジンは学校の上空に到着すると。辺りを見回す。


「裏庭か・・・?」


ジンはそのまま空へ至る魔法(フルトーレ)で裏庭へ向かう。

見えて来た光景を見て唖然とした。


「何・・・だ、これ・・・。」


生徒の半数以上がその場で倒れ、先生たちがあちこちに魔法を打ち放っている。

ジンの目には完全に混乱した状態の様に映っていた。

上空から戦場をくまなく観察していると、視界にノイズが走る。


なんだ?

空間が歪んで見える・・・。


ジンは目を擦り、細めてもう一度戦場に目を移す。

目の端にフリーシアの姿がはっきりと確認出来た。

ジンは真っ直ぐにフリーシアの元へ向かう。


「フリーシア!」


「ジン!?どうして・・・。」


ジンはフリーシアの前に着地した。

フリーシアが背中の傷を覆うように氷を這わしているのが目に入る。


「フリーシア、背中・・・。」


「ええ、少し・・・やられたの。でも心配無いわ。」


ジンはフリーシアの言葉を聞き、手を握る。


「戦況を教えて欲しい。」


「何故、貴方の声と姿が確認できるの?」


フリーシアは確認する様に、ジンの手を取る。


「触れる・・・。」


フリーシアは不思議そうにジンを見つめながら戦況を話した。


「なるほど、個々を分断して統率が取れなくする能力、そしてどこから来るか分からない斬撃・・・か。大人数相手にこれは最悪の相性だな。」


「ええ。」


「ロイスは?」


フリーシアは悔しそうに俯き、首を振る。


「ごめんなさい、お姉様がどこに居るか本当の位置が分からないの。」


ジンは、俯くフリーシアの頭を優しくポン、ポン、とする。


「大丈夫、ロイスならきっと無事だよ。」


「ええ・・・。」


ジンは再び、辺りを見回した。

すると、すぐ近くで蹲って動かないロイスを見つける。


「ロイス!」


ジンはすぐにロイスの側まで駆け寄り、呼びかける。

フリーシアもジンの後ろについて走って行く。


「ロイス!」


ロイスは近くから聞こえるジンの声に反応した。


「ジン・・・?」


ロイスは声の聞こえる方へと振り向く。


「ロイス、無事だったか・・・。」


ジンの目に映ったロイスの表情は、苦しみ、悲しみ、憤りが混ざった、そんな複雑な表情をしていた。

ロイスはジンから最初に見ていた方に視線を戻し、俯く。


「ロイス・・・?」


近くまで行った時、ロイスの視線の先を見ると、誰かが倒れていた。


「まさか・・・。」


──ドクン!

胸の奥が激しく脈打った。

ジンはロイスの隣に立つと、そこにはヤナが血の池の中に仰向けで倒れ、安らかに眠っている様に目を閉じていた。


「ヤナ・・・。そんな・・・。」


ジンの声は震え、一歩後ずさった。

フリーシアは目と口を大きく開き、両手で口を覆い、息を呑んだ。


「ジン、不死鳥の炎環(オルビス・リゼネイト)が発動しないの。」


不死鳥の炎環(オルビス・リゼネイト)?ロイス、もしかして記憶が・・・?」


ロイスは静かに頷いた。


「でも、ヤナの魂はもう・・・。」


ロイスはヤナの手を強く握った。


「そんな、でも、だって。」


ロイスは何も言わず、首だけを横に振った。


「嘘だ・・・。」


「──嘘じゃない、現実だ。」


ジンは頭を押さえ、地面に膝をつく。

──ドクン!ドクン!

胸の奥が激しく、早く、鼓動を始める。


「ヤナが・・・。」


「─間に合わなかったんだ。」


「今度こそ守るって誓ったのに・・・。」


「─ヤナを失った。」


「やめろ、やめろおぉぉ!」


裏庭の戦場に、ジンの叫びが轟く。

先生は攻撃を止め、逃げ惑う生徒達は足を止め、皆がジンに視線を送る。


「─俺たちはまた・・・。守れなかった。」


ジンの頭に響くゼンの声は、悔しさに耐えるかの様に震えていた。

──ドクンッ!

胸の奥の鼓動が大きく跳ねた。

胸の奥にあった鼓動が大きく広がって行き、全身が脈打つ。

ジンの頭の中にヤナとの思い出がフラッシュバックする。

野外演習でのやり取り、学校の廊下での指切り。

そして、抱きしめ、包んでくれたあの温もり・・・。

ジンの魔力は膨れ上がり、噴き出す。

守れなかった悔しさ、何もできなかった虚しさ、そして後悔が入り混じる。

それを引き金に、ジンの中の二つの魂がぶつかり、交差する。


─許さない

「─許さない」


ジンとゼンの声が僅かに遅れて重なる。


「ジン・・・。」


フリーシアはカリフィスから助けてくれた時のことを思い出し、少し不安げにジンを呼びかける。


「フリーシア、もう、大丈夫。」

「フリーシア、もう、大丈夫だ。」


ジゼは静かに全魔力を放出し、戦場を覆う。

二人の魔力がウェリタスの魔力を上回ったせいか、裏庭に居た全員にかけられた分断の魔法が解ける。

薄い紫色をした左目と、深い青色をした右目が上空の一点を見据える。


「ほう、我の魔力を超えるか・・・。」


ウェリタスの声が頭の中に響く。


「しかし、われの攻撃からは逃れられまい。」


ウェリタスは鎌を大きく振りかぶり、力強く空を断つ。


因果断絶(カーサ・イテルラプタ)


紫電の雷閃(ラプル・コルカティオ)

紫電の雷閃(ラプル・コルカティオ)


バリッと、乾いた音を置き去りにし、ジンの姿が消えた。

そして、ジンが居た空間が切り裂かれる。

瞬間、ウェリタスの鎌を持つ、両手が断絶される。


「なっ・・・。」


鎌とウェリタスの両腕は空から地面に向かって落ちていく。

ウェリタスは上を向くと、さらに上空にジゼの姿を捉える。

その右手には、水の剣が魔力武器化(アルマニティ)されていた。

ジゼは左手をウェリタスに向けて腕を伸ばす。


雷槍殲陣(ハスタ・テンペス)

雷槍殲陣(ハスタ・テンペス)


ウェリタスのを中心に、逃げるのを許さないかの様に、無数の雷の槍が生成される。

それを見たウェリタスは鎌を振る。


「逃がさない。」

「逃がすかよ。」


空間が裂け、雷の槍が何本か切り裂かれたが、それでも逃げ場は無い。


断罪(ダム・ナティオ)

断罪(ダム・ナティオ)


ジゼは左手を力強く握り上げた。

それを合図に、展開された無数の雷の槍が放たれる。

それは、全てウェリタスに突き刺さり、強烈な雷撃を体に流す。


「ぐおおおお!」


空に浮かんでいたウェリタスは、体の痺れで力を失い、頭から落下する。


「これで終わらせる。」

「これで終わらせる。」


ジゼは右手のに魔力武器化(アルマニティ)した水の剣を両手に持ち替え、ウェリタスに向け、猛突する。

剣先が魔晶核に食い込み、激しく火花を散らす。


「うおぉぉあ!!」

「うおぉぉあ!!」


ジゼとウェリタスは凄まじい速度で地面に衝突する。

激しく地面を揺るがす様な轟音と共に、土煙が舞った。

ロイス、フリーシアを始め、生徒達や先生達が何も言えず息を呑んでただただ、見守っていた。

戦場に静寂が訪れる。

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