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オルビス・ファンタシア~魂の交差~  作者: 蒼香 海斗
第3章 失われたもの
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第65話 断絶の魔人 ウェリタス

生徒達は、ウェリタスの強大な魔力の重圧に耐えきれずに泡を吹き、意識を刈り取られ、卒倒していく。

その数は生徒の半数近くに及んだ。

ウェリタスはそんな生徒達には目もくれず、片手に携えた鎌を両手に持ち替え、その場で上から斜めに大きく振りかざし、空を切る。

その軌道は因果を断ち切る一閃だった。


因果断絶(カーサ・イテルラプタ)


頭の中に再びウェリタスの不気味な声が響く。

フリーシアはその動作が何の意味を持つのか分からず、身構える。

一人の生徒が一歩前に出た。

その時・・・。

右足のふくらはぎの肉が断たれる。

激痛の叫びは届かず、地面に倒れ込む。

ウェリタスは振り下ろした刃を返し、下から上に空を切る。

すると、別の生徒の腕の肉が突然断たれ、血飛沫が舞う。


「お姉様!逃げて!」


フリーシアの呼びかけは虚しくもロイスには届かない。


「お姉様!?」


フリーシアはロイスに触れようとすると、その手はすり抜けた。


「どういうこと!?」


フリーシアはもう一度ロイスに触れる。

確かにそこにロイスが存在している・・・。

しかし、フリーシアの手はまたしてもロイスをすり抜けた。


「そんなっ・・・。」


フリーシアは生徒たちに視線を向ける。

一部の生徒は腰が抜けて動けない状態で、残りの生徒達は何故か散り散りに走って逃げている。

先生達は応戦して魔法を放っている。

しかし、一人は空へ、一人は校舎に向けて、一人は生徒達に向かって・・・。

と、フリーシアの目には先生達がばらばらの方向に攻撃している様に見えた。

声が聞こえず、触れることも出来ない。

隔離された世界に、そこに確かに存在するウェリタスに向かって。


「皆・・・。どこに攻撃してるの!?」


フリーシアは生徒達の上に存在するウェリタスに視線を向ける。


ロイスはウェリタスの圧力に震えながら、ヤナの手を握ろうとする。


「ヤナ?」


しかし、その手はすり抜けてしまう。


「フリーシア・・・?」


次はフリーシアの背中に触れようと手を伸ばす。

が、やはりその手はフリーシアの体をすり抜ける。

ロイスは辺りを見回す。

気絶して倒れている生徒、次々と血飛沫をあげながら倒れて行く生徒。

ロイスは恐怖と孤独感に支配され、力なく崩れた。


フリーシアは呼吸を整え、違和感の正体を探るように視線を走らせた。


お互いの声が届かない、触れることも出来ない・・・。

ウェリタスの魔法かしら・・・。

生徒達が居るから範囲魔法は使えない。

なら・・・。


フリーシアは、そう考えながら両手を天高くかざし、空中に氷の矢を無数に作りだす。


氷霊の尖槍(テルミス・ハスターク)


フリーシアは両手を前に振りかざした。

無数の氷の矢は放たれ、ウェリタスに襲い掛かる。

・・・が、その氷の矢は虚しく、ウェリタスをすり抜け、校舎の壁に突き刺さり、強烈な冷気を放つ。


「魔法が・・・すり抜けた!?」


フリーシアは息を呑んだ。


「いえ、そんなはずないわ・・・。」


フリーシアは再び空に氷の槍を生成する。

上げた両手を振り下ろすと、それを号令に氷の矢がウェリタスに向かって襲い掛かる。

しかし、その槍は再びウェリタスの体をすり抜けた。


「なら・・・。」


フリーシアは両手を添え、氷の剣を作り出す。


氷霊の零剣(テルミス・ラキアス)


走り込もうと、一歩前に出た時、フリーシアの背中が裂ける。


「!?」


ヤナは辺りを見回す。

ヤナは同じ空間に居るはずなのに、互いが別の位置に存在している様に感じがしていた。

何か嫌なモヤモヤが胸に広がり、辺りを見回す。

少し離れた所に、蹲っているロイスを発見した。


「ロイス!」


ヤナは蹲るロイスの側に近寄り、ロイスの背中に触れる。


「ロイス、しっかりして!?」


「ヤナ・・・?」


ロイスは顔を上げて、ヤナを見る。


「やっと見つけた。」


ヤナは優しく、震えているロイスを包むと、近くで氷の剣を作り出したフリーシアに声をかける。


「フリーシア!?」


しかし、その声はフリーシアには届かなかった。

フリーシアの背中に、空間がかみ合って無い場所がヤナに見えた。

その直後、フリーシアの背中が裂け、血飛沫が宙を舞う。


「フリーシア!」


ヤナは息を呑んだ。

その時、目の前の空間だけが、僅かにズレて見えた。


フリーシアは地面に跪き、肩に手を添える。

激痛に、息が荒くなり、顔が歪む。

それでもウェリタスへ視線を向け続けていた。


私が、何とかしないと・・・。

ジンに、頼まれたのよ。


フリーシアは自分自身を奮い立たせ、立ち上がった。


「くっ・・・。」


これ以上出血しない様に、自分の背中を凍らせる。

フリーシアは息を整える為に大きく深呼吸し、集中しようとした。

この間にも、生徒、先生達はウェリタスに裂かれ、倒れて行く。


だめ、これじゃ集中できない。

私一人じゃ何もできないの・・・?


フリーシアは唇をかみ、両拳を握る。

唇から一筋の鮮血が流れ落ちる。


ロイスは立ち上がると、ヤナに抱き着いた。


「皆が倒れてく・・・。でも、ボクは何もできない・・・。」


「大丈夫。ロイスには仲間がいる。それに、私だって貴方の親友よ?」


ヤナはロイスを抱き返し、頭を撫でると、ロイスを離して真剣な表情になる。


「でも、ここから逃げないと。フリーシアが何とかしようと頑張ってくれてる。」


ロイスは小さく頷く。


「行こう。」


ヤナがロイスの手を取ろうとした時、ロイスとヤナの頭の中にウェリタスの声が反響する。


「断絶した空間で、何故繋がれる?」


その瞬間、ロイスの背中の空間が裂けた。


「ロイス!」


ヤナは咄嗟にロイスの手を引き、自分との場所を入替える。


「ヤナ!」


ロイスは体制を崩し、ヤナの手が離れる。

その刹那、ロイスの世界の音が遠のき、時間が引き延ばされた。

倒れながら必死に手を伸ばし、ヤナの手を取ろうとするロイス。

しかし、その手は触れることなく離れて行く。

ヤナが笑顔を向けたのをロイスは確かに見た。

ゆっくりと、ヤナの口元が動く。

何かを伝えようとしたことをロイスは理解できた。

しかし、その言葉はロイスには届かなかない。


「ずっと一緒だよ。」


その瞬間、ヤナの腹部が断たれた。

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