表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オルビス・ファンタシア~魂の交差~  作者: 蒼香 海斗
第3章 失われたもの
63/78

第63話 揺り戻しの朝

部屋には静けさが滲み、淡かった日差しは明るく部屋を照らしだす。

ジンの震えは収まり、感情を出し切り、涙も止まった頃。


「ヤナ、ありがとう。もう、大丈夫。」


ジンはヤナから離れようとしたが、ヤナはジンを離さなかった。


「ジン、私、君のことが・・・。」


「え?僕のこと?」


ヤナは首を横に振る。


ロイスが記憶を失ってるからって

そんな抜け駆けは、私にはできない・・・。


「ううん、もう少し。もう少しだけ・・・こうしてたい。」


「ヤナ・・・?」


ヤナの抱く腕が少し強くなる。


この先も、まだまだ続くんだよね・・・。

私がジンの隣に居れたら、ロイスと一緒に行けたら。

皆を支えてあげたい。

力になりたいよ・・・。


「ねぇ、ジン?」


「ん?」


「ロイスの記憶が戻ったら・・・。今度は私も一緒に行きたいな。」


「それはっ!」


「今度は、ちゃんと隣に居たいの。」


ジンはその言葉を聞いて押し黙ってしまう。


「連れてってくれないと、離してあげないぞー?」


ヤナはジンを抱いたまま、左右に揺すった。


「お、わぁ、ああ。」


「ほれほれー。」


ヤナはジンに自分の弱さを見せない様にする為、わざとからかう。

その時、ジンの部屋のドアが開いた。


「朝食、出来たわよ。」


フリーシアが部屋の中を覗いた。


「あ・・・。」


フリーシアとヤナの視線が合う。


「な、なにやってるのよ!?」


フリーシアは二人の姿を目にし、一気に顔を赤く染めて大きな声を出した。


「いやぁ・・・。あはは・・・。」


ヤナはジンを抱いたまま、困り笑顔で笑った。

ダイニングのテーブルには温かなご飯が並んでいた。

それぞれテーブルに着くと、「いただきます。」と、手を合わせて食べ始めた。

ヤナは何処か嬉しそうに食事を食べ、ジンは何もなかったかの様には出来ず、気まずそうに食べていた。


「そう言えばフリーシア、さっき凄い大きな声出してたけど、何かあったの?」


「なっ!何って・・・。」


フリーシアの視線がジンに向く。

ジンはさっきのことを思い出して急に顔を赤く染める。


「な、なんでもない。何でもないよ・・・。」


自分がヤナの胸の中で泣いていたとは恥ずかしくて口にできない。


「ふーん・・・。」


フリーシアはジト目に変わり、ジンを見つめる。

ジンは苦笑いでそれを返す。

ヤナは二人を見てくすっと笑い、ロイスは気にした様子もなく、朝食を食べている。

フリーシアはジト目を止めて食べ始める。

ジンはほっと胸を撫で下ろした所に、フリーシアの強烈な一言が飛んできた。


「・・・不埒ね。」


「そんなんじゃないから!」


ジンは慌ててそれを否定した。

ヤナは思わず、ふふっと笑ってしまった。

ジンはそんなヤナを見て、小さく息を吐いく。

ふと、ジンはロイスに目線を移すと、美味しそうに朝食を食べるロイスが視界に入る。

ロイスはジンが見ていることに気付くと、にっこりと笑顔を返して、朝食を食べ進めた。

ジンはそんなロイスを見て、表情が緩んだ。

温かな空気の中、四人は朝食を食べ進めていた。


「そうだ、今日は学校に行ってカサリス校長に話をしようと思ってるんだけど、皆どうかな?」


「ええ、そうしましょう。」


「ロイスも、いいかな?」


「うん!」


ロイスは食べながら元気に頷いた。

四人は朝食を食べ終わり、食器を下げた。

ジンとヤナは朝食を作らなかったので、食器を洗っていた。

ヤナはわざと体をくっつける。


「ちょ、ヤナ。近いよ・・・。」


ジンは小さく呟き、恥ずかしそうに距離を取ろうとするが、食器を洗っている所なので逃げ場が無い。


「ジンが泣いてたこと、二人には話さないから安心してね。」


ヤナはジンの耳元で囁く様にそう伝えた。


「ヤナ・・・。」


ヤナはジンに笑顔を向けた。

食器も洗い終わり、四人は学校へ行く準備を整えると、家を出て学校を目指した。

ロイス、フリーシア、ヤナは楽しそうに話をしながら歩いている。


「所で、どうしてヤナは僕達が帰って来てるって気づいたんだ?」


「それは、学校の前に見覚えのある従車が止まってたから、もしかしたらって、思って。ロイスの家に向かったの。」


「そうだったんだ。」


ヤナは小さく頷いた。


「まぁ、従車は目立つものね。」


「違いないや。」


四人は学校の鉄門をくぐり、学校の中に入る。


「ちょっと寂しいけど、私は授業もあるから、教室に行くね。」


ヤナは手を振って三人と別れた。

ロイスとフリーシアも手を振り、笑顔でヤナを見送った。


「僕達も行こう。」


ジンは校長室に向かって歩き始める。


「凄く広いね・・・。」


ロイスは学校のあちこちを、口を開けて見回していた。

校長室の前で三人は立ち止まった。

三人は顔を見合わせ、ジンが校長室のドアをノックする。


「入りなさい。」


ジンはドアをゆっくりと開け、三人は校長室の中に入った。


「よく、戻って来たの、ジン。ロイス、それにフリーシアか。」


「はい、カサリス校長。」


三人は頭を下げた。

ロイスはジンの後ろで少しだけ体を隠した。


「お久しぶりです、カサリス先生。」


フリーシアは上品にあいさつした。


「久しぶりだの。」


カサリスは三人を見据えた。


「さて、話はアスタリアから聞いておる。ロイスの記憶が、無くなったんじゃの?」


ジンは静かに頷き、アルヴォル・クリフォティカのこと、幻聖竜に出会ったこと、ロイスが記憶を無くした経緯、記憶を呼び起こす為に思い出の場所を回ったこと、これまでのことをカサリスに話した。


「なので過ごした年月の長いこの学校ならと思い、戻ってきました。」


「なるほどの・・・。状況は理解した。お主達を歓迎しよう。」


「ありがとうございます。」


そう言うと、ジンとフリーシアは顔を合わせて笑顔を送りあった。

その心境は、これでロイスの記憶が戻るかも・・・。

という希望に満ちていた。

しかし、彼らは知らなかった。

新たな脅威がこの学校に近づいて来ていることを・・・。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ