表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オルビス・ファンタシア~魂の交差~  作者: 蒼香 海斗
第3章 失われたもの
58/78

第58話 静寂な森の再訪

翌日、朝もやが晴れ、村のあちこちの家から煙が立ち上り、朝食の準備をしている頃。ジン達三人はバルクに見送られてアルタル村を出発した。

従車は土の道を蹴り、草原を駆け抜ける。


四日程従車を走らせると、ジンとロイスが初めて立ち寄ったアルタル村が見えて来た。

到着すると、三人は従車を降りる。


「ロイス、ここが初めて立ち寄ったアルタル村だよ。森で魔獣を倒したんだ。」


「そうだったの。」


フリーシアが興味ありげにジンの話を聞く。


「うん、後でその森の入り口にも行ってみようと思ってる。」


ロイスは、人差し指を口の下に当て、頑張って思い出そうとするが、「ん~、思い出せない・・・。」

そう言うと、どこか寂しそうな表情を浮かべた。


「無理に思い出さなくていいよ。村長に挨拶しに行こう。」


ジンを先頭に、三人は村を歩き出す。

村長の家に行く道中、ジンは村の様子を見ていた。

村を走り回る子供達、井戸の前で談笑している大人達。

畑で仕事をしている人や、家畜の小屋で仕事をしている人。

アルタル村は以前より活気づいているように見えた。


「確か、ここだったかな・・・。」


ジンはドアを三回、ノックした。


「バルク村長、居ますか!?」


ジンが声をかけてすぐにドアの向こうからバルクの声が聞こえて来た。


「誰だ?」


そう聞き返しながらバルクは少し除く程の隙間ができるぐらいドアを開いた。

外を覗いたバルクはジンの姿を見て驚き、すぐに笑顔になった。


「おお!ジンじゃないか!」


「バルク村長、お久しぶりです!」


ジンはバルクに軽く会釈をした。

バルクはドアを開く。


「嬢ちゃんもいるのかい!元気にしてたか?」


バルクに声をかけられたロイスは戸惑いながら笑顔を作り、軽く会釈すると、ジンの後ろに隠れた。


「それと・・・?」


バルクはフリーシアに視線を移す。


「彼女はフリーシア。僕達の仲間です。」


「そうだったのか!」


紹介に上がったフリーシアもバルクに軽く会釈をした。


「村長、訳あってグルナーレに戻ってる所なんです。」


「そうか、グルナーレに。」


「はい、また宿をお借りしてもいいですか?」


「ああ、好きに使って構わんよ。」


「ありがとうございます。」


そう言うとジンは頭を下げた。


「ところで、あれからどうですか?」


「ああ、二人が魔獣を倒してくれてから、お陰で平穏になった。」


「よかったです。」


ジンはほっと溜息をついた。


「では、寄りたいところがありますので。」


ジンは頭を軽く下げて二人に声をかけた。


「行こう。」


三人は村長の家を後にし、ジンは森のある、南側の入り口に二人を案内した。


「向こうに見える森で魔獣を倒したんだ。空へ至る魔法(フルトーレ)で入り口まで行ってみよう。」


ジンはかがむと、ロイスに声をかけた。


「ロイス、おぶさって。」


ロイスはジンに言われるまま、背中におぶさった。

ジンとフリーシアは空へ至る魔法(フルトーレ)で静かに地面から離れた。

森の入り口に着地すると、ロイスはジンから降りる。


「ここが・・・?」


「そうだよ、ロイス。」


日は上り、昼間なのに森の奥は暗かった。

鳥のさえずりすら聞こえず、生き物の気配もまだ感じることはできない。


「気味の悪い所ね・・・。」


フリーシアは何とも言えない悪寒にさらされる。


「まだ魔獣を倒して日が浅いからね・・・。」


ジンはそう言いながら視線を森の奥に向けた。

森の奥から風が抜けると、その風にはほのかに鉄の匂いが混ざっていた。


「ボク、この匂い・・・覚えてる・・・。」


胸の奥が少しだけざわつく。

何かを思い出しそうで、でも届かない。

ロイスは一歩前に出ると、森の奥を見つめる。

ジンとフリーシアはロイスのその様子を見て目を合わせる。


「ねぇ、ジン、ボクはここでどんな魔獣を倒したの?」


ロイスは森の奥を見つめたまま、ジンに質問した。


「この森の奥にいた魔獣は、村の家畜・・・。魔物だけを襲う魔獣で、村が困っていたんだ。」


「魔物だけ、襲う魔獣・・・?」


ロイスは森の奥からジンに視線を移す。

ジンは頷くと続けた。


「それはとても大きな蜘蛛の姿をした魔獣だった。外殻が硬くて雷が効かなかったんだ。」


「ジンの魔法が効かなかったの!?」


フリーシアが驚いた。

ジンは苦笑しながら頷く。


「魔力最大で魔法を放ったけど、少し焦げただけで、最後はロイスの炎の剣で目を突き刺して、内部から燃やしたんだ。」


「流石お姉様ね!」


フリーシアは嬉しそうにロイスを見た。


「それで、倒したの?」


「うん。僕は痺れて動けなくて・・・。」


ジンは話しながらこの森で蜘蛛の形をした魔獣を倒した後、ロイスに膝枕して貰ったことを思い出し、急に頬を染めて言葉を詰まらせる。


「何でここで顔が赤くなるのよ。」


フリーシアはジト目でジンに問い詰める。

ジンは慌てて視線を横に逃がす。


「な、なんでもないよ。」


ジンはなんとか誤魔化そうと両手を振った。

フリーシアはジンをそのまま見つめ続ける。


「お姉様、怪しいわ。」


「うん、怪しいね。」


ロイスもフリーシアの真似をしてジト目でジンを見つめる。


「ロイスまで!?何でもないってぇ!」


ジンはそう言いながら二人の視線から逃れるように村に向かって走り始める。


「あっ!お姉様逃げたわ!」


「逃げたね!」


ロイスとフリーシアは息を合わせたかのようにジンを追う為に走り始める。

二人は走りながら目を合わせると、どこか嬉しそうに笑いながらジンを追いかけた。

追われているジンにも、嬉しそうに逃げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ