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第46話 魔晶核の正体

城に戻った三人はロイスの部屋に集まっていた。

ロイスに向けられている視線の話をしている。


「露店街で人通りも多い、見慣れない三人だったからそう言う視線を感じてしまったとかかな?」


ロイスはジンの答えに首を横に振る。


「もっとこう・・・、言葉にはできないんだけど監視されているような、何だか刺さる視線を感じたの。」


ロイスは少し俯く。


「昼間っから監視だなんて、一体だれがそんなこと・・・。」


いくら三人でも、視線の持ち主が何を考えているのか検討もつかなかった。


「ロイスとフリーシアは明日も下街にいくの?」


ジンはロイスとフリーシアに明日の予定を聞く。


「ええ、他にも色々と回って見るつもりよ。もっと回れば、記憶もだんだん思い出すかもしれないもの。」


フリーシアの提案に、ロイスも頷く。


「僕は、王都の魔導研究所を尋ねてみようと思ってる。アルヴォル・クリフォティカが残したコアが気になってるから、話を聞きに行ってみるよ。」


そう言うとジンはフリーシアに視線を向ける。


「明日は別行動だけど、フリーシア、ロイスを頼むね。」


「ええ、用心するわ。」


部屋の時計が夜の11時を指した。

それを見たフリーシアが立ち上がる。


「今日はお母様と一緒に寝るわ。実は夢だったの!そのついでに色々お話して報告するつもりなの。」


フリーシアはそう言うと「おやすみ。」と、言い残してロイスの部屋から出て行った。


「じゃあ、僕もそろそろ寝ようかな・・・。」


ジンが立ち上がろうとした時、ロイスが服の袖を引っ張って止めた。


「ロイス?」


「ボク、今日のことで少し怖くて・・・。」


ジンは袖を引っ張るロイスを見ると、ロイスは不安げに俯いている。


「大丈夫、側にいるよ。さぁ、ロイス。布団に入って。」


ジンにそう言われると、ロイスは寝巻きに着替えてベッドの中に入る。

ジンはロイスの側に腰掛け、ロイスを見つめる。


「ねぇ、ジンは入らないの?」


ロイスの直球にジンは言葉を詰まらせる。


「ほら、暖かいから。」


そう言うとロイスは奥にズレてジンが横になれるスペースを作る。

ジンは心臓が早くなり、顔が赤くなって行くのを自分でも気づくぐらい火照ったのを感じた。

ジンは小さく息を吐き、ロイスの隣に入り、体を反対に向けて背中をロイスに向ける。


「ねぇ、ロイス。ロイスは覚えて無いかもだけど、僕とロイスが出会って少し経った位にこうやって一緒に寝たことあるんだよ。」


「そうなの!?・・・思い出せない。」


ロイスの声が少しずつ小さくなる。


「大丈夫、無理に全部思い出さなくても良い。今日みたいに少しずつ思い出していこう。」


「ありがとう、ジン。」


そう言うと、ロイスはジンの背中に抱きつく。

ジンに伝わるロイスの温かさと、体の柔らかさ・・・。

ジンの心臓は早鐘の如くドクドクとなっていた。

ジンは顔全体が真っ赤になる。


「ボクね、知らない記憶を思い出して怖かった。でもジンがゆっくり思い出そうって優しく言ってくれて、嬉しかった。」


ジンは振り向いてロイスを抱きしめようかどうしようか頭の中で葛藤していた。


「誰かに見られてるのも凄く怖かった。でも、ジンが、フリーシアが守ってくれるって思うと、とても心強かったの。ジン、明日の・・・朝まで・・・い・・・てね。」


そう、言い終わると、ジンは背中越しにロイスの寝息が聞こえた。

安堵したのか、規則正しく、スースーと眠っている


「ロイス、君に優しいのは、君が誰よりも優しいからだよ。」


ジンの独り言は誰にも届かなかった。

静かな夜に、フクロウの鳴き声がホーホーと木霊していた。

翌朝、ロイスの部屋のドアが勢いよく開かれる。


「お姉様!でかけましょう!」


フリーシアの大きな声でジンが目を覚ます。


「フリーシア、朝からそんなに声を出さなくても・・・。」


ジンは寝ぼけ眼で起き上がる。


「ジン!?貴方なんでお姉様と!?」


ジンは布団で体を隠し、「ジンはここにはいないよ~。」と、しらを切るつもりでいた。


「ジン出てきて薄情なさい!」


フリーシアはジンが隠れた布団をはぎ取ろうとしたが、ジンは必死に耐えた。

そんな騒動の中、ロイスは目を覚ます。


「どうしたの?こんな朝から・・・。」


ロイスは起き上がり、目を擦って二人を見る。


「お姉様大丈夫!?ジンにエッチな事されてないわよね!?」


「エッチって・・・!フリーシア、いくら何でも僕はそんなことしないよ!」


ジンとフリーシアの言い合いが始まった。


「フリーシア、ボク一人で寝るのが心細かったから、ジンに無理言って一緒に寝て貰ったの。ジンは何もしてこなかったよ。」


「何もしないは何もしないでそれはどうなのよ!」


フリーシアはジンの布団を丸っと剥がすことに成功した。

ジンに視線を向け、フリーシアは大きく息を吐くと、「腰抜けね」と一言、言い放った。

その言葉がジンの胸に刺さったのか、ジンは俯いた。


「じゃあ、僕は魔導研究所に行ってくるから、二人も気を付けてね・・・。」


ジンは俯いたまま二人にそう言うと、ロイスの部屋からとぼとぼと出て行った。


「フリーシア、ちょっと言い過ぎじゃない?一緒に寝て欲しいって言ったのはボクだよ?」


ロイスのその一言で、反省したのか、フリーシアはしゅんとなった。


「お姉様に何かあったかと思うと、止められませんでした。ごめんなさい。」


「うん、よろしい。」


ロイスはフリーシアに優しく微笑んだ。

三人は出かける支度をし、正面玄関で鉢合わせた。

ジンは今も落ち込んでいる。


「じゃ、僕は魔導研究所だから二人とは別方向だから、気を付けてね。」


ロイスとフリーシアはジンを見送り、手を振った。


「ねぇ、フリーシア?ジンには悪いんだけど、落ち込んでるジンって初めて見るからなんだか面白いね。」


そう言うと、二人はくすっと笑い合った。


「私たちも行きましょうか。」


二人は下街の露店へと向かった。

城を出た時、微かに遠い方からの視線を感じていたが、気にしないよにしていた。

ジンは魔導研究所の前の門に立っていた。


「どうやったら入れるんだろ・・・。」


ジンは門のあちこちを触ったり、観察したりしていると、一人の研究員が出て来た。


「こら!そこの子供!何してるんだ!」


ジンは声のする方へ視線を向ける。


「すみません、魔人の件でお伺いしました。解析官殿はいらっしゃいますか?」


「解析官だと?その名前は?」


ジンは会議のことを思い出すが、名前を名のっていなかったことに気付く。


「名前は・・・。忘れました。魔人の核の件で、ジンと言って貰えれば分かると思います。」


「おま、それは国家機密だぞ。なぜそれを・・・。」


中から騒ぎを聞きつけたのか、もう一人出て来た。


「まぁまぁ、この子が知ってて当然です。なんせ、この魔人を倒した張本人ですから。」


「ベルモネ様・・・。と、言うと彼が核の第一発見者ですか。」


ジンはその人の顔に見覚えがあった。

会議で魔人の核を渡した解析官その人である。


「ええ、そうです。私に用事があるのでしょう、通してあげなさい。」


最初に出て来た男はベルモネに頭を下げると、門を開いた。


「それじゃぁ、ジン君、私に着いて来なさい。」


ベルモネはそう言うと、踵を返して研究所の中へと入って行った。

ジンは慌ててベルモネの後を追った。

石造りでできたこの研究所は入り組んだ迷路のような道になっており、二人はこの迷路を進むと、行き止まりに到達する。

ベルモネはその行き止まりの右にある壁の石を一つ、押し込むと、行き止まりにして拒んでいた医石の壁が突然、動き出し、新たな道を作り出した。


「さ、この先ですよ。」


それから少し歩くと、急に開けた場所に出る。

そこには透明なタンクの中に一体づつ、何かの生物が入っている。

そんな光景が広がる。

二人はその間を抜けてさらに奥へと歩いて行く。

その先では、魔人や魔獣から出てくる、魔結晶を使った実験などを行っていた。

ベルモネはまだ奥に向かって歩みを進めると、またしても壁に阻まれた。

しかし、今回の壁には電話ボックス程の大きさのある窪みがあった。


「さ、ジン君。ここに入って下さい。」


ジンは言われた通り、窪みの中へ入って足元をちらっと見ると、魔法陣が描かれていた。

ベルモネも窪みの中へ入り、何やら聞いたことのない呪文を唱えると、足元が眩く光だし、ジンとベルモネを包み込む。

白く発光した光はすぐに消えていき、視界が元に戻った。

しかし、そこはさっきまでいた場所とは違うところに立っていた。

ジンは景色が変わっていることに驚いていると、ベルモネが答えた。


「失われた古代魔法。空間を移動する魔法さ。」


そう言うとベルモネは歩き出した。

ジンもベルモネについて歩いて行く。

そして、一つの装置の前で止まった。


「これが、ジン君から預かったコアだよ。」


そこには、リコルディアが残した魔晶核があった。

薄っすらと、不気味に明滅を繰り返している。


「色々と調べてみてるんだけど・・・。今のところこの核は魂そのものと言うことが分かった。」


「魂そのもの・・・。」


ベルモネは深く頷いた。


「これが自然発生したものか、人工的に作られたものかはまだ分かっていない。」


「そうなんですね。」


ベルモネから魔晶核の研究結果を聞いていた時、突然ゼンの声が頭にに響く。


「─ジン。ロイスの魔力が消えた。」

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