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第47話 歪んだ愛情

ジンは研究所を飛び出し、空へ至る魔法(フルトーレ)でロイスの魔力が途切れた所を目指す。


ゼン、こっちで合ってるのか?


「─ああ。フリーシアがこっちに来ている。」


フリーシアが・・・。


しばらくゼンに言われた方角に飛んでいると、その方角からフリーシアがこちらに向かって飛んで来るのを視界に収める。


「ジン!お姉様が!!」


二人は空中で止まると、ジンが説明を求めた。


「ロイスに何があった?」


「お姉様と一緒に露店回ったりしてたら、その・・・。急にいなくなって・・・。探したけど、いなくて・・・。」


フリーシアはロイスがいなくなったことで、動揺して冷静さを欠いていた。


「フリーシア、落ち着いて。深呼吸。」


ジンはそう言い、フリーシアに深呼吸させた。

フリーシアは深く息を吸い、そして息を吐く。


「ロイスが、いなくなったんだね?」


ジンはフリーシアにゆっくりと聞いた。


「ええ。一緒に歩いてたのに、後ろを振り向くとお姉様がいなくなってたの。」


ジンは顎に手を当てて考える。


ロイスの感じていた視線・・・。

もしかしてロイスを狙っていたのか?


「周囲でおかしなことは?」


「そんなことは、無かったわ。昨日と変わらない露店街だったわ・・・。」


フリーシアはその時のことを思い出しながら伝える。


「分かった。ロイスが消えた所に案内して欲しい。」


「分かったわ。」


二人はそう言葉を交わすと、ロイスが消えた所に降り立った。


「ここは・・・。」


「ええ。昨日、お姉様が視線感じた場所よ。」


二人は昨日、ロイスが見つめていた路地への入り口を見つめる。


「この人だかりの中だから、魔人や魔獣はまずないわ。」


「人攫い・・・か。」


ジンは強く拳を握った。


「ごめんなさい、私が側にいながらお姉様が・・・。」


フリーシアは悔しそうに俯く。

その体は僅かに震えていた。


「フリーシア・・・。僕は君だけを責めるつもりは無いよ。ロイスが違和感に気付いてたのに、別行動をとった僕にも責任はあるさ。」


ジンはフリーシアの頭を優しく撫でると、笑いかけた。


「ジン・・・。」


フリーシアはジンの言葉に、俯いていた顔を上げた。


ゼン、ここから君に任せてもいいかな?

君の力が必要だ。


「─ああ。」


ジンは目を閉じる。そして次に目を開いた時、その瞳は深い青色へと変わっていた。

纏う魔力の変化を感じたのか、フリーシアは「ゼン・・・?」と呟いた。


「そうだ。」


そう答えると、ゼンは魔力ピン・・・と、静かに開放した。

ロイスの魔力が消えた場所に重なるように他人の魔力の残滓を見つける。


「見つけた。」


ゼンはその残滓が辿った道を歩みだす。

フリーシアはゼンの後について行く。


「俺から離れるな。死なれても困る。」


ゼンはその一言だけフリーシアに声をかけた。


「ええ。」


昨日、ジンが確認した路地に向かって魔力の残滓は入って行っている。

二人は慎重に進み、やがて壁にあたる。


「この壁を越えてるな・・・。」


二人は空へ至る魔法(フルトーレ)で壁を超える。

そこは表の露店街の騒がしい声は届かずに静けさが広がり、薄暗い空間になっていた。


「なんだか不気味ね・・・。」


フリーシアは辺りを警戒しながら小さく呟いた。

しばらく魔力の残滓を追って入り組んだ路地を進むと、一つのドアへと辿り着いた。


「見られてるな・・・。」


ゼンはフリーシアに聞こえる程の大きさで呟いた。

フリーシアはその言葉を聞き、辺りを見回すが、誰もいない。


「フリーシア、俺に何かあったらすぐに逃げろ。いいな?」


ゼンはそう伝えると、ドアノブに手をかけた。

ゆっくりとドアノブを回すと、ガチャ・・・。と開く。

静かに、ゆっくりとドアを開き、一歩入ったその時、ドアの影から何かが振り落とされた。

ゼンは咄嗟に自分を守ろうとしたが、遅かった。

ガシャン!と鈍く音が響き、ゼンが倒れる。


「ゼン!」


フリーシアはゼンに駆け寄ると、頭から血を流していた。

ゼンの側でしゃがんだ時、背後に気配を感じて振り向こうとしたが、棒状のもので後頭部を殴られ、フリーシアまでも気絶する。


「ロイス。ああ、ロイス。」


ロイスは知らない声を聞き、ぼんやりとした意識の中で目を覚ます。

目を開けているはずなのに、暗い・・・。


「んー!んー!」


手足も縛られて身動きが取れず、ベッドで横になっている感触は分かった。

口にも布が巻かれ、喋ることを禁じられている様だ。

ロイスは今の状態を理解できず、胸の奥がずんと重くなり、鼓動が早くなる。

いくら体を動かそうとしても動けない。


「ロイス、目が覚めたんだね。」


すぐ耳元で知らない声が聞こえる。

誰のものかも分からない感触が、頬を伝う。

それはロイスの体をゾッとさせ、ロイスは首を振って対抗するが、その手に顎を抑えられる。


「怖がらなくていいよ。ロイス。」


唇を触られる感触と、太ももを摩られる感触がロイスに伝わる。

ロイスはそれがとても気持ち悪く感じ、体を動かして抵抗する。


「んー!」


「ロイス、そんなに暴れちゃダメじゃないか・・・。まぁいい。必ずあいつは来るだろうさ。その時まで取っといてやるよ。」


その言葉を最後に、ドアが開かれる音が聞こえ、静寂がロイスを包む。

それからどれぐらい経っただろう。

ロイスはなんとか逃げようと藻掻いたが、やがて疲れ果ててしまう。

そんな時、再びドアが開く音が聞こえた。

ドサッと、隣に何かを置かれる音が聞こえ、ベッドが沈む。

その後、ずるずると、何かを引きずる音が聞こえて来た。


「くっくっく!この時をどれだけ待ちわびたことか・・・。なぁ、ジン・・・。お前の見たくないもの全部見せてやるよ。」


ロイスの耳にその名前が届く。


ジン!?

ジンがいるの!?


その名前に、ロイスの体に何とかしようと、力が込みあがって来た。


「んんー!んー!」


ロイスは再び、この状況に抗おうと体をバタつかせる。


「ロイス・・・。ジンと聞いて喜びすぎだろ・・・。」


足音がロイスに近づいてい来る。

何者かの手が、ロイスの顎を乱暴に、力強く引っ張り上げる。


「ロイス、お前は俺に従順にしてればいいんだよ!」


そう言うと、力任せに手を離され、ロイスの顔がぐらりと揺れる。


「大人しくしていたら、大事にしてやる。あいつは危険だが、俺は優しいんだ。」


再び、ロイスの頬を何かが伝う。

その時、引きずられて椅子に縛られたジンの指がピクリと動く。

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