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第40話 村に紛れた狂気

三人はフラトスの街に到着すると、従車を引き取り、宿の荷物を整理してフラトス冒険者ギルドへ向かった。


ジンとフリーシアは従車から降りる。


「ロイスはここで待ってて。すぐに帰って来るから。」


ジンの言葉に、ロイスは小さく頷いた。

ロイスの返答を見届けると、ジンは従車のドアを閉じてギルドの中へと入って行った。

二人は受付の女性に話しかける。


「フリーシア様、ジン様。おかえりなさい。すぐにギルド長をお呼びしますね。」


受付の女性にそう言われ、奥の応接室に案内される。

ジンとフリーシアはソファーに腰掛け、ハマードが来るのを待った。

五分と待たず間に、応接室のドアがノックされる。

静かにドアが開き、ハマードが入って来る。

ハマードは小さくお辞儀すると、向かい側のソファーへと、腰掛ける。


「竜の調査依頼の件・・・ですね?」


ジンとフリーシアは頷いて答えた。


「結論から話すと、あの竜は人間に危害を加えるような竜では無いわ。」


ハマードは少し目を細めて確認する。


「なんと、そんなことが分かるのですか?」


「はい、会話が成立し、意思の疎通もできました。」


ジンは言葉を選び、静かに答えた。

ハマードは少し目を大きくし、驚きの表情を浮かべた。


「まさか、竜の上位種!?」


「ええ、竜は自らの名を名乗ったわ。名前は・・・。幻聖竜─イルジーオ。」


「なっ・・・。」


ハマードは更に目を大きく開き、体を仰け反らせる。

ソファーが僅かに軋む。


「幻聖竜・・・だと!?」


「ええ、はっきりと、そう答えていたわ。」


ハマードは顎に手を当てて考え込む。


「二人共、よく帰って来れたな・・・。幻聖竜と言えば何百年も前に人と暮らしていたと記述のある幻の竜の一体だ・・・。」


「ええ、少し危なかったわ。特に、調査じゃなくて討伐だったら帰って来れなかったでしょうね。」


フリーシアはそう言うと、小さく溜息をつく。


「イルージオは人間には手を出さない、そう言ってました。」


シンはイルージオが笑いながら手を出さないと言ったことを伝える。


「だから、こちらから何かしない限りは安全よ。」


「そうだったか・・・。」


ハマードはは膝に両肘をつき、俯いて大きく溜息をつく。

しばしの沈黙の後、呟くようにハマードは口を開く。


「分かった・・・。手を出さない様にしよう。街の皆には安全だが接触禁止としてと伝えよう。」


そう言うと、ハマードは懐から、小袋を取り出した。

それを机に置くと、ジャラッと音を立てて少し潰れる。


「成功報酬だ。受け取ってくれ。中には30万リル入ってる。」


フリーシアはそれを受け取ると、懐にしまった。


「竜の調査は以上よ。」


そう言うとフリーシアは立ち上がった。

ジンもフリーシアについて立ち上がる。


「ああ、助かった・・・。」


ジンとフリーシアがギルドを出るとき、受付の女性とハマードがお辞儀をし、見送られる形でギルドを後にした。

三人は従車でフラトスの街を出ると、ここまで来た道を辿ってグルナーレへと向かった。

従車の中ではロイスが困惑していた。

それは、お構いなしにフリーシアがロイスにくっついていたからだった。


「お姉様は凄いのよ!」


ロイスに思い出して貰おうと、色々と話しかけている。

ジンはその様子を、少し呆れた顔で見つめている。


「フ、フリーシア・・・ちょっと恥ずかしいよ・・・。」


ロイスはジンをちらちら見ながら恥ずかしがってはいたが、拒絶はしなかった。


「フリーシア、ロイスがちょっと嫌がってるよ?」


ジンはフリーシアを諭そうとしたが、


「こうやって話してたら、何か思い出すかも知れないでしょ?」


フリーシアはジンに鋭い視線を向け、威嚇した。

ジンは苦笑し、フリーシアを止めるのを躊躇った。


「本当に、フリーシアはロイスが好きだな・・・。」


ロイスはフリーシアを他所に、ジンに質問をした。


「ねぇ、ボクたちはなぜ旅をしてるの?」


ジンはロイスの質問に、少し間を置き、ゆっくり答えた。


「それは・・・。闇を払う為だよ。」


「闇・・・?」


ジンは深く頷くと続ける。


「アルヴォル・クリフォティカと言う魔人を倒すことが今の目的で、僕たちは既に二体倒してる。もちろん、ロイスも一緒に。」


「そうだったの・・・。思い出せない。」


ロイスは少し俯いた。


「今は無理に思い出さなくても大丈夫。その内思い出すはずだ・・・。」


ジンはロイスに笑いかけた。


「そうかな?」


そう言うとロイスも笑いかけてくれた。


記憶は無くなっても、ロイスはロイスなんだな・・・。


ジンは記憶を無くしても知っているロイスでいてくれて、胸が温かくなっていた。


「お姉様・・・。」


「もう、フリーシアったら・・・。」


順調に来た道を従車が走り、三日程経った夕刻、一つの村にたどり着いた。

従車は村の入り口で止まると、三人は従車から降りる。


「なんだか、おかしな雰囲気ね・・・。」


一度通ったことのある村だったが、フリーシアがすぐに村の異変に気付いた。

三人は慎重に村の中へと足を踏み入れる。

その時・・・。


「──ジン、魔人だ!」


ジンの頭の中でゼンの声が響く。


「ゼン!?魔人だって!?」


フリーシアはジンの言葉に驚くと、警戒態勢に入る。

ジンも辺りを見回し、注視する。

そこに一人の村の女性が話かけて来た。


「おや、旅人さんかい?」


──ゼン、この人か?


「──いや、子供に紛れてる。」


子供!?


ジンは一度警戒を解き、話しかけてきた女性と話をする。


「ええ。フラトスからグルナーレに向かって。」


「グルナーレかい!?また遠い所に行くのね。」


ジンは小さく頷くと、少しだけ周囲に視線を巡らせた。

子供の声は遠くから聞こえてくるそれでも・・・。


「この村、少し静かですね・・・。」


その言葉に、女性の表情がほんの僅かに曇る。


「そうかい?小さな村だとこんなものでしょう・・・。」


そう言うと、その女性は僅かに俯いた。


「もしよろしければ、村長に挨拶したいのですが、案内お願いしてもよろしいですか?」


「ええ、もちろんですとも。」


その女性は、そう言うとジン達を村長の元へと案内してくれた。

その道の途中で、五人の子供が走ってくる。

皆は楽しそうに笑顔ではしゃいでいる中、独りだけ・・・表情が無く、その瞳には生気が宿っていなかった。

ジンはその子を見た瞬間、魔力武器化(アルマニティ)で雷の剣を作り出していた。

その姿を見て、子供たちは皆、叫びながらどこかへ散ってしまった。

が、その魔人と思われる子供は立ち止まり、ジンを見据えている。

その子供は、ゆっくりと口元を歪めた。

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