第36話 反撃の熱線
第35話が長かったので
第35、26話に分割致しました。
ロイスは・・・。
エンティアの声が届かない所まで上空に飛び立ったので効果が及ばなかった。
強化魔法で少なくなった魔力を回復する為、亜空間バックから魔力ポーションを取りだし、飲み干す。
「全力最大で・・・。」
ロイスのありったけの魔力が一点に集約されていく・・・。
集中しながら、ロイスはその時に備えた。
ゼンはさっきと同じように動こうとせず、止まるように意志変換を行おうとするが
それでも動けない。
「なっ・・・く!」
「なによ・・・これ・・・。」
フリーシアも何とか呪縛を振りほどこうともがいてみるが意味をなさなかった。
エンティアの右目から一筋の血液が零れ落ちる。
エンティアはその血をぬぐい、無言で手に付いた血を眺める。
「さぁ、君たち、ここからどう戦うのですか?あのお嬢さんの魔力は・・・。感じませんね・・・。」
エンティアは顎に手を添えながら二人にゆっくりと近づいて行く。
「まぁ、良いでしょう。さっきも言いましたが私は話すのが好きだ。私を楽しませてくれた褒美としましょう。」
エンティアは二人の間をゆっくりと通り抜けながら続ける。
「私の能力は気づいている通り、言葉を発して事象を書き換えることができる能力。その能力は二段階。」
エンティアは反転し、今度は後ろから二人の間を通り抜けようとした時
ドスッ!と重たい音が響く。
フリーシアの腰からお腹をエンティアの腕が貫通する。
ゼンの目の前でフリーシアはエンティアに刺された。
「ごはっ・・・。」
フリーシアの口から鮮血が吐き出される。
「フリーシ・・・ア・・・。」
ゼンの声がか細くその名前を呼ぶ。
その声はフレーシアには届かなかった。
血の味・・・初めて。
止めようとしても喉の奥からどんどん溢れてくる。
意識が・・・朦朧として・・・。
痛み・・・感じない。
私、こんなところで死んじゃうのかな・・・。
やだよ、おか・・・様。
フリーシアの意識はそこで途絶えた。
くそ・・・。
フリーシアがやられた・・・。
ゼンは動くこともできず、ただただ、フリーシアを見つめるしかなかった。
エンティアは貫通した腕を引き抜くと、そこから大量の血液が滴り始める。
フリーシアの血が付いた腕を眺めながら言葉を続ける。
「二段階目は絶対命令!どんな強靭な人間、魔人でも必ずこの言葉には支配される。」
エンティアは二人の前に立ち、ゼンとフリーシアに視線を移す。
「まぁ、私自身回復できないことと、多少精神的ダメージは在りますがね。」
ゼンは声を振り絞ってエンティアに話しかける。
「くそ・・・。あんた・・・ほんとに喋るの好きだな・・・。」
ゼンの怒り交じりの言葉に、エンティア目閉じ、頭を少し下げる。
「ええ、そうですとも。能力を話したところで所詮・・・私のことは倒せません。」
ゼンはその言葉を聞き、鼻で笑った。
「語るに落ちたな・・・。」
エンティアはその言葉にピクリと反応し、鋭い視線でジンを見据える。
「この状況で・・・今、なんと?」
ゼンは動けないので視線だけを空に移し、ただ一点だけを見続けていた。
「上さ・・・」
ゼンは小さく呟いた。
エンティアはゼンのその視線を追い、空を見上げる。
太陽が真上にあり、あまりの眩しさに手をかざす。
「何も、ないじゃないですか・・・。」
エンティアはゼンに視線を戻す。
その瞬間、
「!?上空から魔力反応?」
エンティアは再び空を向く。
太陽に被さり、紅蓮色の熱線が視界を覆いつくす。
「ぐあああ!」
ロイスは熱線を放ちながら空から降りてくる。
その距離が縮むにつれ、より熱く、より強くなっていく。
「そういう・・・ことですか・・・。」
やがてエンティアの肉体は焼き尽くされ、跡形もなく消え去った。
残ったのは地面に空いた焼け焦げた穴と、魔晶核だけだった。
エンティアが消失したことで、ゼンとフリーシアの呪縛が解け、体に自由が戻る。
しかし、フリーシアは力なく倒れ込む。
「フリーシア!」
ゼンはフリーシアを受け止め、仰向けにしてそっと地面に横にする。
「くそっ、出血量が多いな・・・。」
ゼンはありったけのフルポーションを取り出し、フリーシア傷口にかける。
「ううっ!」
傷に染みる激痛でフリーシアは悶える。
「すぐ回復させてやる。耐えろ。」
ゼンはフリーシアの傷口にそっと両手を添える。
その手は微かに震えていた。
「聖水の癒し」
ゼンの両手が水色に輝き、フリーシアの傷がゆっくりと、塞がっていく。
「ゼ・・・ン・・・。」
フリーシアの意識が戻りかける。
「フリーシア、今はしゃべるな。」
空から戻って来たロイスは二人を見るなり、一目散に駆け寄って来た。
「フリーシア!!」
ロイスはフレーシアの隣で地面に膝をつけてしゃがみ込む。
「フリーシア!」
ロイスは心配そうな表情を浮かべ、フリーシアの傷口を見る。
「ゼン、フリーシアは?」
ゼンは少しの沈黙の後、口を開く。
「俺の回復魔法じゃ完全には・・・。」
「分かったわ・・・。」
ロイスは残りの二本の魔力ポーションを飲み干す。
「ゼン、変わって・・・。」
いつもより真剣な表情のロイス。
ゼンは場所を譲り、二人を見つめる。
ロイスは目を閉じ、集中する・・・。
「フリーシア、絶対助けるから・・・。」
ロイスはフリーシアと二人で王都の下街に出かけたこと、その夜一緒に寝たことを思い出す。
──お姉様
ロイスの周囲の温度がどんどん上昇し、紅色の光に包まれる。
感じる・・・。
フリーシアの魂の波動・・・。
「不死鳥の炎環」
周囲の光が強く発光するし、三人は紅色の光に包まれた。
フリーシアの致命傷のはずの穴の開いた傷は、ゆっくりと、確実に治っていった。
「間に・・・あった・・・。」
フリーシアの傷が癒えると、魔力を使い果たしたロイスは気絶し、静かに倒れる。
「ロイス!」
ゼンは倒れかけるロイスを受け止め、そっと地面に横にした。




