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第30話 第2層(セカンドインバース)

ルミリア・ルネートへ行くための船を探しに、3人は街の漁港に来ていた。

しかし・・・。


「ルミリア・ルネートだと!?あんな場所に船なんか出せるか!」


何人もの人に、そう断られ続けた。


「もう、何回目よ・・・。」


フリーシアは座って港から足を放り出し、プラプラさせている。


「そうね・・・。誰かいないのかな・・・。」


ロイスは鉄策に寄りかかり、海を眺める。


「よお!お前らか!?」


すぐ近くから男の声が聞こえた。

3人は同時に声のする方へ視線を移す。

そこには、若い男が片腕を上げてこちらに歩み寄ってくる姿があった。


「仲間の漁師たちから聞いたぜ?お前ら禁忌の島に行きたいらしいな?」


「禁忌の島?」


ロイスとフリーシアが顔を合わせる。


「ああ、ルミリア・ルネートは禁忌の島て言われていて近づく奴はいねえのさ。」


若い男は両手を腰に当てる。


「しかし、俺が連れてってやるよ。」


「ほんとか!?」


ゼンが食い気味に迫る。


「ああ、お前らみたいな若いもんが、あの島に行くってんだ。力になってやるよ。」


「お姉様、やった!!」


ロイスとフリーシアは喜びのあまり抱き合った。

ゼンは少し口角を上げて右手を握り締める。


「俺はガルシアだ、よろしくな。」


4人は挨拶を交わし、早速ガルシアの船に乗り、禁忌の島、ルミリア・ルネートへと出発した。

出発してからしばらく経って、


「なぜ、ルミリア・ルネートは禁忌の島になったんですか?」


フリーシアがガルシアに尋ねる。

舵を握り、海の先を見ながら答えた。


「あの島には幾度となく、人が渡ったんだ。だが・・・誰も返って来なかったのさ。」


「誰も・・・?」


フリーシアは少し考え込む。

そこに・・・。


「おかしいな?波が静かすぎる・・・。」


ガルシアは辺りを見回す。

すると突然、目の前の海面が盛り上がった。

その海面の中から出てきたのは鯨ほどの大きさはあろう、イカが姿を現した。


「まずいな、海峡の主だ・・・。」


ガルシアは舵をめいいいっぱい面舵にきる。

海峡の主が出てきた時の衝撃の波が船を大きく揺らす。

甲板に立っていたゼンとロイスはよろめく。


海峡の主はその巨体から、大きな触手を振り下ろし、船に攻撃をする。


「させない!!」


フリーシアは大きな氷塊を作りだし、その猛攻を防ぐ。

海峡の主の攻撃は船には届かない。


「海は俺の独壇場だぜ?」


そう言うとゼンは両手をかざす。

主の周囲の海面から渦巻くように鋭い棘が無数、立ち昇り主を貫く。


「加勢するわ。」


フリーシアは空気中の水分を凍らせ、いくつもの氷の槍を形成した。

その槍はフリーシアの号令で勢いよく主に突き刺さり、主の体勢を仰け反らせる。


「お姉様!今よ!!」


ロイスは両手を大きく広げ、炎を作り出す。

両手を前に合わせると炎は揺らめきながらが重なると、一つに圧縮される


炎帝の熱線(アルドリス・イグニス)


一気に解き放たれた熱線は主を貫き、焼け焦がす。

その体には大きな、めらめらと焦げた穴が空いていた。

力を完全に失った主は、海面下へと沈んでいく・・・。


「お前ら、すげぇな・・・。」


ガルシアは小さく呟いた。


主を倒した一行は港から出発して時間で言うと6時間ほど進んだ時、島が見えてきた。


「大きい・・・。」


想像より大きな島にロイスは言葉が漏れた。

ガルシアは島の浅瀬に船を停泊させた。


「ガルシアはここで待っててくれ。」


そう言うとゼンは空へ至る魔法(フルトーレ)で静かに離れ、ルミリア・ルネートの地へと足をつける。

ロイスとフリーシアも続いて降り立つ。

浅瀬の砂浜から向こうは山のようになっていて、森が続いていた。

森の入り口は、何かが潜むように静まり返っている。


「ねぇ、ゼン。アルカムプルビトゥってどんな見た目してるの?」


「そうね、それが分からないと探しようがないわ。」


ロイスとフリーシアがゼンの隣に並ぶ。


「そうだな。大きさは拳大の大きさで、見た目は7色に淡く輝いている。」


「他に情報は無いの?」


ゼンは腕を組み、考える。


「確か・・・日光が良く当たるところを好んでたはずだ。」


「じゃあ、森の中や洞窟はなさそうだね。」


ロイスは森を見て2人に提案する。


「じゃあ、まずは一旦空から探してみよう。」


ロイスの提案に二人は頷いた。

3人は再び空へ至る魔法(フルトーレ)で静かに空へと舞い上がる。


「上を目指そう。」


ゼンはそう言うとゆっくりと島のてっぺに向かった。

森からは鳥のさえずり、大きい生き物が歩く大きな足音、魔物が唸る声などが、不気味に聞こえた。


「もしかしてあそこか?」


ゼンの視線の先、ぽっかりと空いた森の中央があった。

3人は森の中央に行くと、そこだけ陥没したように空洞ができていた。

そこに一本だけ気が生えており、日差しに当たって葉が煌めく。

その木にそれはあった。

七色に淡く輝く果実・・・。

3人はアルカムプルビトゥの木の前に降り立った。

空洞の中は、先ほどまで聞こえていた生物の痕跡の音がまるで無く、静寂そのものだった。


「やけに静かだね・・・。」


ロイスが辺りを見回しながら口にした。


「ああ。だが、目的の物は見つけた。」


ゼンはそう言いながらアルカムプルビトゥを一つ、もぎ取った。

一度、アルカムプルビトゥを見つめ、一口かじろうとした時。


「ゼン!待って!」


ロイスがゼンの腕を引っ張り、その行為を止めに入った。


「何するんだロイス。俺が死ねば丸く収まる。」


その言葉にロイスは首を横にする。


「貴方も生きてるの、私たちと同じよ?」


フリーシアもジンの腕を引っ張っているロイスの手に重ねる。


「私もそれは反対だわ。お姉様の言う通りよ。」


「じゃあ、どーすんだよ!他に方法は無いだろ!それともお前らどっちかが犠牲になるか!?」


ゼンはロイスとフリーシアの手を振りほどく。


「方法ならあるかも知れない!ね、一緒に探そ?」


ロイスは必死にゼンを説得しようとする。


「どんだけ時間かけるつもりだよ。間に合わなくなるかも知れねぇんだぜ?」


ロイスの眉間にしわが寄る。


「だとしても!誰かが犠牲にならい方法は有るかも知れない!」


「ロイスもフリーシアも、俺みたいな変な奴よりジンの方が良いに決まってる!」


ロイスは静かに首を横に振り、ゼンの言葉を否定する。

そのままロイスは少し俯き、目を閉じた


「ここまで一緒に旅をして、一緒にご飯食べて、一緒に海峡の主も倒した。貴方ももう、私たちの仲間なの・・・。」


「ええ、そうよ。」


フリーシアはロイスの肩にそっと手を置いた。

ロイスは目を開き、ゼンへと視線を移す。


「貴方がいなくなれば、ジンや私たちが悲しいの・・・。だって貴方はもう一人のジンなんかじゃない。貴方は貴方なの。」


ロイスの目が涙で潤む。

泣きだしてしまうのを我慢していた。

ゼンはそんなロイスを見て視線を横に逃がす。


「やめろよ・・・。そういうの・・・。」


ロイスの投げかけた言葉に、ゼンは何も言えなかった。

握りしめている果実に、僅かに力がこもる。


「案外、他の方法が見つかるかも知れないわよ?」


フリーシアはゼンに、柔らかい視線を送る。


「2人して・・・。俺の何を知っているんだ・・・。俺には何もないというのに・・・。俺は・・・空っぽだ。」


ゼン声は徐々に小さくなり、2人を逸らすかのように俯き、目を閉じる。


「・・・孤独。・・・だったんでしょ?」


フリーシアのその言葉にゼンは目を見開く。


「見てれば分かるわ・・・。もちろん、最初聞いた時は驚いちゃったけど、貴方は人間そのものだわ。人同士の接触の仕方に戸惑いがあるだけで・・・。」


フリーシアは腕を組み、続ける。


「ジンの中で魔法は学べても、人との接し方は何も学ばなかったのね。」


フリーシアは腕を組んだままそっぽを向く。


「本当に・・・馬鹿だわ・・・。」


そっぽ向いたはずのフリーシアの顔には何処か切なそうな表情を浮かべていた。


「フリーシア、それはちょっと言い過ぎじゃない?」


ロイスはフリーシアをなだめようとした。

フリーシアは目を伏せ、小さく呟いた。


「その気持ちが分かるから・・・ほっとけないのよ。お姉様・・・。」


「フリーシア・・・。」


ゼンもフリーシアが自分たちに会う前まで孤独だったことを知っている。

フリーシアの言葉が軽くないと知っている。

ゼンの果実を持つ手が緩んだ。


「2人とも・・・。」


ゼンが何かを言いかけようと顔を上げたその時・・・。

大気が揺れ、空洞の岩盤からポロポロと小石が落ちてくる。

異常なまでのプレッシャーが3人に重く、のしかかる。

これまで静かだった空洞に、生物たちの鳴き声がこだまする。

空から降りてくる圧に、体は抗えず、押し潰されるかのように膝が沈み、関節が軋む。


「く・・・そっ。油断・・・した!」


上空から3人の前に降り立ったのは、一体の魔人だった。


「おやおや、それが仲間というものですか、理解に苦しみますが・・・。実に興味深い。」


魔人は片腕を胸元に添え、静かに頭を下げた。

その仕草には、感情の気配が一切なかった。


「私はアルヴォル・クリフォティカ。第2層(セカンドインバース)、エンティア・・・。どうぞお見知りおきを。」


その声は空洞の奥へと反響し、逃げ場のない空間にじわりと染みわたっていく。


こんな所でまさかのアルヴォル・クリフォティカとエンカウント!

どんな戦いになるのか!?

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