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第20話 静寂な森と八つ目の魔獣

2人は森の前に立つ。

日は上り、昼間だと言うのに夜のように暗かった。

鳥のさえずりすら聞こえない。

生き物の気配も感じることすら出来ない。


「静かすぎる・・・。気配がない。」


森の奥から風が抜ける。

静かに空気が重くなる。

その風には鉄の匂いがほのかに混じっていた。

二人はその匂いに緊張する。


「間違い無さそうね。」


ジンとロイスは森の奥を見つめる。

ロイスは枝を折り、先端に火を灯す。

ゆっくりと森の中へ入っていく。

やけに足音だけが響く。

しばらく森を奥に歩いて行くと・・・。


「ジン、見て。」


ロイスはそう言うと、松明を下に向ける。

そこには大きな何かを引きずった後と、黒い血痕が森の奥へと伸びている。

二人は顔を見合せ、辺りを警戒しながらそれを追った。

進むに連れ、木々がなぎ倒されている場所に行き着く。

空気が冷たくのしかかる。

辺りを見回しても何も居ない。


「まだ奥かな・・・?。」


引きずられた跡はまだ先に伸びている。

暗闇の中、どこから襲われるかも分からない状態に、二人の息は少しず荒くなる。


気を抜いた瞬間、終わる。

さらにその後を辿って行くと、そこには・・・。

魔物の死骸があった。


「うっ!」


遺体は朽ち果て、ハエが大量に集り、異臭を放っている。

ジンとロイスは思わず鼻を覆う。


「この匂い、私・・・無理かも。」


ロイスは顔をしかめ、口元を押さえた。


「離れよう。ロイス、歩ける?」


ジンはロイスのてを引いて奥へと歩みを進める。

突然、ギチギチギチギチと、森全体から何かを擦り付ける音が響き渡る。


「ロイス・・・、気をつけて!」


「う、うん!」


前方からガサッ、ガサッと何かが歩いて近ずいて来る音が聞こえる。


来た──

足音が止まり、静寂が訪れる。

突然、目の前の暗闇から8つの赤く光る発光体が揺れた。

甲高い咆哮が空気を揺らし風の圧力となって二人に襲いかかる。

二人は思わず耳を塞いだ。

魔獣だ。

ロイスは咄嗟に空中に炎をいくつか浮かべる。

その灯りに魔獣の姿が浮かび上がる。

蜘蛛・・・?。

蜘蛛の魔獣は前足を振り上げ、ジン目掛けて振りかざす。

ジンはそれを避け、手をかざす。


雷の槍(ブルグ・ランケ)


ジンは雷の槍を魔獣に向けて放つ。

しかし、ガスッと音を立てて魔獣の装甲に刺さるが、浅い。

決定的な一打にはならなかった。


「なんて硬いやつなんだ・・・。」


蜘蛛の魔獣は後ろに飛び退き、口から糸を吐く。

ロイスは避けようとしたが間に合わず、足に糸が絡みついて地面に縛られる。


「ロイス!」


ロイスは炎で蜘蛛の糸を焼き、それから逃れる。


「大丈夫!」


ジンは思考を回す。

どこかに必ず弱点はあるはず・・・。


炎帝の剣(グロウス・イグニス)


ロイスのてから剣を成す炎が巻き起こる。

魔獣に一気に接近し、足の間接を切り落とす。

魔獣は体勢を崩し、音を立てて倒れた。

切り口には炎が残る。


「ジン、関節よ!」


魔獣は別の足で体勢を立て直す。


関節か・・・他にも弱点はないか・・・。

ふと、魔獣赤く光る眼光が揺れるのを視界に捉える。


・・・目か!?

ジンは魔物の瞳孔の動きをよく観察した。

あの目だけ、動きが違う。

ジンはもう一度雷の槍を形成する。

今度は外さない。

しっかり狙いを魔獣の目に定める。

その時、魔獣は関節がパキパキと鳴り、体が沈んだ。

魔獣はロイスに狙いを定める。

ロイスは魔獣の視線に気づく。


雷の槍(ブルグ・ランケ)


ジンが槍を放つと同時に、魔獣はジャンプした。

槍は空を裂く。

魔獣の着地地点は、ロイスの真上だった。

ロイスは勢いよく飛び、間一髪でぺちゃんこは免れたが、魔獣の足の追撃が襲い来る。

ロイスは、その追撃を転がって回避した。


強い・・・。

ジンは左腕の痺れが痛みに変わっていく。


モタモタしてられない。

ジンは左手を出し、集中した

出力最大・・・。


稲妻の波動(ウィブ・ラティオ)!!」


ジンは強く拳を握り締める。

魔獣の頭上が明るく光る。

その刹那、全ての音が消えた。

光は集束し、魔獣はその光に飲み込まれる。

ゴロゴロゴロ!と轟音が大気を震わせ、眩い閃光を放つ。


「ぐっぁっ!」


ジンは全身に痺れと激痛が走り、その場へ倒れ込む。

体が・・・熱い。


「ジン!?」


魔獣の体は焼け焦げ、身動きが取れない。


「ロ・・・イス。目・・・だ。」


ジンは絞るように声をだす。


ロイスはすぐさま振り向き、炎の剣を魔獣の目に突き立てる。

魔獣の中で炎が爆散し、あらゆる関節から炎が噴出する。

魔獣はゆっくりと塵となって行き、魔結晶だけを残して消え去る。

焼け焦げた森に、静けさだけが戻った。


ロイスはホッと息を吐くと、魔力武器化(アルマニティ)を解き、ジンの元へと駆け寄る。


「大丈夫?」


ロイスはそっとジンを起こす。


「大丈夫、痺れてるだけだよ・・・。ちょっとすれば動けるようになる。」


ロイスはしばらくジンを見てから、ゆっくりと正座をし、ジンの頭をそっと置く。


「なっ!?」


「頑張ったから・・・ご褒美。」


ロイスの声が小さくなっていく。

ジンは照れながら、体が動かなかった。


「動けるようになるまでだからね。」


ロイスはジンの目を手で覆い、瞑らせた。


──しばらく経って、二人は森を抜けて帰ってきた。

森を抜けると、二人はふわりと地面から足を離す。

宙に浮き、従車の所まで静かに空を翔った。


「ロイスは休んでて、村長のところに言ってくる。」


ロイスは頷き、従車に乗っり、ジンは村長の元へ足を運んだ。

村長の家のドアをノックする。

するとすぐにバルクが出てきた。


「中に入ってくれ。」


ジンは再び、バルクの家へ入っていき、テーブルの椅子に腰掛ける。


「どうだった?森の方から凄い音が聞こえたが・・・。」


ジンはポケットから魔結晶を取り出した。


「もう安心です。魔獣は討伐しました。」


それを聞いたバルクはテーブルに両手を置き、頭を下ろした。


「良かった・・・。」


「それと、魔獣は蜘蛛のような姿をしてました。もしかしたら、人間より魔物の肉が好みだったんじゃないかと思います。」


バルクは顔をあげる。


「魔物の肉が?」


「はい。森の中に魔物の死骸が多かったので、多分そうじゃないかと。」


バルクは顎に手を当て、考える。


「森の魔物、つまり食料が無くなってうちの村の家畜を狙っていた・・・と?」


「おそらくは・・・。元凶の魔獣は倒したのでもう大丈夫だと思います。」


バルクは立ち上がり、手を差し出した。

ジンはその手を握る。


「ありがとう。これで村も安泰だ。」


握手を交わすと、


「ちょっと待っててくれ。」


そう言うとバルクは奥へと姿をけす。

すぐに戻ってきて袋をジンの前にだす。

机に置いた時、ジャラッと音を立てて潰れる。


「50000リル入っている。受け取ってくれ。」


バルクはジンに差し出す。

ジンは受け取るか迷ったが、受け取るのが正しいと感じて報酬をしっかり受け取った。


「そろそろ日も落ちる。宿は無いが、空いてる家がある。そこに泊まっていきなさい。」


村長の勧めでその空き家を借りて夜を過ごすことにした。


ロイスはと言うと、


「やった!お風呂に入れる!」


と、喜んでいた。


村の灯りが落ち始め、静かな夜が何事も無かったかのように、ゆっくりと村を包んでいく──

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