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第2話 魂の解放と死の境界線

設定調整の為、ジンの精神世界の部屋の色を黄色→淡い紫色に変更しました。


「う・・・ん。あれ、ここは?」


少し考えながら辺りを見回す。

鳥の囀り、土の香り、緑に覆い尽くす森・・・


「そうか、僕は門をくぐって来たのか。夢を見てるのかと思った。」


「・・・ン、ジ・・・ン、ジン!」


どこか聞き覚えのある声が聞こえる。


「おい、大丈夫か?しっかりしろよ」


突然の声に辺りを見回した・・・

が、誰もいない。


「おい、どこ見てんだよ?目の前にいるだろ」


瞬きをし、次に瞼を開けたとき──

目の前が一変して鮮やかな淡い紫色の部屋に居たのだ。


「なんだ?さっきとはまるで景色が・・・違う?」


部屋を見渡すとそこに1つの扉があった。

ジンは不思議そうにその扉の前に立ち、ゆっくりと扉を開いた。


そこには通路が広がっていた。

左右を見るとどこまでも続いて居るようで奥は闇に沈んでいる。

するとジンが出てきた扉とはちがう青色の扉が

通路を挟んで反対がわに現れた。

その扉から出てきたのは──


もう1人の自分だった。


「遅えよ、待たせ過ぎだ。でも、ようやく会えた。」


ジンは口を開け、驚きの表情を隠しきれなかった。


「え・・・?僕が、もう1人・・・?いや、そんなはずない・・・。」


自分に言い聞かせる様に呟く。


「こんなことあるよ。俺とお前に限ってな。」


もう1人のジンが口を開く。


「俺の名前は、そうだな・・・ゼン、と名乗っておこう。容姿は同じでも少し違う。」


ジンは戸惑っていた。


「おっと、まずいな・・・。話はここまでだ。早く部屋に戻れ。」


ジンが疑問を口に出そうとした瞬間、ゼンに遮られた。

ジンは渋々、部屋へと戻った。

その瞬間、部屋が歪み目の前が真っ暗になった。

次に目を開けた時、見覚えのある森の中に立っていた。


「なんだったんだ?僕がもう1人?ゼン・・・?」


目まぐるしく襲い来る情報に頭がついて行け無かった。

しかし、確かに自分の中にゼンの気配を感じる。


──グルルル!


草むらの影から獣が喉を鳴らす音が聞こえた。


ジンは思わず1歩あとづさった。

草むらから犬のようで一回り大きい姿の獣?

いや、魔獣と呼んだ方がどれほど似合うか。


ヨダレを垂らした犬型の魔獣が目の前に現れた。

赤い光を宿した眼光ががジンを射抜く。


「そんな・・・、いきなりこんななんて聞いてないよ・・・。」


犬型の魔獣はジンの様子を見ながらジリジリと寄ってくる。


「何も・・・、持って無い。」


犬型の魔獣が何も持っていない丸腰のジンを安全だと認識したのか、容赦なく襲い掛かる。


「くっ・・・!」


間一髪、反応出来て横に飛び退いた。

──しかし、魔獣はそのまま反転して追撃してくる。

ジンは立ち上がる事が出来ず、左腕で攻撃を受けた。

・・・が、腕に3本の爪で出来た骨にまで到達する傷跡を残した。


「ぐっ!・・・がぁ!」


血は滴り激痛に悶え、蹲る。


まずいまずいまずい!

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!


初めて直面する死への恐怖。

今までに無いほど鼓動が早まる。


「ぐっ、おええぇ。」


緊張と恐怖、激痛に耐えきれず、嘔吐する。


初めて来た世界でいきなりの出来事。

こんなところで──


いやだ、死にたくない!


しかし、こんな森の中、誰かが助けに来てくれるなんてことはほぼ無いだろう。


犬型の魔獣が口を大きく開け咆哮を放つ。

その咆哮が大気を揺らし耳をつんざく。


来る。そう確信した時、魔獣が飛びかかって来るまでの時間が異様に長く感じた。


「はっ、はっ、はっ。」


呼吸が浅く、早くなっていく。

咄嗟に横に飛んで避けようとする。

が・・・体が全く動かない。


目を閉じ、死を覚悟した。

ジンの意識が遠くなる──

暗闇。


僕、死んだんだ・・・。

死ぬと思った時、世界から音が消えて静寂な闇へとなった。

心音だけが重く、響く。


「変われ──。」


頭の奥に直接響く声。

それはさっき出会ったもう1人の自分の声だった。


「・・・お前はまだ死んでない。」


意識が途切れる中、何かに引き戻される感覚があった。


──目を覚ました時、ジンはベッドに横になっていた。

知らない天井を見つめていた。


「あ、目が覚めたみたいね。」


聞き覚えの無い、可愛らしい声が聞こえた。

ジンは声のする方へ視線を移すとそこには、柔らかな赤茶色の髪をふんわりとふたつに結んだ、どこかあどけなさの残る可愛らしい姿をした少女がいた。

ジンは起き上がろうとすると、


「つっ・・・!」


左腕が痛み、小さく悶えた。

その痛みはだけがやけに現実的だった。

その患部を見た時、脳裏に焼き付いた死の恐怖が現実であることを指し示す。


ジンはベッドの上で浅く息をした。


「はっ・・・、はっ・・・。」


もう魔獣はいない、分かっている。

それでも鼓動が早くなるのが分かった。

思い出すだけで、指が、腕が、体が、恐怖で震えている。


ジンは体を探るかのように傷跡などないか

確かめた。


腕以外の傷は・・・無い。


「こ・・・こは?」


森じゃない?

分かってる。

ここは安全だ。

分かってる。

助かったのか?

助かった。

生きてるのか?

生きてる。


「────。」


遠くから少女が、何かを言っている声が聞こえる。

目の前にいるはずの少女の声が遠く歪んで聞こえた。


「・・・ぇ、ねぇ、聞こえてる?」


ジンは、はっと我に返った。


「まだ腕の傷は治りきって無いから、無理しちゃだめだよ?」


少女の声はまだ少し遠くに聞こえる。


「大丈夫?凄い汗が出てる!」


タオルで額の汗を優しくふき取り、少女はそっとジンを横にさせる。


「僕、生きてる?ここは天国かどこかかい?」


突然の問いかけに少女は口に手を当ててふふっと笑った。


「大丈夫。生きてるし、ここは幻界よ?」


「君・・・が、助けてくれたの?」


女の子は口を尖らせ人差し指を唇の下に押し付けた。


「ん〜、厳密に言うと倒れてる所を見つけて家まで連れてきたって感じかな?」


気を・・・失っていただけ?

助かったことに対して、未だに信じられないでいた。


「あ、ありがとう。えーと・・・。」


「あ、ごめんなさい。私は、ロイス・サナティ。よろしくね」


にっこり笑って手を伸ばした。

その笑顔がまた可愛らしい。


「僕はジン。ジン・ウィアトル。こちらこそよろしく。」


「所で僕、犬型の魔獣?みたいなのに襲われてたはずなんだけど・・・。」


恐る恐る、魔獣の存在を確認した。


「魔獣は居なかったわ。でも倒された痕跡は残ってたの。魔水晶が落ちてたわ?ジンが倒したんじゃないの?」


ロイスは魔結晶を取り出して黙る。


「僕じゃないよ・・・。これ、倒したの?」


ロイスは不思議そうにジンを見つめ、嘘はついてなさそうに見えたのかにっこりと笑った。


「ええ。」


ジンはその話を聞き、少し俯いた。

僕はあの時確実に気を失った。

一体、誰が・・・?。

その答えには薄々感づいていた。


はっ!と我に返りロイスの方を見る。

不安げな顔をしていた。


「でも、手当までしてくれて・・・ありがとう。」


そう言うと、ロイスはにっこりと笑い。


「いいえ。」


と答えてくれた。


「それにしても・・・。」


ロイスは顎に手を当て、上から下まで値踏みするように観察している。


「白い髪の毛なんてとても珍しいわね。何処からきたの?」


ジンはロイスの問い掛けに一瞬うっ!となってしまったが口を開いた。


「信じて貰えるか分からないけど、実は・・・」


ジンはここに来る前の大きな門と仮面を被った存在

ここに来てもう一人の自分が居ること、そして魔獣に襲われて気絶してしまったことを説明した。


「・・・うん、私は信じるよ。だって、私が生まれるより少し昔もこの世界を救ってくれた、違う世界から来た人の話があるもの。」


そう、にっこりと微笑みかけてくれた。


「そっ・・・か。良かった。」


ジンは少しホッとしたのか頬が少し緩む。


「じゃぁ私、ご飯作らなきゃだから行ってくるね。ジンはゆっくり寝てて良いからね?」


そう言うと彼女はトトトトっと早足で部屋を後にした。


ジンはとても暖かな気持ちでいっぱいになっていた。

「本当に、助かった・・・んだな。」


安心すると急に睡魔が襲ってきた。

眠気で薄くなっていく意識の中で


「・・・ゼン。もう1人の・・・僕・・・。」


そう呟き眠りについた──

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