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第13話 燃え盛る記憶を断つ雷

第12話が長かったので

12、13話に分けました。

ロイスは何度も炎をぶつける。

しかし、魔獣は更にもう一度、咆哮を放つ。


魔力武器化(アルマニティ)をしようとするが、手が震えて上手くできない。

気づけば弾かれた炎は草木に引火し、辺りを明るく照らしながら煌々と燃えていた。

その光景を目にしたロイスは力が抜け、その場で膝を着いて座り込んでしまう。

その目に映る炎は・・・


──思い出す

燃え盛る村・・・。

炎の中で手を伸ばす誰か・・・。

焼け落ちる木が軋む音・・・。

呼吸出来ない程の熱・・・。

止めようとしても止まらない炎・・・。

脳裏に蘇る、幼少期の記憶・・・。


「また・・・私は・・・。」


ロイスの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちる。

魔獣は呆然と座り尽くしたロイスに容赦なく、爪を振りかざす。


一閃──

魔獣の肩に電気を帯びた槍が突き刺さり、電撃を放つ。

バリバリバリバリ!


グオォォォ!


電撃は魔獣の体を巡り、その巨体を痺れさせ、留める。


「ロイス!」


間一髪でジンが間に合った。

魔獣が痺れて動けない間に──


「ロイス!今のうちに逃げよう!」


しかし、ロイスにはジンの言葉が届かない。


ふと、魔獣の方に目を向ける。

血のように光る瞳孔と目が合った。

──ドクン!

鼓動が激しく、大きく跳ねる。


「魔・・・獣・・・?」


ここに来たばかりのことを思い出し、足がすくむ。

呼吸が荒くなり視界が揺れる。

足が強張り、動けない。

しかし、ロイスの方に視線を戻す。

ジンは強く目を瞑る。


「──次はお前の番だ。」


ゼンの言葉が頭を過ぎる。


「違う・・・今は違うんだ。動け!足!!」


ジンは自分の足を思いっきり殴りつけた。


またあの時と同じだ・・・

でも今は違う!守る力を持ってるんだ。

ロイスを、ロイスを失う訳にはいかない・・・!


その気持ちが、自然と足を動かした。


「ロイス!」


ジンはロイスのそばに駆け寄り、肩を揺らす。

ロイスは遠くを見ていて焦点が合っていない。


「全部・・・。燃えちゃったの・・・。また、私が・・・。」


そう言うとロイスは両手で顔を覆い、泣き崩れた。


「ロイス!ロイス!?君の過去に何があったかは、僕は知らない。・・・でも!」


そう言いかけた時、魔獣の痺れが収まったのか、三度目の咆哮を放つ。


僕は知ってる。暴走した日の包み込むようなロイスの温もりを・・・。


魔獣は手を振り上げる。

ジンはロイスを強く抱き込み、その攻撃から庇う。


「ぐあぁっ!!」


振りかざされた魔獣の爪は、いとも簡単にジンの背骨を断ち切り、抉る。

ジンの背中に激痛が走る。

あまりの衝撃にジンの世界から音が消え、何かが砕ける感覚だけが背中を走る。


痛い、熱い、怖い・・・。


「ゴフッ!」


呼吸をしようとすると、大量の血液が喉を通り口から吐きでる。

自分の血液で上手く呼吸も出来ず、口の中に広がる鉄の味と、背中の激痛で意識が朦朧とする。


ぐる、じぃ・・・

・・・それでも!


それでもジンはロイスを抱え、離さない。


「ロ・・・イス・・・。聞いて、くれ。」


耳のすぐ側で聞こえるジンの声は震えていた。


「ジ・・・ン?」


ジンの熱と震えが体越しに伝わってくる。

それでも離さないその腕が・・・。

何よりも強く感じた。


「君の炎は、優しい炎だ・・・。大丈夫、僕が・・・知ってる。」


「優しい・・・炎?」


ジンの言葉が届いたのか、ロイスの体から炎がゆらりと滲む。

ジンは深く頷き、ロイスに笑顔を見せる。


怖い、死ぬかもしれない・・・。

でも、ロイスの手を離すことは出来ない!


片方の肺は裂かれ、背中からおびただしい血液

を滴らし、吐血しながらジンは力強く立ち上がる。

ロイスは涙越しにジンを見る。

炎に揺らめき、黒い影の彼の背中を・・・。


「大きい背中・・・。」


それは、怖いものではなかった。

ジンはもう一度、魔力武器化(アルマニティ)で槍を形成した。


雷の槍(ブルグ・ランケ)!!」


ジンは雷の槍を放った。

その槍は、今までにない程早く、空を裂いた。

魔獣の心臓を貫き、轟音が鳴り響く。

魔獣は霧散し、魔結晶を残して消え去った。


ジンは支えていた力が抜け、その場で倒れこむ。

ジンの傷は深く、出血量も酷い。


「ジン・・・!」


ロイスは倒れたジンの元へ駆け寄る。

呼吸は浅く、微かだが息はある。


「ジン、ジン!しっかりして!お願いだから・・・。」


ロイスはジンの傷跡とおびただしい出血を見て、必死に傷口を手で塞ごうとするが意味が無い。

血まみれの両手に目を落とし、涙を浮かべる。


「このままだと・・・本当に・・・。」


ロイスの手が、体が震える。

その時、頭にジンの言葉が過る。


──君の炎は優しい炎だ


ロイスの体から炎が湧き出す。


「私の炎は・・・優しい炎・・・。」


両手は震えている。

ロイスは大きく息を吸い、吐いた。

ひんやりしていた空気の温度が一気に上昇していく。

ロイスの瞳には迷いは無く、強い光を放っていた。

辺りは紅に揺れる光へと包み込まれる・・・。

ロイスに伝わってくる、ジンの魂の波動。

それと共鳴するようにもう一つの波動がロイスに伝わる・・・。


魂が・・・二つ?

重なってるのに別のモノ・・・

いや、今は関係ない、集中しなきゃ。


ロイスは目を閉じ、深く呼吸し、両手をジンに添え、静かに唱える──


ジンを助けて・・・。


不死鳥の炎環(オルビス・リゼネイト)


周囲の光が強く発光する・・。

骨を断たれ、肺を裂いている傷。

本来であれば助からないはずの無い傷が、みるみる治っていく──


ロイスはジンの傷が治ったことを見届けると安心した表情を浮かべ、意識を失った。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

次が気になって頂けた方、ブックマークと評価して頂けると嬉しいです。

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