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第14話 優しい炎が繋いだ命


「そう言えばさ・・・。」


ヤナが何気なく口を開いた。


「聞いた話なんだけど、カリフィスが姿を消したらしいよ?」


その名前を聞いた時、ロイスは顔をしかめて俯いた。


「実は・・・。」


ロイスが口を開く。


「魔獣に出くわした時、カリフィスと一緒だったんだけど、カリフィス、逃げ出しちゃって。私、それどころじゃ無かったから・・・。」


「え?あいつ、ロイス置いて逃げちゃったの!?なんてやつ・・・。」


ヤナは歯をむき出し、握り拳を作った。


「まぁ、魔獣に出くわしたんだ、逃げてもしかたな・・・。」


「仕方なく無いよ!」


ヤナの声が低くなる。


女の子1人置いて逃げるだなんて、最低よ。あんなに付きまとってたくせに・・・。」


ヘディンが話終わる前に、ヤナが割って入った。


「ヤナ、落ち着いて。一応、こうやって無事だったんだし。」


ヤナはジンの顔を見て、視線を下に俯く。


「・・・ジンがそうやって言うなら・・・仕方ない。」


ヤナはジンの言葉で渋々言葉を収めた。


ジンはふと、考え込む。

あの傷・・・本来なら死んでたと思う。

痛さを通り越した熱さ、体は重く、足全体が暖かくなるほどの出血、さらには呼吸が出来なくなるぐらいの吐血まで・・・。

ゼンが直してくれたのか?

それとも・・・。

ジンはふと、ロイスへ視線を向けた。


「ねぇ、ロイス?」


ジンは何気なくロイスを呼んだ。


「・・・?なぁに?」


ふと、ロイスと視線が合う。

ロイスは不思議そうな顔をし、首を少し傾ける。

しかし、ヤナの言葉を思い出したのか、気恥ずかしくなってしまい、


「あ、いや。なんでもないや。」


ジンはそう言うと視線をロイスから外す。


「え?なになに?ジン、顔赤いよ?」


隣に座っていたヤナは下からニコニコとジンの顔を覗く。


「なっ、なんでもないよっ!」


と、さらに視線を上に向ける。


ジンを除いた3人が笑う。


「ジンったら、変なの。」


ロイスは笑いながら言った。


「べ、別に変じゃないさ。ロイスだっていつもこんな感じだよ?」


それを聞いたロイスの顔は一気に赤くなり、


「え!?なんで私の話!?そんなことないもん!」


ロイスは必死に否定し、赤く染った頬を膨らませる。


「はーい、痴話喧嘩はここまでぇ。」


2人に割って入ったのはヤナだった。


「痴話喧嘩じゃないよ!」


「痴話喧嘩じゃないもん!」


ジンとロイスは口を揃えてそれを否定した。

ヤナはそれに対して苦笑いをし、ヘディンはお腹を抱えて笑った。


「ヤナ、そろそろ戻ろう。授業が始まる。」


ヘディンは笑い涙を拭きながら言った。


「そうね。」


2人は立ち上がり


「またね。」


と言って手を振って保健室を出て行った。

唐突に訪れる沈黙。

2人は気まずそうにもじもじしていた。

沈黙が続く中、ジンが静かに声をかける。


「あの・・・さ。」


ロイスがびくりと肩を揺らす。


「な、なぁに?」


「いや、あの・・・。」


ジンは迷うように言葉を詰まらせる。

しかし、意を決したように続けた。


「さっきのなんだけど、ロイスに聞きたいことがあって。」


「さっきの・・・。」


ロイスは困惑した顔をしたがやがて・・・。


「あー!さっきのね!」


ロイスはうんうん、と頷いた。


「背中の怪我・・・。僕、死んだと思ってて。ロイスが・・・治してくれたのかなって・・・。」


「そのこと・・・。」


ロイスは少しだけ俯き、遠い目をした。


「あの時、ほんとにジンが死んじゃうって思って、怖くて・・・。必死になって傷口塞いでも全然止まらなくて・・・。」


ロイスは間を空け、目を閉じる。


「そしたら、ジン。君の炎はやさしい炎だって言ってくれたから無我夢中で魔法発動させたんだ。」


ロイスはジンの方を見て、今にも泣きだしそうな顔をして、微笑んだ。

その表情を見たジンは言葉を失った。

それと同時に、胸の奥がきゅぅーっと締め付けられる。

鼓動が鐘のように大きく、早く脈打った。

こんな顔をされて、平気でいられるはずがない。


ロイスって、こんな顔もするんだ・・・。

ジンはその表情にただ魅入っていた。


「ありがとう・・・。」


少しだけ間をおいて、ジンは続ける。


「ロイスがいてくれたから、・・・僕は生きてる。」


「うん・・・。」


ロイスははっとした顔をし、顔を逸らす。


「ロイス?」


ロイスは右手で顔を覆い、左手をジンに突き出して手を振った。


「う、ううん。何でもない。」


少しずつ小さくなっていく声。

ロイスは必死に恥ずかしさを隠した。


もう、ヤナったら・・・。

ロイスはそんなことを考えていた。


しばらくして、コンッ、コンッ、コンッと保健室のドアをノックする音が聞こえた。


「はい。」


とジンが返事をすると、現れたのはカサリスだった。


「カサリス校長!?」


二人は驚いた表情を浮かべる。


「そうじゃ。お主らが目を覚ましたと聞いての。」


そう言いながら入って来たカサリスは、ヘディンが座っていた椅子に腰を下ろした。


「まずは、無事に帰って来てくれた事、心から感謝しておる。」


カサリスは静かに続ける。


「今回、野営していた場所はかなり浅い所じゃった。にもかかわらず魔獣が出現したわけじゃ。」


カサリスは一度、目を閉じる。


「・・・これは、わしの見通しが甘かった。」


カサリスは目を開き、二人を交互に見た後、続けた。


「すまぬな。怖い思いをさせてしもうた。」


ジンはカサリスを見て、即答で答えた。


「そんなことありません。」


ジンに合わせてロイスも続く。


「私たちも油断してました。」


カサリスは、小さく頷く。


「短い期間で成長したものじゃ。」


カサリスの口角が少し上がった。

しかし、次には口角はもとに戻っていた。


「お主らに確認しておかんといけんことがある。」


ジンとロイスはお互いの顔を見合わせた。


「なんでしょうか?」


ジンの体に力が入る。


「リンクスが現場に到着した時はすでに二人とも倒れており、魔結晶が落ちておったそうじゃ。そしてさらにおびただしい程の出血の痕跡・・・。血まみれになって倒れていた二人。それもお主らは無傷じゃったと・・・。」


カサリスは右手を顎に当て尋ねる。


「魔獣は血液は出さん。お主ら一体、何が起こったんじゃ?」


カサリスは鋭い目線で二人を凝視する。


まずはロイスから話始めた。

暗くなる前に一人で水を汲みに行ったこと。

カリフィスと遭遇して話している間に暗くなってしまったこと。

クマのような姿をした魔獣で自分達より遥かに大きかったこと。

野営している皆のところには近づかせまいと、応戦したこと。

カリフィスが手伝わず、逃げ出したから応援を呼んできてくれると信じたこと。


ここでジンに話が変る。

ロイスが遅いことに不安を感じていた時、大きな咆哮を耳にしたこと。

ヤナとヘディンには先生を呼ぶよう指示して森に入ったこと。

ロイスを庇い、致命傷を負ったが、その魔獣を倒したこと。


「僕はここで意識を失いました。それを・・・。」


ジンはロイスの方を見た。

ロイスは言いたく無さげに口を閉じていたがやがて、


「必死で・・・私が、治しました・・・。」


ロイスの言葉をきくと、カサリスは目を見開き、言葉を失った。


「何ということ・・・。そんな大きな魔獣でさえ、今までに報告の無い魔獣じゃと言うのに・・・。お主は・・・。」


カサリスは続ける。


「水属性の治癒師は沢山おる。じゃがの、いわば死にかけるほどの致命的ダメージは回復できん。もちろん、フルポーションでも治らん傷もあるんじゃ。それを完治とは・・・これはもう再生魔法じゃ!」


カサリス大きく息を吐いた。

ロイスはカサリスが目を話しているうちにジンに向かって何かやらかしちゃったかな?

と困った顔をしていた。


「じゃがまて?昔読んだ文献で一つ・・・。魂に干渉し、生命の炎を焚き付け、例えどんな傷でも癒す魔法があると・・・。」


カサリスはロイスの方を見た。


「ロイスは炎属性で聖魔人(ドリュラ)じゃの?」


「・・・はい。」


ロイスは答えた。


「なるほど、可能性は二人が証明してくれた。」


カサリスは立ち上がり去り際にこう付け加えた。


「いやなこと思い出さすようですまんかったの。今日はここでゆっくり休むとええ。」


そう言い残すとカサリスは足早に保健室を出て行った。


2人の間に重い沈黙が落ちた。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

ロイスがジンを助ける為に使用した魔法。

それを耳にしたカサリスの様子が一変・・・

この後何が起きるのでしょうか?

続きが気になって頂けた方、ブックマークと評価してくれると嬉しいです

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