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「えー、そんな困っちゃうなー。もー、ちょっとだけだよー」
お姉さまと私はドアを開けたところでしばし立ちすくんでいました。目の前の光景にどう対処したらいいのかわからなかったからです。
織姫さまはパソコンを机の上に置いて、なぜかバニーガールの格好をしてカメラに向かってポーズを取っていたのです。そして時々パソコンの画面を見て独り言のようにぶつぶつとつぶやくのです。
「え、何? 後ろ? 何それ?」
パソコンの画面を見た織姫さまがそう呟いてふと後ろを向いたところ、私たちとばっちり目が合いました。途端に顔を真っ赤にして織姫さまがカメラに向き直ると
「き、今日は急用ができたので、これで終了でーす。また次も楽しみにしててね!」
と言って慌ててパソコンの画面を消しました。
「生放送中だったかしら?」
「はは、ははは」
「FXで10億円も借金を作る人は考えることが違うわね」
「ううう」
織姫さまは痛みに耐えるように胸に手を当てて顔をしかめます。
「ち、違うの。これは仕事なの!」
「ふーん?」
「だって、10億の借金なんてコンビニのバイトをいくらしてもちっとも返せないのよ! だから、ネットアイドルでビッグになって荒稼ぎしようと思ったの」
「『織姫のお色気道場 ぽろりもあるかも!?』」
お姉さまはパソコンの画面を見てそうつぶやきました。
「い、いや、それはちょっとお色気路線のほうが売れるかなって……」
「で? 今の稼ぎは?」
「きゅ、983円です」
「それって……」
「言わないで! これでも少しはアクセスが増えてきたのよ」
これだけの機材をそろえて何日も放送を続けて983円じゃ、コンビニでアルバイトをしたほうがましなんじゃ、とちょっと思いましたがそれを口に出すのはやめておきました。
「はぁ」
お姉さまがため息をついていますが、気持ちは分かります。
一体どんな放送をしているのかと少し好奇心が湧いて織姫さまのパソコンを覗き込んでみました。するとサムネイルにいろいろな格好をした織姫さまが映っていました。
「えっと、看護婦さん、スチュワーデスさん、巫女さん、スーツ、体操服、スクール水着……、よくこんなに服を持ってましたね」
「そそ、それは、ね、ホステス時代にそういうのが好きなお客さんがいて……」
しどろもどろになって釈明する織姫さまですが、とりあえずそれは置いておいて私はもっと詳しく見てみようとパソコンの画面をあちこちクリックしてみました。




