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冷や汗が止まりませんわ

 全体にヒビが入った建物の中で、私は非常に焦りました。それ以上に周囲が悲鳴の嵐になっていた為、その動揺を悟られる事はなくて済みましたが。


 しかしここまで建物が脆いとは、全く予想出来ませんでしたね。どうしましょうか、この状況。とりあえず水分を一旦自由にして、彼らを自由にしておきましょう。


「な、何があったんだ!」


 すぐにギルマスが飛んできました。そして野郎共がパニックになっている光景を目にして、一瞬硬直しましたが、マスターをやっているだけあってすぐに状況把握をしようと周囲に目を配り、私と目が合いました。


「なぜ武器を抜くのかが分かりませんわ」


「この状況で貴様が敵では無いと判断できる奴なんざいねぇよ。何しやがった」


 だそうですが、どう見ても敵対してますね。これはどうしましょうか、迷いどころです。非を認めれば、早速除名処分にされそうです。なので誤魔化してみる事にしましょう。これからの路銀を稼げなくなるのは非常に不味いですし、ここでどれだけ睨まれようとも他の街に行ってしまえば関係ありませんからね。


「私は何もしてませんわ。それに状況証拠だけで断罪するおつもりはありませんわよね?あと、誰も死んでませんわ」


「貴様、何が目的でここへ来た」


「先刻に言ったとおり、迷子で立ち寄った以外に理由はありませんわ」


「ではこの状況はどういう事だ?」


 悲鳴はもう収まっていますけど、代わりにほぼ全員が武器を抜いていました。ぐるりと囲むように警戒されています。ギルド内での荒事はご法度ではありませんでしたっけ?


 なんだか誤魔化しきれ無そうな雰囲気です。いっそ全員脳髄クラッシュでも……いえ、換金はしてもらわないと困ります。受付のお姉さんだけは換金してから逝ってもらいましょうかね?

 ……さすがにこれだけ殺したらばれそうですね。悲鳴も上がってますし、一人くらい逃げてそうです。

 とりあえずはこの場だけは穏便に済ませましょう。失敗したらクラッシュです。


「そもそもこの場にいる方々は何が起きたのか理解してますの?」


「建物全体が揺れた後、悲鳴が聞こえたんで降りて来たらこの状況だ。俺は知らねえな」


 ギルマスは潔く知らないと言ってのけますが、周囲の人たちは目が泳いでる人が多いです。と言うより目に見えて青ざめてる人もいます。

 これはあれでしょうか、何されたのか皆目見当もつかなくて、恐怖心が湧いているのでしょうか。負のスパイラルにでも陥っているのでしょう。


「とまぁ、誰一人真実が分からない状態ですわ。これで怪しいだけで拘束されるなど、片腹痛いですわ」


 しばらく待ってみて、沈黙が続いたことを確認した後、証拠不十分をたたきつけました。これでこの場で拘束される可能性は低くなったでしょう。この場さえ乗り切ってしまえばさっさとトンズラしてしまう事も可能です。


「つまり貴様は無実だと……」


非常に不服そうですがギルマスは切っ先を降ろしてくれました。それでいいんです、あとは換金だけしてこの町とはおさらばでいいでしょう。


「もうよろしくて?私は依頼の報告をしたいのですが、いいですわよね?」


返事は聞きません。さっさと報告に入ってしまえば話すタイミングを失って黙ってくれるでしょう。内容に突っ込まれる気もしますが、適当にはぐらかせばいいですね。なので受付のお姉さんにギルドカードを出して微笑みます


「えっと……、はい、かしこまりました」


 彼女は多少戸惑った様子を見せましたが、背後で難しい顔をしていたギルマスが頷いたのを見て仕事に取り掛かる事にしたようです。面倒ごとに巻き込まれるのは誰だって嫌なのでしょう。


「っと、そうそう。多分内容に驚くかと思いますが声はあげないでいただきたいですわ」


「えーと、はい」


 どうしてって顔をされましたが、言わないよりはましでしょう。無駄に終わる未来が容易に想像できますが。


「それではカードをお預かりさせていただきます。……はい、ワーウルフの討伐依頼で……これ本当に今さっき討伐したんですか?」


 意外です。驚いた顔はしましたが、声をあげて余計に目立つ様な真似をしませんでした。まぁワーウルフ程度ですし、案外これくらいこなしてしまう冒険者も居たりするのでしょうかね?


 なにはともあれ、ニッコリ微笑む事によって肯定し、依頼達成分の銀貨15枚(確認したら153匹仕留めてたみたいです)をもらい、さっさとギルドを(いとまさせていただきました。


 これで後は収納袋を買ってこの街を去りましょうか。

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