第七話 魔族
図書館を出た僕とレオは、街のレストランで食事をしていた。
「アルフィ様、なぜ帝国へ?」
「学院を見てみたくてね。今父様に頼んで、学院長をされている第四皇子殿下に取り次いでもらっているんだ」
グランヴェルグ帝国には、5人の皇子と3人の皇女が居る。
グランヴェルグ帝国の現皇帝は高齢で、現在苛烈な皇位継承争いが起こっているという。
第四皇子は、その争いが嫌で皇位継承権を破棄したそうだ。
貴族間での派閥争いも盛んなんだって。
大国は大変だね。
第四皇子は、他の皇子達から嫌な仕事を押し付けられて、学院長になったそうだ。書類仕事が多くて面倒だったんだろうね。
まだ学院に通う学生なのに、学院長の仕事までこなすのは大変だろう。
「ですがアルフィ様。帝国までは馬車でひと月以上時間がかかりますよ?」
「そこは大丈夫。考えがあるんだ」
グランヴェルグ帝国とは国境を接しているけれど、森に阻まれ直接行き来はできない。そのため帝国へは、隣国のフロレア王国を経由しなければならない。
完全に遠回りだ。
でも仕方がないのだ!危険な森を切り拓いて造られたドゥウムは、森が自然の要塞になっているから……
冒険者ギルドへ戻って、シオンとルイを待っていた。
しばらくすると外が騒がしくなり、僕はレオを連れてギルドの外へ出た。
「何かあったの?」
「ア、アルフィ殿下!?」
ギルド長が僕を見て跪いた。
そんなギルド長を見て、周りに居合わせた冒険者や街人が見様見真似で跪く。
ドゥウムには、王族に民が跪くという決まりはないのだが、たまに騎士や兵士以外にも膝をついて頭を下げる人は居る。ドゥウムは他国から移り住んで来た人も多いからね。
ギルド長もそのひとりだ。
「いい、お忍びで来ているんだ」
「そうでしたか、申し訳ありません!!」
ギルド長は立ち上がり、何があったか教えてくれた。
建国祭の準備のため、街の外で作業をしていた民や冒険者が魔物に襲われたそうだ。
城壁の近くだったため、魔物は来ないだろうと油断していたそうだ。
それもそうだ。街の近くは危険な魔物が少なく、新人冒険者の主な活動区域になっている。
「今から冒険者を集め、討伐へ向かいます」
「そう、頑張って」
「は!!ありがとうございます!!アルフィ殿下!!」
「あ、そうだ。黒髪長髪のシオンという青年と、瞳の青い可愛らしいルイという少年を見つけたら保護して欲しい。僕の連れだ」
「か、かしこまりました!!必ず無事保護してみせます!!」
「うん、ありがとう」
僕は冒険者達が街の外へ出て行くのを見送って、城壁を上った。
城壁の上からは森を見渡せた。
「こんなに魔物が出てきているなんて」
「俺も初めて見ましたよ。こんな大群の魔物……」
「レオも加勢してきたら?」
「いえ、俺の仕事はアルフィ様を守ることです」
「でもこれ、みんな死んじゃうよ?多分」
「でしょうね」
「はぁ……レオ、父様に騎士団を出すように伝えて」
「冒険者ギルドが応援要請しているのでは?」
「保険だよ、保険」
「は、はぁ……保険ですか。まっ!!アルフィ様の命とあらば、俺は全力で!!」
「行ってきて〜。僕は待ってるから」
「はい!!」
ま、僕が【転移】で行けば良いのだけど、人前で使うのはあまりよろしくない。
レオが急いで王城へ向かうのを横目に、僕は森を眺めた。
「100……200……いや、1,000……もっと、もっとか……」
「アルフィ殿下、危険です。お下がりください」
「大丈夫。君は民の避難誘導を」
「は、はい」
兵士達は城壁を駆け下り、民を王城へ避難させ始める。
「にしても、違いすぎる……こんなことあったか?ニアが亡くなって、ひと月後の建国祭までは何事もなく平和だったはずだ……」
僕がぶつぶつと呟いていると、城壁を建物伝いに飛んで来たアレンが城壁の上へ着地した。
「アルフィ殿下」
「アレン、やっぱり君は」
「はい、魔族にございます。アルフィ殿下は最初からお気づきでしたね」
「なんとなく、そうかなって思っていただけだよ」
「加勢致します」
「魔族だとバレないようにね」
「承知しております」
アレンは城壁を飛び降りて、冒険者達に加勢した。
「う〜ん、やっぱすごいな。魔族……」
「魔族ですか」
「うわっ!!リア!!隠密で近付いて来ないでよ!!」
気付くとリアは、僕の後ろに立っていた。
リアはニコニコと笑顔で僕を見ている。
「お、怒ってる?」
「いいえ、アルフィ様。私に何も言わず、勝手に城から出られたことを怒ったりは致しませんよ」
「はい、ごめんなさい」
しばらく気まずい沈黙が続き、僕はオロオロしながら冷や汗を流す。
リアは相変わらず、ニコニコと笑顔のままだ。
逆に怖いよ!!
「リア、アレンのことは誰にも言わないでね」
「魔族ということですか」
「うん」
「いつかバレるのではありませんか?」
「うん、バレるかもしれないけど、その前にきっとアレンは自分でルイス兄様に伝えるよ」
「承知致しました」
リアは本当に物分かりが良くて助かるな〜。
アレンが加勢したことで、戦況が変わった。
アレン1人で、Aランク冒険者30人分以上の戦力があるようだ。
僕はボーッと森を眺めていた。魔物達は一直線にこちらへ向かってきている。何種類もの魔物がだ。
「リア、これは……」
「作為的ですね」
何かから逃げてるという可能性もある。
けれど逃げているだけなら、真っ直ぐじゃなくて左右に逃げる魔物も居るだろう。なのに全ての魔物が真っ直ぐ王都へ向かってきている。
「私も加勢へ行きましょうか」
「いや、リアはいい。アレンがいれば大丈夫だよ。それに騎士団がもう来る」
「左様ですね。失礼致しました」
「それよりさ〜、リア」
「はい、アルフィ様。どうなさいましたか?」
「なんでここに居るの?」
「アルフィ様が何も言わずに街へ下りたからではありませんか」
「リア、僕が昨日言ったこと覚えてる?」
「勿論でございます」
「へぇ、じゃぁなんで来たの?」
「それは──」
「君は、リアの忠誠心を舐めすぎているね」
「何をおっしゃっているのですか。アルフィ様。私はただ、主人の身が心配で馳せ参じたまででございますよ」
「リアは、僕の指示をほっぽり出して来たりはしないよ」
だって今日は……
パエリアを作って貰っているのだ〜!!
なんてったって、魚介が!魚介が出たのだ!!【ルーレット】からね!!
ドゥウムの王都まで海から新鮮な魚を運ぶのは難しいから、領地へ移るまでは食べれないと思っていたのに。
リアには、ダインに渡したレシピを全て作るように言っていたのだ!!わっはっは〜!!早く食べたいなぁ〜!!
ぐへへ〜とヨダレを垂らしていると、偽リアは少し引き攣った顔をして僕を見ていた。
「あ、あの。アルフィ様?」
「あ、あと君。ステータスも偽装してるみたいだけど残念。隠蔽で隠しているスキルは見えないんだね」
「お、俺の変装と偽装が通じない……だと……俺の偽装は完璧なのだ……何故!何故だ!!」
ドロッと溶けるように、リアの姿が崩れていく。
血のように赤い髪と瞳を持つ、美しい魔族が現れた。
「魔族だったのか」
「何故分かった」
「それよりこの進軍やめさせてくれない?」
「俺の質問に答えろ!!」
「えー、これ止めさせるのが先だよぉ」
「ふん、俺ではない」
「そう、じゃぁ帰って良いよ〜。ばいばい」
「は、なんだお前っ!生意気だぁ!!」
僕の頬を魔族が引っ張る。
「痛い痛いっ。魔族は人間より力強いんだよ。やめてよ、グレンディス」
グレンディスは、名前を呼ばれて驚いたのか手を離した。
「な、何故俺の名を知っている」
「ステータス見たからね」
「お前か……お前なのか!!強者というのは!!」
「いや、違うと思うけど」
「なんだと!?お前の他にも強者が居るというのか!!」
「騎士団には強い人沢山居るよ〜」
「紹介しろ」
「やだ」
「チッ」
「分かった。これの原因突き止めてきてくれたら、団長さん紹介するよ」
「マジでか!!」
「うん、良いよ」
「おっしゃぁー!!行ってくるぜ!!」
グレンディスもアレンと同じく、城壁を飛び降りて森へ走って行った。
「はぁ、めんどくさい奴と知り合いになってしまった」
✦ ─────────── ✦
名前 : グレンディス
年齢 : 838歳
誕生日 : 3月28日
レベル : 666
魔力量 : 666666/666666
−固有スキル−
【身体強化Ⅹ】 【魔力増幅Ⅹ】 【魔王Ⅹ】 【転移】
【亜空間収納】 【隠蔽Ⅹ】 【偽装Ⅹ】 【擬態Ⅹ】
−所持魔法−
【闇魔法Ⅹ】
魔国第八王子。魔王の子。
魔国王家特有の『魔眼』を持つ。
✦ ─────────── ✦
魔国なんて大陸の外なのに、なんでこんなところに居るのかと思ったら【転移】が使えるのか。
「アルフィ様!!」
レオが騎士団100名を連れて戻ってきた。
「レオ、おかえり〜」
騎士達は、城門をくぐり冒険者達の加勢へ向かった。
レオは階段を駆け上がり、汗だくで僕の元へ戻ってきた。
「変わりはありませんか」
「うん、大丈夫だよ」
陽が落ち始めると、グレンディスが戻ってきた。
森の中をガサガサと猛スピードで駆け抜け、城壁の上にひとっ飛びで着地する。
「おかえり」
「おう!アルフィ」
レオは僕の前に出て、グレンディスに剣を向ける。
「ほう、お前はそこそこだな!!歳の割には良い!!」
「レオ、下がっていいよ」
「アルフィ様、こいつは魔族です。危険です」
「大丈夫大丈夫〜!で、見つけた?」
レオの後ろから僕は顔を出して、グレンディスを見る。
グレンディスは、後ろからズルッと血まみれの男を引きずり出す。
「思ったより脆すぎて殺してしもうた!!」
「……え」
「ア、アルフィ?」
僕はムスーッと頬を膨らませながら、グレンディスを睨んだ。
「団長紹介しないから!!」
「な!!約束が違うぞ!!」
「違くない!!」
「違う!!原因を処分すれば紹介してくれると言ったであろう!!」
「言ってない!原因突き止めてきたらって言った!!」
「同じではないか」
「……レオ、僕帰る」
「アルフィ様!?まだシオンとルイが」
「アルフィ!待て!!紹介しろ!!」
僕は2人を無視して、階段を手すりに掴まりながら降りていく。
見かねたレオが、僕を抱き上げて階段を降りる。その後ろをグレンディスが、血まみれの男を引き摺りながら追いかけてくる。
「レオ、僕父様に怒られる?」
「そ、そうですね。あ〜、そうですねぇ……」
こんなに歯切れの悪いレオは初めて見たぞ。
「おい!アルフィ、俺を無視するでない!!」
「無視してない、呆れてる」
「なんだ、無視していないのか!」
「はぁ……」
王城へ戻る前に冒険者ギルドへ寄ると、シオンとルイは怪我もなく保護されていた。
無事、依頼は達成出来たらしい。
「アルフィ様!!」
「2人とも、無事で良かった」
僕とレオの後ろを見たルイは、ヒッと顔を引き攣らせる。
「ア、アルフィ様……そちらは?」
「ん?知らない人!早く帰ろ。今日はパエリアだよ!!あとお寿司と〜、フライもあるよ!!」
「アルフィ!!知らないとはなんだ!!」
僕は笑顔で、「おっ魚お魚〜!」とウキウキで帰った。
グレンディスは、王城まで着いて来て集まっていた騎士達に止められていた。
「お、おい!!アルフィ!!」
僕は城に入るとそのまま別棟へ向かった。
レオに父様への報告をするように頼み、厨房へ行く。
「リア!!ダインさん!!」
「アルフィ様、お帰りなさいませ」
「出来た!?」
「はい、出来ましたよ。もう少ししたら夕食にしましょう。ルーカス様もいらっしゃるそうですよ」
「ルーカス兄様来るの〜?量足りるかな??」
「はい、少し多めに作っておりますよ」
「ありがとう」
僕はご飯の前に、別棟にある広い部屋の掃除をして、家具を並べた。
しばらくすると、リアに呼ばれて広間に向かった。
レオが戻り、ルーカス兄様とマッシュも来ていた。
「ルーカス兄様」
「魚が手に入ったって聞いてね。マッシュが大の海鮮好きで、お邪魔させてもらったよ」
「はい、みんなで食べた方が美味しいですからね」
「ありがとう、アル」
「ご飯食べた後、お話よろしいですか?」
「うん、もちろん良いよ」
食事が運ばれてきて、机に海鮮料理がズラッと並ぶ。
良い匂いが漂って、食欲をそそられる。
ダインさんが、料理を取り分けてくれる。
みんなで美味しく食べているところに、ズカズカとうるさい足音が近づいてくる。
「はぁ……」
「こら!!アルフィ!!」
バンッと扉を開け、グレンディスが入ってきた。
「お、美味そうなもん食ってるじゃねーか」
グレンディスはパクッとフライを取り、つまみ食いをした。
僕の肩に腕を回し、頬を突っついてくる。
「やめて、食べれない」
「やめてじゃねぇ、お前が俺様を放ったらかしで行くから牢屋に入れられたぞ!!」
「人相が怪しかったんですね」
「いや、アルフィ様……人相より……」
「それより、グレンディス。大人しく捕まったんですね」
「あぁ!偉いだろう!!どいつもこいつも弱い奴ばっかで反抗する気も起きなかったぜ!!この国に来て、見た奴らの中でそこそこ楽しそうなのは、お前とそこの騎士くらいだな。あ、あとそこに座ってるお前の兄もか」
グレンディスは、僕の後ろに控えていたレオと、正面に座っているルーカス兄様を指差した。
「立っていたら邪魔だから座りなよ」
「よっしゃ!!こんな飯初めて見るぜー!!」
「居座るかと思って、部屋も用意してるよ」
実際は、父様から改めて話を聞きたいと言われるだろうと思ったから、部屋を用意していたのだけど。
僕はえらいのだ。
「おぉ!!じゃぁ食ったら戦うか!」
「致しません」
「ツレねぇなぁ。おい、そこの騎士。主人の代わりにお前が俺と戦え」
「良いですよ。負けませんが」
レオは剣を握ってドヤ顔をする。
「多少手加減してくださいね、レオは普通の人間なので」
「俺様を舐めるなよ?手加減くらい出来る!!」
僕達はお腹いっぱいになるまで、海鮮料理を楽しんだ。
戦うと言っていたグレンディスは、お腹を膨らませて横になり苦しそうに眠っている。
魔王もこんなマヌケなら、勇者も楽だろうに……
人払いをして、ルーカス兄様と話をした。
今日起きたことと、レオに譲渡したいから契約書を用意して欲しいことを。
この世界の契約書は、ただの紙ではなく魔法が組み込まれている。契約内容に違反した場合、あらかじめ決めた罰が下る。
「グレンディスを見て、もっと強くなければいけないと思いました」
「そうだね。魔族は別格だよ」
「人間は数の強さがありますが、個々の力は圧倒的に弱いです。もし大量に襲って来たら……と、今日考えさせられました」
「レオ自身の意見も聞くべきだよ」
「はい、もちろんです。兄様」
「うん、アルは本当に賢いね」
「ありがとうございます、ルーカス兄様」
「今日の食事は本当に美味しかったよ。魚がこんなに美味しいものだとは思わなかった」
「兄様も食べたことなかったのですか?」
「生魚は初めてだね、冒険者の依頼で海へ行った時、焼き魚は食べたのだけど」
「海かぁ〜、僕も早く海行きたいです!」
「失礼致します」
話しているとリアが、スイーツを持って入ってきた。
「白身魚のパイでございます」
机に並べると静かに部屋を出て行った。
パイの芳ばしい匂い。口に入れると餡子の甘みが広がって、想像していた味とは違ったけど美味しかった。
「うん、スイーツはどうだろうかと思ったけれど、美味しいね」
「はい、兄様!美味しいです!!」
しばらく兄様と談笑していると、グレンディスが目を覚ました。
「うあ、寝てたか」
「うん、沢山食べてたね。美味しかった?」
「あぁ、料理人を連れて行きたいぜ」
「ダメだからね」
「分かってるよ、お前に逆らったら飯食わせて貰えなさそうだし」
「君、グレンディスと言ったかな」
「おう!兄さんも歳の割にはそこそこだな」
「失礼なお友達だね、アル」
「友達じゃないですよ」
グレンディスは、僕の食べているパイに目をつけて、半分割って食べる。
「海鮮料理、そんなに気に入った?」
「あぁ、クソ美味かったぜ。普段味の無いもんしか食ってなかったからな。魔国は調理といっても、素材をそのまま切るか焼くかしかねーからな!」
「へぇ、そうなんだ」
しばらくすると、時間も遅いからとルーカス兄様は部屋へ戻って行った。
「3階の1番奥の部屋使って良いよ」
「もぉ寝るのか?」
「4歳の活動時間は短いのだよ、グレンディス君」
「グレンでいい。言いにくいだろう」
「じゃぁグレン。誰かに勝負仕掛けるのは良いけど、相手は人間だからね?手加減はすること」
「分かってるよぉ」
コンコンコンッと外から窓を叩かれる。
外から鍵を開けると、アレンが入ってきた。
うん、防犯がなってないね。
「どうしたの?アレン」
「アルフィ殿下、夜分に申し訳ございません。殿下が来ている気がしまして」
「あぁ、これ?」
僕は隣に座るグレンを指差す。
「グレンディス様!!」
「おぉ、アレンか!久しいな!!」
「お久しぶりでございます。グレンディス様」
「僕、席外そうか?」
「いえ、アルフィ殿下。本日冒険者の加勢をした時、拾った物をアルフィ様にお渡ししようと持って参りました」
「拾った物?」
「はい、こちらです」
アレンは亜空間から、革のトランクを出した。
トランクを開けるとアクセサリーが沢山入っていた。
「こ、これは。持ち主が居るんじゃ?」
「いえ、魔物に襲われて息絶えておりました」
「そうなんだ」
「あ、アレン!たまにグレンと遊んであげてくれないかな??」
「グレンディス様とですか?」
「うん!レオ達と戦いたいって言うんだけど、本当に手加減出来るのかも不安だし」
「私はあまり強く無いのですよ。アルフィ殿下」
「あぁ、そうだぞアルフィ。こいつは落ちこぼれだ」
「グレン、その言い方は良くないよ。アレンはすごく強いよ!」
「ありがとうございます、アルフィ殿下。ですが落ちこぼれというのは事実です。魔族の中で私は、弱いのです。弱すぎて幼くして捨てられました」
「そ、そっか……」
「ひとりぼっちで寂しく過ごすこと、160年。ルイス様と出逢いました!!あぁ、あの時は神が現れたのかと目を疑いました!!」
アレンは、ルイス兄様との出会いを熱弁し始めた。
「これ、長い?」
「長くなりそうだな。逃げよう」
「うん」
僕はグレンに抱えられて、広間を飛び出した。
3階のグレンに用意した部屋へ入ると、グレンはベッドにダイブした。
僕は、グレンが僕と一緒に抱えて来たトランクを亜空間に仕舞い、ランプを消し部屋を出た。
グレンは寝つきが良いようだ。
その日から、グレンが毎日のように戦いを挑んで来たり、レオと契約をしたり、父様に言い訳をしたりと、なんだかんだバタバタと日々は過ぎ去り、ひと月。
いざ建国祭!!




