第十九話 安心出来る場所
無事、寮の建て替えを終えて僕は魔導荷馬車に乗り込んだ。
荷馬車の外で、セディウス殿下とレン兄が何か言いたげに僕を見ていたけれど、無視!早く帰りたいのだ!!
「アル……」
「なぁに、レン兄」
「ドレス着せたりしないから、また遊びに来てくれる?」
先日の出来事から、2人がしつこかったので僕は丸2日ガン無視を決めていた。
うむ、一国のそれも帝国の皇子に対する態度ではない事は分かっていたけれど、僕はまだ四歳だからね!!
「レン兄、怒ってないよ」
僕はニコーーっと笑って見せた。
「アルぅ。本当にごめんねぇ、許してぇ」
フィズがレン兄をヨシヨシと撫でて慰めている。
フィズは今日ももふもふだ。
「レン兄、半年は来れないと思う。僕、父様から領地を貰うから忙しくなるんだ。だから、レン兄が会いに来てよ、せっかく隠し部屋に転移陣作ったんだから」
レン兄は、一瞬で表情が明るくなり、フィズが嬉しそうに笑った。
「あと、セディウス殿下。本当にどうしても虫除けが欲しいのでしたら、今回だけです。今回だけですからね!!僕は帝国の料理人の作るご飯を食べに来るだけですから!!」
「分かった。感謝する」
「また日にちはご連絡下さい。パーティの前には学院へ来ておきます」
「あぁ」
しばらくすると、ルーカス兄様達が戻って来て、学院を出発した。
帝都を出て、人気の無い所に止まると次の街の近くまで転移した。
「これで早く帰れるぞ〜!」
「これ、怪しまれないでしょうか……」
「大丈夫大丈夫〜!ちょ〜っと移動早いな〜って思うくらいで、問い詰められたりしないよ」
「そ、それもそうですね!!」
そんな事より僕は早く帰って、ドラゴンの素材で何が作れるか試したいのだ!!
その後も、街と街の間は転移を使いながら移動した。
途中で何か問題が起こることもなく、予定よりもずっと早く王都へ帰って来ることができた。
やっぱり転移って便利〜!
ドゥウム王国、王都へ戻って来て数日。
僕は王城の前で座らされています……!
それも、優雅に!お茶をしながら!!
──3日前
「アルフィ様!そろそろ勧誘しませんと、領地へは私達だけで行くことになりますよ!?」
「うぅん……ニアぁ。朝からなにぃ……」
「そうですよ、アルフィ様。危険な森の開拓なのですから!」
「うーん、リアまでぇ?いいよぉ、別に。前回よりは人多いしぃ……後5分、寝る……」
ニアは僕の布団を奪い取って、無理やり起こした。
「アルフィ様、リアンさんと良い案を思い付いたのです!」
「はい!アルフィ様なら、わざわざこちらから勧誘せずとも、働かせてほしいと自ら志願してくる者が後を絶たないはずです!」
「いやぁ、第三だよ〜」
「関係ないですよ!ね!リアンさん!!アルフィ様は素晴らしいのですから!!」
ってな感じで、あれよあれよと城門の外で机と椅子が配置され、お茶を始めてはや3日。
「誰も来ないじゃないか!2人とも!!」
「そんなはずないじゃないですかー!アルフィ様!まだ3日ですよ!3日!!まだみんなここにアルフィ様がいらっしゃると気付いて居ないのですよ!」
「はぁ、1週間だけだからね。僕も暇じゃないのだよ」
「もちろんです!アルフィ様!!」
2人は本当に僕に付きたいと言う者が現れると信じているみたいだ。
僕は、第三王子で四歳だぞ〜。
兄様のどちらかに付きたいに決まっているじゃないか。
今回の王子達の領地開拓は、誰に付くかで未来での自分の立場が決まる。
僕はダインに作ってもらった、マカロンを食べながら魔導書を読んだ。
「アルフィ様、来ましたよ」
「うっそぉ、マジか」
目の前には街で見かけた事のある少年が立って居た。
「アルフィ様!俺はアルフィ様の役に立ちたいです!」
「うーん、君達まだ子供だよね。親御さんは?」
「親もアルフィ様について行くって言ってました!」
「正直に言うと、将来の地位が欲しいなら兄様達の方へ行くべきだよ」
「いえ!地位は要りません!俺は剣士を目指してはいませんし、兄が騎士に入りたいからとドゥウムに引っ越して来ただけなので」
「そう、何が出来るの?」
「親が料理人やってます!!俺は……まだ何かできる事ないけど、一生懸命頑張ります!!」
「そう、分かった。リア、お願い」
「かしこまりました」
リアは少年に書類を渡した。
少年はペコペコと頭を下げて帰って行った。
「ちゃんと読んで、来週来ますかね?」
「ま、来るんじゃない?子供じゃないし」
「こ、子供でしたよ!?アルフィ様!」
「見た目はね、中身はニアより年上だよ」
「に、人間の不思議ですね!!」
「いや、ニアも見たでしょ?僕とリアが大きくなった姿」
「はい!それはそれはお綺麗でした!!」
「あれと一緒だよ。魔法で小さく見せてる」
「えぇ!!そうなのですか!?全然気付きませんでした!!」
「仕方ないよ、魔力を隠すのが異様に上手い」
「……ニアは最近全然お役に立てていません。これじゃただのアルフィ様のお召し替え魔具ですぅ……」
「な、何言ってるの?ニア」
ダインさんが来てから、ニアの仕事が減ってしまって最近ナイーブになってるんだよね。
はぁ、何か考えないと。
「はぁ……適材適所ですよ、ニア。貴方にしか出来ないことはあります。変な事を言って、アルフィ様を困らせないで下さい」
「わーん、ごめんなさいぃ!アルフィ様ぁ」
流石リア。
それから4日間、毎日門の前でお茶をした。
結局集まったのは、たったの3人。1週間で3人!!
泣くぞ?集めようとして、全然集まらなかったら結構悲しいぞ。
兄様達の方は集まっただろうか。
「はぁ、やるんじゃなかった」
「やって良かったですね!アルフィ様!!」
「凄いですアルフィ様!1週間で3人も集まりましたよ!!」
「そ、そうだねぇ」
「アルフィ様なら当然です!!」
この2人は僕への評価が高過ぎる。というか、身内贔屓だな。
ドゥウム王国、王都の隠し倉庫では少年がパンを齧っていた。
少年の身体はみるみる大きくなり、成人の男の姿に変わる。
「アルフィ・ドゥウム、アルフィねぇ」
リアに渡された書類を破り捨てた。
「すぐ見破られたなぁ、下手に変装して行くのは逆に危険か」
男はすぐそばにあった棚をずらして隠し部屋へ入る。
隠し部屋には、ドゥウム王国の地図が壁に貼られており、その上には大量の肖像画が貼られている。
「23人目だ、アルフィ。君がこの国で23人目」
男はアルフィの顔が描かれた肖像画を手に取った。
「あぁ、君の金色に輝く瞳に僕がどう映るのか……ハハッ気になる。気になるよ。あの柔肌を切り裂いて、淡い紫の髪が赤く染まって、君は泣くのかなぁ……それとも化け物を見るような目で僕を見るのかなぁ」
「あぁ、気になる」
「君は僕を楽しませてくれるかなぁ」




